OECDの経済見通しを上方改定、世界経済の脆弱性は続く

(世界)

国際経済課

2023年03月24日

OECD317日、「世界経済見通し中間報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、2023年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を2.6%、2024年を2.9%と予測した(添付資料表参照)。前回(202211月)の見通し(2022年11月24日記事参照)と比較すると、2023年は0.4ポイント、2024年は0.2ポイントの上方修正となった。

前回見通しに比べ、ビジネスおよび消費者景況感の改善、食料およびエネルギー価格の低下、中国における経済活動の再開など、経済指標には前向きな兆しがあらわれ始めている。しかし、OECDは「前回よりわずかに楽観的な見通しとなったが、依然として世界経済は脆弱(ぜいじゃく)性がある」と警鐘を鳴らす。

2023年の主要国の経済成長率をみると、中国、日本を除いて、2022年から鈍化する見通しとなっている。米国は金融引き締め政策により需要圧力が抑制され、2023年に1.5%、2024年は0.9%と停滞感が目立つ。ユーロ圏では、2022年の3.5%から2023年は0.8%と鈍化する。しかし、2024年はエネルギー価格の高騰が薄まる影響で、1.5%に回復するとの予測だ。他方、中国は経済活動の再開により、2023年は5.3%と、ゼロコロナ政策による影響を受けた2022年(3.0%)からの反動により、大幅な回復となる見込み。

インフレ率は、2023年中に多くの国で徐々に低下し、G20平均では、2023年に5.9%、2024年に4.5%になると予測され、いずれも前回見通しから、それぞれ0.1ポイント、0.9ポイントの下方修正となった。インフレ率低下の背景には、各国における金融政策の効果、欧州における暖冬によるエネルギー価格の下落、食料価格の低下が挙げられた。

2024年の経済成長率は小幅ながら回復がみられるが、2022年の3.2%には及ばない見通しだ。過去の経済見通しにおいて、リスク要因の1つだったエネルギー・食料市場の混乱は継続しているものの、緩和がみられる。他方で、ロシアによるウクライナ侵攻、サービス分野のインフレ、金融市場の動揺、経済成長の減退などがリスク要因として残る。OECDのマティアス・コーマン事務局長は「対象を絞った金融支援と構造改革による生産性の向上が、経済の回復と長期的な成長を最適化するためのカギ」と指摘した。

(田中麻理)

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