国民投票で新憲法草案を否決、大統領は新たな憲法制定プロセス推進を表明

(チリ)

サンティアゴ発

2022年09月06日

チリの新憲法草案の是非を問う国民投票が94日に行われ、賛成48693票(38.14%)、反対7882,958票(61.86%)で否決された。投票数は、有権者の85.81%に当たる1,3021,063票(開票率:99.99%)だった。今回は義務投票制が採用されたこともあり、民主主義移行前の1988年に89.1%を記録して以来の高い投票率となった。

民間調査会社が行った事前の世論調査でも、反対が賛成を10ポイント前後上回る状況が続いていたが、実際には反対が賛成を20ポイント以上も上回る結果となった。新憲法草案は、国民投票の実施前から、賛成派の中でも修正を求める意見が上がっており(2022年8月23日記事参照)、ガブリエル・ボリッチ大統領もその1人だった(2022年8月10日記事参照)。草案は、新憲法議会の議席を多く獲得した現政権を構成する左派連合(Apruebo Dignidad)と中道左派連合(Socialismo Democrático)らが主導して作成したこともあり、国内メディアは反対派の圧勝という結果を「与党の敗北」として報じている。

投票結果を受けて、ボリッチ大統領は謙虚に結果を受け止めると同時に、今回のプロセスから学んだことを教訓として、他の政治勢力や議会、市民社会とともに新しい新憲法制定プロセスを推進していくと発言した。また、政府が国民の要求を満たすための課題として、治安悪化や、南部地域で多発する先住民問題に伴う暴力行為、生活コストの上昇、経済の再活性化などを挙げ、内閣改造によって新たな活力を取り入れることで、これらの課題に立ち向かうとも発言した。

(岡戸美澪)

(チリ)

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