グジャラート州電力公社が産業界に酷暑期の節電対応を要請

(インド)

アーメダバード発

2022年05月17日

インド気象局(IMD)によると、インドの北西部および西部で、2022年は過去122年間で最も暑い4月を記録したとし、5月に入っても45度前後の気温が続いている。5月に酷暑期を迎えるインドでは、「新型コロナ禍」の沈静化に伴う経済活動の再開の動きを受け、ラジャスタン州、デリー準州、ハリヤナ州などインド北部地域の電力供給が逼迫しており、ラジャスタン州では既に計画停電や使用量の制限措置を開始している(2022年5月13日記事参照)。

インド西部のグジャラート州でも、今夏以降の電力需要の大幅な増加を見越して、州発電公社(Gujarat State Electricity Corporation:GSECL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が、電力供給は十分として一時稼働を停止していたジャムナガール近郊のシッカにある2基の石炭火力発電所を再稼働することを決めた。これらの再稼働に向けて約120万トンの石炭をインドネシアから輸入する予定で、計500メガワット(MW)の電力量が増強される(「フィナンシャル・エクスプレス」紙5月4日)。

一方、グジャラート州電力公社(Gujarat Urja Vikas Nigam LTD:GUVNL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、3月末に2度にわたり、同州内全域の各産業に対して節電を呼び掛ける通達を出している。同通達は州内の主要な都市・地域ごとに曜日を割り振り、節電のための休業日とするよう企業に要請するもの。これは曜日ごとの使用電力量の偏りを平準化するための措置で、4月1日から有効とされている。

同通達は、(1)医療関連や高炉メーカーなど一部企業を除く全産業が対象となる自粛要請、(2)該当する曜日の日中の操業の自粛、(3)強制的な停電は行わず電力供給は維持される、という内容となっている。また、査察や罰則の有無、通達の有効期限に関しては明確に記載されていない。

今回の要請に対し、グジャラート商工会議所(GCCI)は、差し当たり15日間延期するようGUVNLに要請していた。このような通達が出る場合、産業界が対応策を講じるために、3カ月から6カ月の猶予が与えられるのが通例だが、今回はそのような経過措置がない。多くの産業は、事業計画に従い年度末を迎えており、操業に影響が出ることで経済的損失が拡大するとの懸念を示している(「アーメダバード・ミラー」紙3月31日)。

アーメダバード近郊には「マンダル日本専用工業団地」や「サナンドII工業団地」などにおいて多くの日系企業が操業しているが(2022年4月25日記事参照)、ジェトロが4~5月にかけてヒアリングしたところ、各社とも州電力公社の要請を受け、要請通りに対応しようと苦慮している。しかし、急に休業日を変更するのは人員確保の面から難しいという実態もあり、休業日は変更しないが、電力消費の大きい機械の運転日を変更して対応、3直を2直に落として節電、もしくは操業時間を短縮して対応、などの声も聞かれた。今回の自粛要請に対しては、半導体不足や物流の混乱の影響により、現時点で生産量そのものが落ちているため、柔軟に対応できているという側面もあるとのことだ。また、現時点では現場に査察が入ったという事例も確認されていない。

一般的に電力供給に問題がないと言われるグジャラート州だが、今回の通達に加え、燃料価格の上昇に伴う発電コスト上昇などを受け、電力価格の値上げも予定しているとされ(「インディアン・エクスプレス」紙5月5日)、日系進出企業も夏場の電力供給の動向を注視している。

(古川毅彦)

(インド)

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