欧州ICT業界、デジタル化推進のための提言書発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月26日

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは10月21日、重点的に投資を行うべき10項目(添付資料参照)を挙げた提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が9月16日に行った一般教書演説で、EUの「新型コロナウイルス危機」からの復興基金の20%をデジタル化政策に活用すると発表したこと(2020年9月17日記事参照)を受けたものだ。

復興基金の有効活用と速やかな実施を訴える

10項目の提言の1つは、中小企業のデジタル化の推進だ。具体的には、中小企業の国際取引の拡大のため、欧州レベルで統一した貿易に関する手続きができるポータルサイトを構築することや、オープンデータの活用の推進を提言した。後者については、データの活用によって、運輸や農業、小売りなどさまざまな部門の成長が期待でき、新たなユニコーン企業を生むチャンスがあるとした。

また「EUで最もデジタル化が進んでいない部門」という建設部門のデジタル化の推進も提言した。欧州委は10月14日、既存の建物のエネルギー効率の改善を促す大規模改装推進計画「リノベーション・ウェーブ戦略」を発表した(2020年10月15日記事参照)が、その手段としてデジタルヨーロッパは、スマートメーターやエッジコンピューティング(注)などデジタル技術の活用を訴えた。それに伴って、環境分野での成果だけでなく、民間投資の増加や専門的な知識を持つ建築家、建設現場の作業員、技術者などの雇用を生むことが期待されるとした。

デジタルヨーロッパはデジタル化の推進のために「どのように投資するか」が重要であり、その決断が「今後5年間の欧州をつくる。スピードが重要だ」として、総額7,500億ユーロ規模のEUの復興基金の有効活用と速やかな実施を訴えた。

(注)必要な一部の情報処理をユーザーや端末に近いネットワークの周辺部(エッジ)で行う技術。

(滝澤祥子)

(EU)

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