新議会は環境系政党が勢力拡大も、連邦参事会(内閣)では現職参事(閣僚)が再任

(スイス)

ジュネーブ発

2019年12月18日

スイス議会は12月11日、スイス連邦参事会(内閣)の4年の任期終了に伴い、次任期(2020年1月~2023年12月)の参事(閣僚)について、指名(続投希望者の場合は信任)投票を行い、現職参事が再任された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

再任された7人は、参事在職期間が長い順に次のとおり。

  • ウエリ・マウラー 現大統領兼財務相(スイス国民党) 信任投票数:213/221
  • シモネッタ・ソマルガ 現副大統領兼環境・運輸・通信・エネルギー相(社会民主党) 192/218
  • アラン・ベルセ 現内相(社会民主党) 214/230
  • ギー・パルムラン 現経済・教育・研究相(スイス国民党) 191/204
  • イグナツィオ・カシス 現外相(急進民主党) 145/238
  • ビオラ・アムヘルド 現防衛・国民保護・スポーツ相(キリスト教民主党) 218/232
  • カリン・ケラー=ズッター 現法務・警察相(急進民主党) 169/206

緑の党(GPS)のレギュラ・リッツ党首も参事に立候補したが、得票数が現職に及ばず、落選した。

スイス議会は、2019年10月に実施された4年ぶりの総選挙で上下院の体制が一新され、緑の党が議席数を大幅に伸ばし、スイス国民党(SVP)、急進民主党(FDP)、社会民主党(SP)が議席を減らしたため(2019年10月28日記事参照)、今回の参事会指名では、議会勢力を参事会構成に反映するのか、現職を尊重するのかが争点となっていたが、現行体制が維持された。

これまで連邦参事会(7人)は、得票数の多い上位4党から、それぞれ2人(SVP)、2人(SP)、2人(FDP)、1人(キリスト教民主党、CVP)が選ばれてきており、その暗黙の了解に基づく配分は「マジック・フォーミュラ」と呼ばれていた。ところが、10月の選挙の結果、GPSが上下院で33議席を獲得し、FDPの獲得議席数31を上回り、議会勢力を大きく伸ばしたことから、同党のレギュラ・リッツ党首がGPSからの入閣を主張し、参事に立候補した。現職7人が続投を希望したにもかかわらず、GPSが新たに入閣を果たすと、現職参事が再任されないというまれな事態になり、5党与党体制となれば1995年から続くマジック・フォーミュラが崩壊することになる。新体制での参事会の構成については、SVPから獲得議席数が少なかったCVPの参事官ポストをGPSに譲る案や、獲得議席数で直近上位のFDP枠から1ポストを譲る案など、さまざまな可能性が報道されてきた。

しかし、選挙結果は、連邦参事会現職の評価が高く、交代させるには及ばないことを示すかたちとなった。EUとの制度的条約交渉など、外交ではかばかしい成果を上げてこなかったと指摘されるカシス外相に対する信任投票でも、約6割の信任投票があった。逆に、同相不信任の投票を行った93人のうち、82人がレギュラ・リッツ氏に投票したが、これは環境系左派の2政党とSPの国民議会合計議員数83人にすら届かなかったことを意味する。なお、ケラー=ズッター法務相も信任投票獲得率は9割を切っているが、これはEUとの間で「ヒトの自由な移動」に反対しているSVPの一部議員が、同政策を推進している同相に対して、不信任の意思表示をしたものとみられる。

今回の現職参事の再任により、マジック・フォーミュラの見直しなどの議論は、現職参事の辞任がない限り、次回総選挙(2023年)後に持ち越しとなった。

(和田恭、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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