香港市民の知財保護意識は着実に上昇傾向

(香港)

香港発

2023年04月06日

香港知識産権署は3月31日、「香港市民保護知識産権意識調査2022」の調査結果を公表した(注1)。この調査は、香港特別行政区政府が1999年からほぼ2年おきに実施している市民アンケート調査で、今回は2022年11~12月に15歳以上の市民を対象として電話ヒアリングにより実施し、1,001人から回答を得た(回答率53.0%)。

調査結果によれば、香港の知的財産権法に対する回答者の認知度について、著作権(94.9%)、商標(94.8%)、特許(93.2%)では9割を超えており、いずれも前回(2020年)調査結果から上昇し、2008年調査以降の最高となった。他方、意匠の認知度は57.7%と相対的に低いが、前回調査からは10.9ポイント上昇した。

香港が知的財産取引センターとして発展すること(注2)については、回答者の60%以上が肯定的に捉えており、具体的には、同発展により「域内のクリエイティブ産業や芸術文化の発展」(63.0%)、「域内のイノベーションと科学技術の発展」(62.7%)、「香港における知的財産関連の専門サービスの推進」(61.7%)、「外国資本の誘致や香港の競争力強化」(60.0%)につながると考えている。

デジタル環境における知的財産権の保護(注3)に関する設問では、「公式に認可されたウェブサイトで求める作品が見つからなかった」(14.1%)および「公式に認可されたウェブサイトの存在を知らなかった」(10.5%)との回答が前回調査からそれぞれ11.4ポイント、8.9ポイント上昇したものの、「知的財産権を侵害していることを知りながら、正式に認可されていないウェブサイトなどでアップロードやダウンロードを行うことは非道徳的」との回答が81.3%と大半を占めた。

過去1年間に模倣品・海賊版を「ほとんど買わなかった、全く買わなかった」と回答した割合は95.0%で、1999年以降で最高。その主な理由は「海賊版や模倣品を買う必要がない、海賊版や模倣品に興味がない」(37.6%)、「正規品の品質が保証されている」(36.3%)、「知的財産権を尊重・支持する、正規品を支持する」(19.8%)だった。また、もっともよく購入する海賊版・模倣品では、「衣料品(衣類、アクセサリー、バッグ、靴など)」(53.2%)が最も多い。海賊版・模倣品の購入チャンネルは、「オンラインショップ、オークションサイト」が53.4%と最も多く、次いで「実店舗」(27.2%)、「ソーシャルメディア」(10.8%)だった。過去の調査結果と比較すると、実店舗を購入チャンネルとする割合は低下傾向がみられる一方で、「オンラインショップ、オークションサイト」および「ソーシャルメディア」の回答割合は上昇している。

(注1)調査結果は概要版PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)詳細版PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)のそれぞれが公表されている。また、過去の調査結果は、知識産権署のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから閲覧可能。うち、前回調査(2020年)の結果については、2021年4月1日記事参照

(注2)中国国務院が2021年10月に公表した「『第14次5カ年(2021~2025年)規画』国家知的財産権保護および運用規画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、香港の知的財産取引センターとしての発展を支持する方針が示されている。

(注3)デジタル環境における著作権保護を強化する改正版権法が2022年12月に可決(2022年12月19日記事参照)。2023年5月1日から施行予定。

(島田英昭)

(香港)

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