欧州委、環境目標のタクソノミー基準規定する法案などの政策パッケージ発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月23日

欧州委員会は6月13日、新たなサステナブル・ファイナンス政策パッケージ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。政策パッケージは、持続可能な経済活動に関するEU独自基準「タクソノミー」(注1)が規定する6つの目標のうち、これまで制定されていなかった4つの環境関連目標に合った経済活動の詳細を規定する委任規則案と、既に施行されている2つの気候変動関連目標に関する委任規則に新たな経済活動を追加する改正案のほか、環境・社会・ガバナンス(ESG)格付け業者の信頼性と透明性を強化する規則案などからなる。

EUはサステナブル・ファイナンスの一環として、環境・気候面で持続可能な経済活動かどうかを判断するための統一基準を設置すべく、タクソノミー規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを制定。2つの気候変動関連目標と4つの環境関連目標のうちいずれかの目標に実質的に貢献し、かついずれにも著しい害を与えないなどの要件を満たすものを持続可能な経済活動と定義する。タクソノミー規則に合致した経済活動への投資は任意だが、非財務情報開示指令(NFRD、注2)の対象となる非金融部門の大企業は2023年1月から、企業活動がどの程度タクソノミーに適合しているかを報告することが義務付けられている。

政策パッケージに含まれる環境関連の委任規則案は、4つの環境関連目標(水・海洋資源の持続可能な利用と保護、環境型経済への移行、汚染の予防と管理、生物多様性とエコシステムの保全と修復)に実質的に貢献するか、また著しい害を与えないかを判断するための技術的スクリーニング基準(TSC)を規定するもの。製造、建設・不動産、情報・通信、サービス、宿泊など8の経済セクターにおける35の経済活動のTSCが含まれている。これにより、タクソノミー規則で設定された全ての環境・気候変動関連目標で、タクソノミーに適格な経済活動とそのTSCが規定されることになる。

気候変動関連目標(気候変動の緩和、気候変動への適応)に関しては、現行委任規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2021年4月22日記事2022年7月14日記事参照)が13の経済セクターにおける107の経済活動のTSCを規定済み。今回の改正案は、既に適用対象となっている交通、製造、情報・通信など6の経済セクターに新たに12の経済活動を追加するものだ。これらの委任規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)あるいは欧州議会が否決しない限り施行され、2024年1月から適用される。

ESG格付け業者を規制する規則案は、対象事業者に対して、欧州証券市場監督局(ESMA)から承認を受けることや、ESG格付けが独立し、かつ客観的であることを担保するために、潜在的な利益相反を予防、緩和する策を講じることなどを義務付ける。また、厳格で、体系的、客観的かつ検証可能な格付け方法を使用することや、その格付け方法を公開することも求める。規則案はあくまで透明性を確保するもので、特定の格付け方法の利用を義務付けるものではなく、ESG格付け業者は格付け方法を独自に選択することができる。

(注1)詳細は、ジェトロの調査レポート「EU サステナブル・ファイナンス最新動向-タクソノミー規則を中心に-」(2022年6月)を参照。

(注2)企業持続可能性報告指令(CSRD、2022年12月1日記事参照)による改正を反映させた非財務情報開示指令の統合版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(consolidated text)を合わせて参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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