EU理事会、既存の対ロシア制裁を補強するパッケージ採択

(EU、ロシア)

ブリュッセル発

2022年07月25日

EU理事会(閣僚理事会)は721日、ロシアのウクライナ侵攻に対する一連の制裁に、ロシア産の金の取引禁止などを追加する措置を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会が同月15日に提案した内容に沿った措置。これまでEUは第6弾までの対ロシア制裁パッケージを実施しているが(2022年6月6日記事参照)、EUは今回の追加措置を「管理・調整(maintenance and alignment)パッケージ」と位置づけ、制裁第7弾とは呼称していない。原油の禁輸を含んだ第6弾パッケージでは加盟国間の立場の違いが浮き彫りになっており、今回は短期間で合意可能な措置にとどめたとみられる。

今回の措置の柱は、ロシア産の金と宝石類の購入、輸入、輸送の禁止だ。EUへの輸入だけでなく、EUを経由した第三国向けの輸送に直接的または間接的に関わることも禁止する。金は燃料・エネルギー製品に次ぐロシアの主力輸出品であり、ロシアの戦争資金確保の手段の1つとなっていると説明した。また、軍事産業の強化につながる可能性のある二重用途物品や技術の輸出制限の対象も拡大した。

これまでの制裁の実効性を確保する措置も盛り込んでいる。例えば、貿易制限措置の迂回(うかい)行為を防ぐため、港湾手続きを強化する。また、軍事転用を防ぐ観点から、ロシアへの航空機関連の技術支援に関しては、国際民間航空機関(ICAO)の定める工業規格の枠組みの範囲内でのみ認められることを明記するなど、既存の措置を修正している。

さらに、現在の国際的な食糧やエネルギーの供給混乱への悪影響を回避すべく、EUの制裁措置がロシアからの農産物取引や石油の第三国への輸出に影響する場合、特定の国有企業との取引を制裁対象から除外する緩和措置も含めた。

個人・団体への制裁も拡張、シリアの関与も警戒

EU理事会は722日には、EU域内の資産凍結、資金提供の禁止、域内への入域禁止対象となる個人・団体に、モスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長を含む54人とロシア金融最大手のズベルバンクを含む10団体の追加を決定した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。制裁対象者は合わせて1,212人・108団体に上る。制裁対象者にはシリアからの雇い兵の調達に関わるとされる6人・1団体も含まれ、同じ趣旨で対ロシア制裁とは別に、シリアに対する制裁も同日、強化している。

(安田啓)

(EU、ロシア)

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