イタリアのENI、原油の商業生産を開始

(メキシコ、イタリア)

メキシコ発

2019年07月04日

イタリアの石油・ガス大手ENIインターナショナルは7月2日、2015年9月に実施された炭化水素資源鉱区の民間開放入札(ラウンド1フェーズ2)で獲得したメキシコ湾浅海の第1鉱区(2015年10月20日記事参照)にあるミストン(Miztón)油田で、原油の商業生産を開始したことを発表した。ミストン油田はタバスコ州サンチェス・マガジャネス市沖の深さ34メートルの海底にある。ミストン第2油井の初期生産量は日量1万5,000バレルを想定し、2021年には油田全体で日量10万バレルの生産を見込む。

鉱区1はミストンに加え、アモカ(Amoca)、テコアリ(Tecoalli)の3油田から成り、ENIは全体の総可採埋蔵量を21億原油換算バレル(原油資源が9割、ガス資源が1割)と見込む。今後、既存のミストンのプラットフォームに加え、アモカに2カ所、テコアリに1カ所、プラットフォームを設置し、鉱区全体の生産を活性化させる。ENIのクラウディオ・デスカルツィ最高経営責任者(CEO)は「最初の試掘から2年半未満、国家炭化水素資源委員会(CNH)による開発計画の正式承認から1年未満の商業生産開始は、国全体の石油生産の拡大を目指すメキシコ政府の期待に沿うものだ」と語っている。

炭化水素資源開発の民間開放再開を望む声も

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、エネルギー改革の効果が見られないとして、新たな鉱区開放ラウンドやPEMEX鉱区の共同開発入札を中止している(2019年6月17日記事参照)が、実際は微量ながら民間鉱区からの資源生産が増えている(図1参照)。CNHのデータによると、5月時点で日量7万4,000バレルが民間鉱区から生産されており、今後、これにENIの1万5,000バレルが加わることとなる。石油鉱区開発には探査から開発、生産開始まで長い期間を要するため、2014年末に初めて鉱区開放が実施されたことを考えると、現時点で大きな成果を望むこと自体が間違っていると指摘する識者もいる。

図1 民間部門の原油・天然ガス生産量

現政権下でPEMEXの2019年投資予算は前年比4割弱増加したが、5月時点でも原油生産の減退は続いている。2004年にピークを迎えた原油生産は右肩下がりで推移しており、5月も前月比0.9%減の日量158万4,000バレルとなり、ピーク時の半分以下の水準だ(図2参照)。PEMEXは開発が容易な浅海油田に投資を集中させているが、豊富な資源はメキシコ湾大水深やシェール鉱区に眠るといわれており、高い技術力や豊富な資金を持つ民間企業に開発を委ねるべきだという声は強い(2019年4月24日記事参照)。

図2 PEMEXの原油・天然ガス生産量

(中畑貴雄)

(メキシコ、イタリア)

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