労働手帳、2021年以降の電子化の方向へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年07月11日

ロシア連邦政府法案委員会は7月1日、3つの連邦法案「労働基本法の修正」「連邦法『強制年金保険システムにおける個人の算出』の修正」「労働活動情報の提出期限、不完全・誤情報の提出における雇用者責任部分に関する行政違反基本法の修正」を承認した。法案は7月8日に下院に提出、受理された。成立すれば、2021年1月以降、労働手帳は原則として電子化され、現在使われている紙版の労働手帳は2027年に廃止となる。雇用者が年金基金に通知している関連情報も、電子的に通知されこととなる。

労働手帳とは、国民の就労に関する情報を明記した文書(書籍)で、氏名、生年月日、学歴、職業、専門、職歴などが記載され、年金額の算定などに用いられる。ロシアでは従業員の雇用に際し、雇用者が従業員の労働手帳を保管する。最初に就労した会社で発行され、基本的に就労先の人事担当部署で保管される。勤務先との関係が全て人事部署担当者の署名付きで記載され、退職の際には被雇用者による署名が行われる。転職の際には、被雇用者が新たな就職先に労働手帳を提出するかたちだ。

企業情報調査会社SKBコントゥルが発行するニュース(2月15日)によると、今回の法改正で、被雇用者の職歴関連データを保管するデータベースが創設される。紙版では紛失、偽造のリスクがあり、仮にそういうリスクに遭遇した場合には職歴の修復が難しかった。電子化でそのリスクを軽減するとともに、年金基金関連の個人情報の管理にも連動させる。労働手帳の電子化は、就職に伴って発生する情報のやり取りにおける雇用者、被雇用者の費用・手間・時間を削減し、遠隔での雇用手続きを簡素化するものとしている。

さらに、雇用者が年金基金への登録・情報取得をオンラインで行うことで、非雇用者が社会保障や外国渡航時のビザの申請、銀行融資を受ける際などに、現在は必要とされる労働手帳のコピー提出の必要性がなくなる。他方、電子媒体上の個人情報管理の課題として、勤務履歴など情報の改ざんの可能性や、システムダウン時の情報閲覧などのリスクが指摘されている。

このほか、ロシア人の身分証明書である国民パスポート(国内用パスポート)の電子化も取り沙汰されている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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