企業側に従業員解雇、採用凍結の動き

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年07月07日

ロシアの人材紹介大手アンコールの調査によると、16%の企業が従業員を既に解雇もしくは今後解雇すると答え、うち14%の企業は全従業員の半数以上の解雇を見込んでいる。新規採用を既に凍結している企業は52%に上った。

外資を含むロシア所在の368社を対象に4月に実施したアンケート調査で、630日にモスクワで開催された人材フォーラムの場において同社が結果を発表した。アンコールは、ロシアの失業率が2022年末には最大で8%近くまで上昇すると予測している(「コメルサント」紙630日)。

労働者側は、失業を強く懸念している。求人サイト大手hh.ru5月に全国の労働者約13,500人を対象に行ったアンケート調査によれば、回答者の3人に1人が解雇されることを恐れており、8割の回答者が仕事を維持するためには給与が減っても仕方がないと考えていることが分かった。同社は「労働者の悲観的な心理は新型コロナ禍に見舞われた2020年下半期に匹敵するレベルだ」としている(「RBK69日)。

現時点での失業率は4%前後で推移しており、急激な上昇はみられない。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、既にロシアからの撤退や活動停止を表明した企業でも人員削減はまだ実施しておらず、給与を払い続けているというのが理由の1つだ(「レグナム」63日)。ただ、ウクライナ情勢の長期化が予想される中、そういった企業も相次いで早期退職制度の導入、地場企業への事業売却など人員削減に向けた動きに出ており、労働市場に先行き不透明感が強まっている。

ロシア企業への就職に関心が高まる

こうした中、求職者側が持つ就職先のイメージに変化が生じている。アンコールによれば、現在、求職者は職探しに当たって、a.ロシア企業であること、b.製造業であれば輸入代替に取り組んでいること、c.大学で学んだ専門性が生かせること、d.各種手当があること、などを重視し始めているという。ニューノーマル(新常態)に適合し、今後も生き残れる企業かどうかが判断材料の1つになっているようだ。心理カウンセリングサービスを提供する企業ポニマユによると、企業側もメンタルヘルスの支援策を導入するなど、従業員のモチベーションの維持・向上に取り組むところが増えている。

【欧州ロシアCIS課】

(ロシア)

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