全米労働関係委員会、シアトル港ターミナル管轄権を巡るILWUの主張を却下、労使交渉への影響懸念も

(米国)

ロサンゼルス発

2023年04月19日

全米労働関係委員会(National Labor Relations Board、NLRB)は4月6日、シアトル港ターミナル5の管轄権を巡り、国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の主張を退ける裁定を出した。

シアトル港ターミナル5の管轄権に関しては、ILWUと国際機械工・航空宇宙労働者協会(IAM)のどちらがターミナル荷役設備の保守や修理の業務を担うかが争われてきた。NLRBの裁定では、ILWUが不当労働行動を行い、傘下の組合員に保守・修理業務を割り当てるようターミナル5運営会社のSSAマリンに強要したとされている。その上で、NLRBはILWUにこうした強要を中止するよう命じ、SSAマリンがILWUではなく、IAMの組合員に保守・修理業務を割り当てることを支持している。

ILWUはNLRBの裁定に反発している。ILWU港湾委員のカム・ウィリアムズ氏は「裁判所の承認なしに発効できないNLRBの裁定は、上訴により法的に間違っているとして覆されると確信している」と非難しており(「ザ・マリンタイム・エグゼクティブ」4月11日)、シアトル港ターミナル5の管轄権を巡る争いは今後も続くとみられる。

米国西海岸の港湾では、労働条件などを定めた労働協約が2022年7月1日に失効して以降、太平洋海事協会(PMA)とILWUが交渉を続けており、2月には両者は近く合意に達する見込みと共同発表していたが(2023年2月27日記事参照)、4月6~7日にロサンゼルス港とロングビーチ港の運営が一時中断(2023年4月11日記事参照)、4月13日にはPMAがILWUによる「新たな戦術」で港湾の運営が妨げていると非難する声明を発表するなど(2023年4月17日記事参照)、依然として不透明な状況が続いている。

シアトル港ターミナルの管轄権に関するNLRBの裁定は、ILWU組合員のこうした行動の遠因となっているだけでなく、労使交渉の行方そのものにも影響を及ぼすとの指摘もあり、引き続き注視が必要だ。

(永田光)

(米国)

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