広州市、RCEP利活用企業に対し11項目の支援策を発表

(中国)

広州発

2022年02月10日

中国国際貿易促進委員会広州市委員会(以下、広州市CCPIT)は1月18日、記者会見を開催し、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の利活用促進に向けた企業への具体的支援策を発表した(注1)。

広州市CCPITの劉澤武副主任は、広州市CCPITが「RCEPの質の高い実施を推進していくための行動方案」を策定しており、同方案に基づき、今後の企業RCEPの利活用の促進に向けて11項目の措置を実施する旨を明らかにした。具体的には、RCEPに関する情報発信の強化、企業向け研修の実施、利活用に際しての企業の問題を速やかに把握し対処する「ファストトラック」サービスの提供、原産地証明書発行におけるプロセスの最適化に向けたワンストップ化・電子化・セルフサービス印刷の実現などを挙げた(添付資料表参照)。

そのほか、劉副主任は、RCEPの利活用の推進に向け、今後、関係機関などとの連携を強化し情報共有を図っていくと述べた。

在華南日系企業の中にも、RCEPを活用する動きがみられる。広州市南沙区でプラスチック加工品を生産する出光複合工程塑料(広州)〔出光興産(本社:東京都)の100%子会社〕は、RCEP発効初日(2022年1月1日)に「中華人民共和国税関認定輸出事業者管理弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で定められた「認定輸出事業者」の承認を受けた。「認定輸出事業者」は、生産品目や輸出品目がRCEPの原産地規則を満たす場合、税関に申請することなく自社で原産地証明書を発行することができる(2022年1月27日記事参照)。同社の松川浩二総経理は「当社の製品は日本、シンガポール、タイなどの自動車、パソコン部品メーカーなどに供給している。認定輸出事業者の承認を得たことで、RCEPによる商機をつかみ、先行者利益を得ることができる」と述べた。

ジェトロ広州事務所が1月20日に実施したセミナーでは、広東真広企業管理顧問(TJCCコンサルティングサポートサービス)の劉航副総経理が、RCEPの概要や原産地規則、日系企業の活用方法について解説した。

劉氏は、中国ASEAN自由貿易協定(ACFTA)など他の貿易協定と、RCEP加盟国・地域内での特恵関税の関税率や引き下げスケジュールを比較。優遇を受けられる地域・タイミングを見極めることが効果的な活用のポイントとした。このほか、原産地規則の「累積」規定(注2)を正しく理解し、運用することも重要だと説明した。

質疑応答では、RCEPの活用を通じた、ASEANにおける日系企業と中国企業との共同調達など貿易面での連携や、日本から中国への原材料などの輸出拡大の取り組みなどの質問が寄せられた。

(注1)商務部など6部門も1月26日にRCEP協定の実施に関する指導意見を発表し、RCEP利活用促進に向け、中国政府の取り組みも進んでいる(2022年2月1日記事参照)。

(注2)「累積」とは、1つの締約国(自国)では原産地規則を満たすことができなくとも、他の締約国の原産品を自国の原産材料とみなして使用することを認めるもの。RCEP協定では、他の締約国の原産材料を自国の原産材料とみなすことができる「モノの累積」と呼ばれる制度が採用されている。

(田中琳大郎)

(中国)

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