林外相が米シンクタンクで講演、「法の支配」に基づく自由で開かれた包摂的な国際秩序の重要性強調

(米国、日本、ウクライナ、ロシア、中国)

ニューヨーク発

2022年08月01日

林芳正外相は729日、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で「歴史的岐路に立つわれわれの未来『法の支配に基づく自由で開かれた包摂的な国際秩序』」と題する講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。林外相は、同日に行われた日米経済政策協議委員会(経済版「2プラス2」)などに出席するため米国を訪問した(2022年8月1日記事参照)。

林外相はまず、ロシアによるウクライナ侵攻に言及し、われわれは「『法の支配』に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜けるのか」どうかが問われていると訴えた。力による現状変更が許されないことを示すために、ウクライナ支援と対ロシア制裁で世界が団結する重要性を説いた。次に、日米にとってインド太平洋地域は戦略的に最も重要な地域だと強調し、中国とはハイレベルでの率直な対話を維持していくことが不可欠、と述べた。気候変動や北朝鮮への対応といった問題で中国と協力することも重要とした。また、日米が共に目指す目標は、インド太平洋地域で「法の支配」に基づく自由で開かれた包摂的な国際秩序を構築することだと指摘。バイデン米政権が2月に発表した「インド太平洋戦略」(2022年2月14日記事参照)について、米国の同地域に対する力強いコミットメントを示すものとして評価した。

林外相は、インド太平洋地域で日米が取り組むべき3つの課題を提示した。第1に、戦略バランスの回復を挙げ、日米同盟の抑止力と対処力の強化が急務だと主張した。第2の課題には、経済秩序形成と経済安全保障を位置付けた。インド太平洋地域で、自由で開かれた包摂的な経済秩序を作るためには米国の持続的関与が不可欠と述べ、米国が主導して5月に立ち上げた「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を歓迎した(2022年5月24日記事参照)。その上で、米国はインド太平洋地域の経済的統合のリーダーであるべきとして、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への米国の復帰に強い期待を示した。「その戦略的重要性を明確に認識し、TPPを今のかたちに作り上げたのは米国」だったと呼び掛けた。経済安全保障上の新たな課題としては、重要技術の窃取、知的所有権の強制移転、経済力を背景とする威圧的な国益追求を列挙し、今回の経済版「2プラス2」では経済と外交・安全保障を一体として議論したと説明した。第3の課題には、日米同盟を支える重層的な人的交流の促進を挙げた。

写真 CSISで講演した林外相(左はCSISのクリストファー・ジョンストン上級アドバイザー兼日本部長)(ジェトロ撮影)

CSISで講演した林外相(左はCSISのクリストファー・ジョンストン上級アドバイザー兼日本部長)(ジェトロ撮影)

(甲斐野裕之)

(米国、日本、ウクライナ、ロシア、中国)

ビジネス短信 2c5dde032ee9ac29