国家安全保障の観点から外資審査を強化、法改正の方針を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2020年06月12日

オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ財務相は6月5日、外国投資の認可において、国家安全保障の観点に基づく新たな審査を導入する方針を発表した。あわせて、監視・調査体制の整備や罰則の強化など、一連の改革を行う計画で、7月に法改正の草案を公開し、2021年1月1日の施行を目指す。

今回発表された改革の方針PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、投資額の大小に関わらず、メディア、通信、エネルギー、防衛産業などのセンシティブ分野における外国投資には事前通知が義務化される。外国人が所有する既存の事業体がセンシティブ分野での事業を新たに開始する場合にも、通知の義務が課される。

また、政府に時限的な「コールイン」権限が付与され、通知の義務がない外国投資であっても、国家安全保障上の理由から、審査が適用される可能性がある。「コールイン」が発動されることを避けるため、外国人投資家が自発的に事前通知を行ったり、投資案件ごとに適格な投資家であることを示す証明書を申請したりできるよう、制度を整える。あわせて、「コールイン」の適用範囲などに関するガイダンスを発行する。

さらに、政府にはレビュー権限も付与され、承認済みの外国投資についても、国家安全保障上のリスクが生じた場合、あらためて審査を行うことが可能となる。その結果、政府は必要に応じて、新たに条件を課したり、または既存の条件を変更したりできるほか、最終手段として売却を要求することができるようになる。

オーストラリアではこれまで、非常に多額、またはセンシティブ分野の投資については、国益に反しないかが検証されていたが、今回示された国家安全保障の観点とともに、国益に関する審査も引き続き行われる。なお、オーストラリアでは、新型コロナウイルスの影響から国益を守るため、全ての外国投資に対して、オーストラリア政府の認可を必要とする措置が3月末から暫定的に導入されている(2020年3月30日記事参照)。

フライデンバーグ財務相は、「1975年に関連法が導入されて以来の最も重要な改革であり、近年、他国でも同様の動きがある」と説明した。他方で、「外国投資は、雇用の創出、海外市場へのアクセス改善、生産性の向上をもたらすものであり、オーストラリアは外国投資を歓迎している」と強調した。

(住裕美)

(オーストラリア)

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