米主要港、9月の輸入コンテナ量は前月比10.2%減と鈍化、全米小売業協会

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月10日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社ハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(11月8日)によると、9月の米国小売業者向けの主要輸入港(注)の輸入コンテナ量は前月比10.2%減の203万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算)となった。主要コンテナ港の輸入量は2022年初に記録した水準から引き続き鈍化する見込みで、少なくとも2023年上旬までこの傾向が継続するとしている。

発表によると、2022年は港湾の混雑状況や、港湾と鉄道の労使交渉の先行きが不透明だったため、小売業者らはサプライチェーン問題を懸念し、ホリデーシーズンよりかなり前から商品を仕入れていたという。その結果、港湾では通常秋にピークを迎える貨物の取扱量が2022年は春にピークを迎え、今後数カ月のコンテナ輸入量は安定して推移する見通しとなっている。NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は「今月は鉄道でストライキの可能性があり、サプライチェーンにはまだ課題が残っているものの、ホリデーシーズン向けの商品の大半は既に手元にある。小売業者は需要に対応する十分な準備が整っている」と述べている。

2021年の年末商戦では、サプライチェーン混乱による品不足を避けるため、小売り各社が商品の発注を前倒しするとともに、年末商戦も前倒しする動きが進んだ。米国西海岸の混雑は落ち着いてきているものの、2022年はインフレの高止まりに加え、小売り各社が在庫解消のための大幅な値引きを実施しており、前年とは異なる理由で年末商戦の前倒しが進んでいる(2022年11月4日記事参照)。アマゾンが10月11~12日にプライム会員対象の大規模なセール「プライム・アーリーアクセスセール」を実施し、ウォルマートやオンライン上では家具を販売する「ウェイフェア」が開催されるなど、同時期にセールイベントが相次いだ(NBC9月26日)。

また、2022年に入ってから消費者が物品よりも旅行や外食などのサービスに支出する傾向が強まっている。エコノミストのウォルター・ケムシーズ氏は、消費者は再び支出の7割をサービス、3割を物品に充てるという「2019年にみられた支出傾向に戻りつつある」と指摘し、海運コンサルタントのジョン・モンロー氏は「倉庫は満杯だ。輸入業者が在庫を解消するまで、国外からの注文は低調になると予想される」と述べた(ロイター10月20日)。

グローバル・ポート・トラッカーによると、2022年下半期のコンテナ取扱量は前年比5.3%減の1,230万TEUになると見込まれている。また、2月は中国の春節(旧正月)に合わせて輸送されたコンテナが戻ってくることで貨物量が多くなることが予想されるが、2023年2月の輸入コンテナ量は171万TEUと予測されており、前年同月から19.1%減少し、2020年6月(161万TEU)以来の低水準に落ち込むとみられている。

(注)主要輸入港には、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港が含まれている。

(樫葉さくら)

(米国)

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