2023/2024年度予算案を発表、生活費高騰対策、成長産業への支援が焦点

(オーストラリア)

シドニー発

2023年06月08日

オーストラリア連邦政府財務省は5月9日、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の予算案を発表した。労働党政権として予算案を発表するのは2022年10月に続き(2022年11月28日記事参照)2回目となる。2023/2024年予算案の歳入は、6,681億オーストラリア・ドル(約62兆1,333億円、豪ドル、1豪ドル=約93円、注1、前年度歳入見込みとの比較5.1%増)、歳出は6,821億豪ドル(同8.0%増)を計上した。財政収支は139億豪ドルの赤字(対GDP比0.5%)を見込んでいる。

財務省は予算案の5つの柱として、(1)生活費高騰対策、(2)メディケア(公的医療制度)の強化、(3)より強く安定した経済の実現、(4)女性、障害者、アボリジニなどに対する機会の均等、(5)財政強化と国家優先事項への投資を挙げた。財政歳出の見直しを行いつつ、長引く物価高や金利上昇に配慮し、生活費高騰対策、生活支援のほか、持続的に経済成長を牽引する分野などの必要な支出は行い、適切なバランスを取りたい狙いがある。

ビジネスに関連する項目(添付資料参照)としては、生活費高騰対策で、一部の世帯や中小企業向けの電力料金支援(15億豪ドル)などを発表した。産業支援については、中小企業やスタートアップ支援を行うプログラム(Industry Growth Program、3億9,240万豪ドル)を新しく立ち上げ、人工知能(AI)や量子技術などをはじめとした重要技術の開発・導入支援(1億120万豪ドル)を盛り込んだ。エネルギー関係では、グリーン水素の大規模プロジェクト支援(20億豪ドル)を発表した。税制については、液化天然ガス(LNG)プロジェクトなどの収益に課税する石油資源使用税(PRRT)を改正し、税額控除に上限を設けてエネルギー資源収益の国内還元を目指すほか、グローバルミニマム課税(注2)などを導入するとした。

予算案発表に伴って今後の経済見通しを発表し、2023/2024年度のGDP実質成長率は1.5%、2024/2025年度に2.25%へと再び上昇するとした。

(注1)歳出、歳入、財政収支は全て現金収支ベース。

(注2)グローバルミニマム課税とは、2021年にOECDが提案し、約130カ国が合意した課税制度で、対象となる多国籍企業に対して、最低15%の最低税率と実効税率との差額分に対して、追加納税を課す制度。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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