米議会、海上輸送改革法を可決、サプライチェーン混乱緩和を期待

(米国)

ロサンゼルス発

2022年06月15日

米国連邦下院議会は6月13日、2022年海上輸送改革法案(Ocean Shipping Reform Act of 2022、S.3580)を可決した。上院は2022年3月に同内容で可決済みで、ジョー・バイデン大統領の署名を経て成立する。

本法案は、「新型コロナ禍」以降のサプライチェーンの混乱に対応するために策定され、連邦海事委員会(FMC、注)の規制権限を強化することを盛り込んでいる。FMCに対しては、海上輸送業者が請求する超過保管料(デマレージ)や空コンテナの返却延滞料(ディテンション)に関する苦情を調査し、それらの料金が妥当性を判断し、不当な料金については返金を命じることを求めている。また、海上輸送業者や海上ターミナルオペレーター、海上輸送仲介業者が、貨物スペースがあるにもかかわらずその利用を不当に拒否することや、そのほかの不公正な差別的方法に訴えることを禁止している。

海上輸送改革法案をめぐっては、下院が2021年12月に2021年海上輸送改革法案(Ocean Shipping Reform Act of 2021、H.R.4996)を可決しており、上院を通過した2022年海上輸送改革法案との調整が続けられていた。海上輸送業界は海上輸送改革法案による管理強化を懸念しており、下院案に比べ、上院案の方が海上輸送業者への負担が軽いとされ、今回の上院案の可決となった。

バイデン大統領は6月10日、第9回米州首脳会議に合わせて訪問したロサンゼルス港でスピーチを行い、「アジアから米国に海上貨物を輸送する主要な海上輸送業者9社が3つのコンソーシアムを形成し、運賃を1,000%も引き上げている」と指摘した上で、こうした状況を緩和するため、海上輸送改革法案の早期成立を訴えていた(2022年6月14日記事参照)。両議会での法案可決を受けて発表された声明でも、「米国人のために価格を下げることは私の最優先事項であり、米国の小売業者、農家、消費者のコスト削減に貢献する海上輸送改革法案を超党派で可決した議会を称賛する」と本法案の意義をあらためて強調した。「この法案に署名することを楽しみにしている」とも述べ、本法案は間もなく成立するとみられる。

(注)米国連邦海事委員会は、米国の輸出業者、輸入業者および消費者の利益のために、米国の国際海上輸送システムを規制する責任を負う、独立した連邦政府の行政機関。

(永田光)

(米国)

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