パートタイム労働条約を批准

(カザフスタン)

タシケント発

2022年05月02日

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は4月20日、法案「パートタイム労働条約(第175号)の批准について」に署名した(大統領府ウェブサイト4月20日)。

パートタイム労働条約は1994年6月にILO総会で採択された。フルタイム労働者とパートタイム労働者の権利を等しくするもので、a.賃金の算出法の統一、b.団結権、団体交渉権、労働者代表として行動する権利、c.職業上の安全と健康、d.雇用や職業における差別禁止、e.母性保護(働く女性の妊娠・出産・育児などの母性機能の保護、出産・育児休暇の提供)、f.年次有給休暇の提供、g.病気休暇の提供などを保障したものだ(ILOウェブサイト)。ILO加盟187カ国中、条約を批准しているのは19カ国で、日本は批准していない。

同法案は2019年10月の省庁間委員会で決まり、2022年3月に上下院で採択されていた。カザフスタンの統計によると、2021年第4四半期(10~12月)時点で、47万人のパートタイム労働者がおり、うち半数の労働時間は週20時間未満だった。主に農業、教育、製造業従事者に多い。

今回の条約批准について、セリク・シャプケノフ労働・国民社会保障相は、パートタイムとフルタイム労働の待遇格差を是正することによって多様化する労働形態を保護し、国際社会での地位向上を目指したものだとしている(労働・国民社会保障省ウェブサイト3月31日)。

トカエフ大統領は2020年12月、主に国有企業で問題となっていた下請けと元請けの賃金格差是正のため、労働法典103条を改正し、業務内容が等しい下請け企業の従業員給与は元請け企業の従業員給与水準とする(2020年12月19日付カザフスタン共和国法第386₋Ⅳ号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)など、貧富の格差の主因となっている給与格差是正を図ってきた。国際条約批准により、この流れをさらに強固なものとしていく構えだ。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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