日欧企業、ロシアにおける不正取引被害の事例と対策方法を共有

(ロシア)

モスクワ発

2022年02月01日

2022年1月20日に、モスクワ・ジャパンクラブ商工部会通関委員会と在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)の税関・運輸委員会による意見交換が行われ、日欧企業とも不正取引(注)が課題と認識していることが浮き彫りとなった。意見交換会は、直近1年間のロシアにおける通関、物流に関するトピックを共有し合う場として毎年開催される。

モスクワ・ジャパンクラブ商工部会通関委員会の近藤純座長から、在ロシア日系企業を対象にした通関アンケート(2021年版)の結果(2021年10月29日記事参照)、および不正取引でビジネスへ影響が出ている日本企業の事例が報告された。ロシアの現地大手法律事務所DLAパイパーのセルゲイ・ワシリエフ氏は「AEB加盟企業からも同様の事例が報告されている」とした上で、商品の調達価格が販売先となるユーラシア経済連合(EEU)市場価格の半分を下回る場合に不正取引の対象となりやすいと分析した。また、不正取引は主に、a.不正申告、b.密輸に分類される。並行輸入品対策も含めるかたちで、商標登録や統一的な価格戦略の設定など複数の手段を組み合わせることが対策として有効、との見解を示した。

AEBは、通関アンケートで発生件数の減少が報告された抜き打ち検査・事後調査、HSコードの修正要求に関して、いまだ課題が残る、との見解だ。AEB税関・運輸委員会のウィルヘルミナ・シャフシナ委員長(アーンスト&ヤングCISアソシエート・パートナー)が通関行政の注目すべき動きとして、「税関当局による課税価格の修正要求」を挙げた。修正要求は通関後3年間が対象期間となり、時間がたってから税関から指摘される点で留意が必要だ。同委員長は、修正要求がなされた際には客観的事実をもって根気よく説明し、要求を安易に受け入れるべきではないとした。現場で通関業務に携わる郵船ロジスティクスのギュゼル・ゲラシモワ氏は、HSコードの修正要求への対策として指摘されやすいポイントを踏まえて、事前に説明資料を準備する必要性を説明した。

(注)ここでいう不正取引は、通関申告の不正や、密輸を含む正規の通関を経ずにロシア市場へ流入する真正品の取引を指す。

(菱川奈津子)

(ロシア)

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