植物由来の製品めぐる欧州議会の採決に畜産業界が反発

(EU)

ブリュッセル発

2020年11月04日

欧州議会は10月23日、大豆など植物を原料とした加工食品に「バーガー」や「ソーセージ」といった食肉製品用語を用いることを禁じるとした、EUの共通農業政策(CAP)の関連規則の修正案を否決外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。その一方で、「ミルク」や「バター」といった乳製品用語を用いることは、EU司法裁判所が2017年に一部の例外を除いてEU規則に違反しているとの判断を示している(2017年8月7日記事参照)ことを受けて、欧州議会も使用を禁止するとした修正案を採択し、植物由来の「食肉製品」用語と「乳製品」用語で異なる結果となった。

畜産業界は対決姿勢崩さず

欧州では近年、菜食主義者や肉製品の消費を意識的に減らす「フレキシタリアン」が増えており、植物由来の製品の種類も豊富になってきた。2020年上半期には、新型コロナウイルス感染症の流行とともに、消費者の健康志向の高まりを反映するように、売り上げが急速に伸びた。こうした状況に対し、欧州の畜産業界団体は、植物由来の製品名に食肉製品用語を用いることは消費者に誤解を与え、また「食肉製品と同程度の栄養価がある」といった植物由来の製品の宣伝には問題があると繰り返し非難、「乳製品」に続いて「食肉製品」についても用語の使用を禁じる法的な根拠の策定を求めていた。一方、植物由来の製品を生産する企業などは9月に「欧州植物由来製品アライアンス(EAPF)」を結成し、修正案の採択に反対するキャンペーンを行っていた。

今回の修正案の否決について、ケラー&ヘックマン法律事務所のカティア・レンツ弁護士は10月23日付のフランスの日刊紙「ル・フィガロ」の取材に対して、EUレベルで一致しなければ、各加盟国が独自に制限を設けることが可能との見解を示した。実際、既にフランスでは5月に「農産物・食品に関する情報の透明性に関する法律外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が成立し、それによって、植物由来の製品に食肉用語を用いることが禁止されている。

こうした状況から、欧州の畜産業界団体の1つである欧州家畜食肉取引業者連合(UECBV)が10月23日付声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、加盟国レベルでの食肉用語の使用禁止を求めるように各国の会員団体に促すなど、畜産業界は対決姿勢を崩していない。

(滝澤祥子)

(EU)

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