VW、特別投資契約の意思をプーチン大統領に表明

(ロシア、ドイツ)

欧州ロシアCIS課

2019年04月16日

フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長は4月12日、モスクワのロシア大統領府でプーチン大統領と会談し、特別投資契約(SPIC)を締結する意向を表明したほか、ロシアの商用車製造大手ガズとの協業関係に関する議論を行った。

SPICは、企業側が7億5,000万ルーブル(約12億7,500万円、1ルーブル=約1.7円)以上の投資や特定の生産工程の現地化などを約束することで、ロシア政府側から補助金などの政策支援を受けるスキーム。ロシア大統領府ウェブサイトに公開された会談の様子は限られるが、プーチン大統領は、VWがロシアに累計で20億ドル(注1)の投資を実施していること、2018年の生産台数20万台のうち10%に当たる2万台を輸出していることを評価した。一方、ディース社長はSPIC締結の意思表明のほか、VWが沿ボルガ地域のニジニ・ノブゴロドで展開するガズとの協業・追加投資計画に関して、プーチン大統領(ロシア政府)との協議を要請している。

SPICの内容は公開されないが、デニス・マントゥロフ産業商務相のコメント(2月14日)によると、VWの総投資額は120億ルーブル程度で、変速機などが現地化の対象となる見通し。一方、ガズとの協業に関しては、ガズが米国の制裁対象となっていることから、VW側は資本関係の強化などについて慎重になっているとされる(2019年3月7日記事参照)。SPIC締結の申請自体は2018年末に既に政府へ提出されているとの報道もあり(注2)、今回の会談は、ガズとの協業に関するVW側の方針を説明した上で、SPIC締結交渉の妥結も含めロシア側と議論した可能性がある。

SPICについては、アフトワズ・ルノー・日産・三菱連合は2018年末に締結済み(2019年1月21日記事参照)で、トヨタは3月末に締結を申請したことが報じられている(2019年4月1日記事参照)。

(注1)大統領府ウェブサイトで単位は示されていないが、「ドル」であることが確認されている(RBK4月12日)

(注2)フォルクスワーゲン・ロシアのマルクス・オレゴビッチ社長のコメント(「オートニュース」3月5日)。このほか、現地化の対象として、既に同社カルーガ工場で組み立てられている1.6リッターエンジンのほか、1.4Tsiエンジンの組み立てが想定されていると報じられている。

(高橋淳)

(ロシア、ドイツ)

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