9月4日に新憲法草案に関する国民投票、賛成派内に承認後の修正求める意見も、世論調査

(チリ)

サンティアゴ発

2022年08月23日

チリで94日に行われる新憲法草案の是非を問う国民投票をめぐり、直近の世論調査では、依然として反対が賛成を上回る状況が続いている(添付資料表1参照)。さらに、賛成派の間でも、新憲法草案は完全なものではなく、修正が加えられるべきとの声が上がっている。これを裏付けるように、民間調査会社カデムが81012日に行った世論調査では、新憲法の草案には賛成するが、その後必要に応じて修正を行うべきとの回答が、現草案の内容に無条件で賛成するという回答を25ポイントも上回っている(添付資料表2参照)。

賛成派のキャンペーンを進める現与党の左派連合(Apruebo Dignidad)と中道左派連合(Socialismo Democrático)は811日、新憲法草案についての合意済み修正項目を発表。同草案が承認された場合でも、その後の改憲プロセスに取り組む姿勢を明らかにした。合意内容には、先住民協議(Consulta Indígena)の実施について先住民に直接的な影響を与え得る事項のみに限定することや、民間の医療セクターの存続を認めること、緊急事態宣言(Estado de Emergencia)の存続、大統領の連続再選不可、司法評議会の構成の見直しが含まれた。一方で、与党連合の1つ、共産党(PC)のギジェルモ・テイレル代表は「改憲に当たっては国民の同意が不可欠であり、現時点で合意事項に係る改憲の確実な実施を保証することはない」という消極的なコメントを残しており、与党内の温度差も明らかとなった。

反対派は、主に右派、中道右派連合(Chile Vamos)から構成されるが、中道左派のキリスト教民主党(PDC)の一部議員がこれに加わり、存在感を示している。彼らは、新憲法草案が承認されなかった場合でも、世情を踏まえた改憲プロセスが必要となる可能性を見越し、改憲に必要な議席数を緩和する法案を国会に提出し、上下両院で可決された(注)。加えて、反対派が勝利した場合、新憲法制定のプロセスを民主的かつ平等な形式で仕切り直すことや、同プロセスへ専門家の意見を取り入れることなどの項目を含む請願書を政府に提出している。

(注)これにより、改憲に必要な議席数は3分の2から7分の4へ変更された。

(岡戸美澪)

(チリ)

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