米財務省、対米外国投資委の執行と罰則に関する初のガイドライン発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月21日

米国財務省は10月20日、対米外国投資委員会(CFIUS)による執行と罰則に関する初めてのガイドラインを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

CFIUSは、外国からの投資が米国の国家安全保障に与えるリスクを審査する省庁横断の委員会で、財務省が議長を務めている(注)。ガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの目的は、取引当事者が法令義務に違反した場合にCFIUSがどのように、またどの程度の罰則を科すのか、さらに、罰則の加重・減軽を含めた判断を行うに当たって勘案する要素について、公に周知することとしている。

ガイドラインはまず、法令義務違反になり得る行為について、(1)申告または届け出が義務の取引について適時の提出がされなかった場合、(2)CFIUSと合意したリスク軽減措置などに違反した場合、(3)非公式なやり取りを含めてCFIUSに提出した情報に虚偽や不備などがあった場合の3パターンを挙げている。しかし、違反行為が必ずしも罰則につながるわけではなく、CFIUSは取引の当事者や第三者から提供される情報を検証した上で、罰則が適切かを判断するとしている。CFIUSは違反行為を察知する上で、各省庁や公開情報、監査会社など第三者機関のさまざまなソースから情報を入手するとしている。一方、CFIUSが違反行為を捜査する上で取引当事者に情報を求めることもある。当事者は照会に対する情報に加えて、自己防衛などのための証拠も提出してよいとしている。また、当事者が自ら違反行為の可能性を認知した場合、書面で当該行為と関係者の情報をCFIUSに自己開示することを推奨している。

CFIUSは、入手した情報に基づいて罰則の軽重を判断する上で次のような要素を勘案するとしている。これらはあくまで例示的なもので、全ての要素を網羅しているわけではない。

  • 当事者の説明責任を追及し、将来的に法令順守させる上での罰則の影響度。
  • 違反行為が米国の国家安全保障に与える脅威の度合い。
  • 違反行為が単なる過失か、重度の過失か、意図して行われたものか。CFIUSに対する情報隠蔽(いんぺい)などの有無。組織内でどれほど上位の者が行為を認知していたか。
  • 当事者が違反行為を認知してからCFIUSが認知するまでの経過と違反行為の頻度。
  • 当事者が適時に必要な範囲の情報を自己開示したか、違反行為の是正措置や再発防止のための措置が取られたか。
  • 法令順守の社内コンプライアンス方針、内外のリソースの有無(法律顧問、コンサルタント、監査役など)。

罰則のプロセスについて、CFIUSはまず当事者に書面で罰則の通知を行う。当事者は受理から15営業日以内(CFIUSと合意すれば延期可能)に、CFIUSに再検討の申請を提出することができる。CFIUSは受理から15営業日以内(当事者と合意すれば延期可能)に最終の罰則通知を発行する。再検討の申請が期限内に受理されなければ、期限の経過後に最終の罰則通知を発行する。なお、2021年の年次報告書では、その年に罰則を科した案件はなかったとしている。

バイデン政権は9月に、CFIUSが重点的にフォローすべき分野と要因を特定した大統領令を出しており、対内投資審査の焦点や手続きを明確化する動きが続いている(2022年9月20日記事参照)。

(注)CFIUSについては、ジェトロのWEBページ「外資に関する規制(米国)」を参照

(磯部真一)

(米国)

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