インド識者・メディア、米国主導のIPEFを注視

(インド、世界)

ニューデリー発

2022年05月27日

インドのナレンドラ・モディ首相は5月23日、東京で開かれたインド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity)の発足式に参加した(2022年5月24日記事参照)。モディ首相は発足式で、インド太平洋地域の交易でインドが歴史的に重要な地位を占めてきた点を指摘した上で、包括的で柔軟なIPEFの構築に向け、政府として貢献することを宣言した。また、強靭(きょうじん)なサプライチェーンには信頼、透明性、適時性(タイムリー性)の3つの要素があると述べ、IPEFの枠組みでこれらの要素が強化されることにより、同地域に発展と平和、繁栄がもたらされるとした。

インド国内でも、IPEF参加について各紙が報じている。「ミント」紙(5月24日)は社説で、IPEFはインドが地域間連携の枠組みに参加する貴重な機会として捉えるべきとの見解を示した。IPEFによって他国の市場アクセスが容易になり、インドの輸出拡大につながるならば、積極的にIPEFに参加することが望ましいとしている。他方、米国式の労働者保護や「公平な貿易」を装った非関税障壁の主張が出てきた場合には、慎重に対応する必要があるとした。

「プリント」紙(5月20日)も、インド開発途上国研究情報システムセンター(RIS)のプラビール・デ教授による同様の見解を報じている。インドは中国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)の交渉から2019年11月に離脱した経緯があるが(2020年11月20日記事参照)、「インドと米国が参加するIPEFはそのギャップを埋める枠組みになり得る」とした。一方で、別の「クイント」紙(5月24日)は、気候変動やインフラなど一部の領域はインドの利益に合致しない恐れがあるとする同教授の指摘にも言及している。

「インディアン・エクスプレス」紙(5月24日)は、ジャワハルラル・ネルー大学のビスワジット・ダール教授のさらに慎重な見解を報じている。特に、米国がIPEFで協議したいとするEコマースやデータローカライゼーションは、これまでも米国インド間の協議で難航している領域である点を指摘。「エコノミック・タイムズ」紙(5月23日)も、IPEFの方向性や内容が未知数とした上で、米国が2022年11月に中間選挙を控えていることから、すぐには大きな進捗が期待できないのではとの見方を示した。

(広木拓)

(インド、世界)

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