英国初の環境債を2021年に発行、企業には気候変動影響情報の開示義務化

(英国)

ロンドン発

2020年11月13日

英国のリシ・スーナック財務相は11月9日、同国初のグリーンボンド(環境債)を2021年に発行することを発表した。同債券は、気候変動対策に取り組むインフラ投資などのための資金調達が目的の1つとされている。世界的にみても、気候変動対策に対する注目から、環境債の発行額が年々増加している。さらに政府は、気候変動が財務などに与える影響に関する情報の開示を2025年までに企業に義務化することも発表した。同制度は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)(注)」の提言に基づいて整備される予定で、TCFDに沿った情報開示の義務化は英国が世界初となる。英国金融行為規制機構(FCA)は2021年1月から、ロンドン証券取引所に優良上場企業を対象に、TCFDに沿った開示義務ルールを導入する。また、同年前半には、資産運用会社や生命保険会社、年金プロバイダーなどへ対象を拡大することについて、意見聴取を行う予定。

英国は2021年11月に同国グラスゴーで予定される第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開催国となっているほか、温室効果ガスの純排出ゼロを目指すなど、環境対策に注力しており、金融分野でのグリーン化の取り組みを打ち出した。

英国がEU側に対し同等性を認める

スーナック財務相は、英国のEU離脱に伴う移行期間終了後の英・EU間の金融市場についても言及。双方の間の金融サービス断絶を防ぐ措置として検討が進んでいる「同等性評価」について、EUを含む欧州経済領域(EEA)に対し、英国が同等性を認めることを表明した。これまで、英国側の独自規制の主張などにより、「同等性評価」に関する交渉は難航していた(2020年6月29日記事参照)。EU側は依然として判断しておらず、今後の結果に注目が集まるものの、労働党の影の財務相のアンネリーゼ・ダッズ氏は英国側の同認定について、既に多くの雇用や資産が英国から流出したとし、「英国で最も重要なセクターの1つである金融サービス分野の市場アクセスを保証するのが遅すぎた」と批判の声を上げている。

(注)G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示と金融機関の対応策について検討すべく設立された組織。

(尾崎翔太)

(英国)

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