岸田首相が国連総会で一般討論演説、各国首脳とも会談

(日本、米国、ロシア、ウクライナ、フィリピン、トルコ、イラン、ニュージーランド、韓国)

米州課

2022年09月26日

岸田文雄首相は9月20日から22日まで、第77回国連総会出席のため、米国ニューヨークを訪問した。当初は19日出発を予定していたが、台風14号の被害状況を確認し、復旧に向けた対応に万全を期すため、出発を1日延期した。

岸田首相は現地時間の9月20日に、国連総会において一般討論演説を行った。岸田首相は演説の冒頭で、国際秩序の根本が大きく揺らいでおり、ロシアによるウクライナ侵攻は国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為と指摘し、「断じてそのようなことを許してはならない」とロシアを批判した。

その上で、岸田首相は、あらためて日本の国連、そして多国間主義への強いコミットメントを示すべく、(1)国連憲章の理念と原則に立ち戻るための安全保障理事会を含む国連の改革と軍縮・不拡散も含めた国連自身の機能強化、(2)国際社会における法の支配を推進する国連の実現、(3)新たな時代における人間の安全保障の理念に基づく取り組みの推進について、日本の決意を表明した。

(1)については、30年近くにもわたり、安全保障理事会の機能不全問題について議論を重ねてきたが、「本当に必要なのは改革に向けた行動だ」として、安全保障理事会の改革に向けて、文言ベースの交渉を開始する時と呼びかけた。日本は、安全保障理事会の改革だけでなく、総会のさらなる活性化にも真剣に取り組み、「国連全体が平和と安全の維持に一層大きな役割を果たせるよう後押ししていく」と述べた。

(2)については、国連総会が1970年に採択した「友好関係原則宣言」は、法の支配を促進するための基本的原則を導き出す基盤だとし、日本は2023年1月から、安全保障理事会の非常任理事国となるが、大きな声だけでなく小さな声にも真摯(しんし)に耳を傾けながら、国際社会における法の支配を強化するべく行動する考えを示した。

(3)については、新たな時代における人間の安全保障の実現に向けて、「重要なのは、個人、社会、そして国家のそれぞれが、時代の変化と挑戦に対応するためのレジリエンスを高めることだ」とし、日本は、人間の安全保障信託基金を通じた取り組み促進も通じ、国連と共に新たな時代における人間の安全保障の実現を進めると述べた。

岸田首相は、9月20日の一般討論演説のほか、21日には国連女性機関(UN Women)主催のHe For Sheサミット、第10回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ首脳級会合、ジョー・バイデン米国大統領主催のグローバルファンド(GF)第7次増資会合に出席した。He For Sheサミット外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、岸田首相は、安倍元首相に続き、第2期のHeForSheチャンピオンに就任した。CTBTフレンズ首脳級会合外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、岸田首相は開会あいさつを行い、日本としても、CTBTの早期発効、そして検証体制の強化に向けてより一層貢献していく考えを示した。GF第7次増資会合外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいては、岸田首相は今後3年間で最大10億8,000万ドルの拠出を行うことを表明した。岸田首相は22日にはニューヨーク証券取引所(NYSE)を訪問し講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行うとともに、クロージングベルを鳴らした。

また、岸田首相は9月20~22日の米国訪問中に、フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをはじめ、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、イランのイブラーヒーム・ライーシー大統領外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとの間でそれぞれ会談を、また、米国のバイデン大統領外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますやニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとの間でそれぞれ短時間の懇談を行った。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとの間でも懇談を行い、両首脳は、懸案を解決して日韓関係を健全な関係に戻す必要性を共有し、1965年の国交正常化以来築いてきた友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係を未来志向で発展させていくという考えで一致した。

(中溝丘)

(日本、米国、ロシア、ウクライナ、フィリピン、トルコ、イラン、ニュージーランド、韓国)

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