米中対立の新常態-デリスキングとサプライチェーンの再構築 バイデン政権による対中政策の現状と展望
対立を前提にサプライチェーンの検証を

2024年1月18日

米国のバイデン政権の対中政策を検証する上で、最も重要な演説の1つは2023年4月27日にジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が首都ワシントンDCのシンクタンクのブルッキングス研究所において行った演説だろう。「米国の経済的リーダーシップの刷新(Renewing American Economic Leadership)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと題する演説は、中国との競争を念頭に、同政権の対外経済政策を規定する諸要素を解説する内容で、今日でも多くの示唆に富む(注1)。バイデン政権がこれまでに打ち出した中国関連の施策の多くは、演説が示した政策の方向性を具現化したものと位置付けられる。本稿では、以下に同演説のポイントと、それに対応した施策を例示する形式で、政権による対中政策の軌跡を振り返り、今後を展望する。

米国が直面する4つの課題と5つの対応策

サリバン補佐官は演説の冒頭で、バイデン政権の発足時に米国は4つの主要課題に直面していたとの認識を示した。1つ目の課題として指摘したのが、国内産業基盤の空洞化である。単純化された市場効率の名の下に、戦略物資の産業や雇用とともにそのサプライチェーン全体が海外へ移転。金融のような特定セクターに特権を与える改革が過去に行われた一方で、半導体やインフラなど必要不可欠な部門が縮小したとした。2つ目の課題は、新たな国際環境への適応である。過去数十年の米国の対外経済政策は、経済統合が各国をより開放的で責任あるものにするとの前提に依拠してきた。しかし、実際には多くの場合でそうならず、中国は鉄鋼などの伝統産業だけでなく、クリーンエネルギー、デジタル・インフラ、先端バイオテクノロジーといった将来の主要産業においても巨額の補助金を継続してきたとした。3つ目は、気候危機の加速とエネルギー・トランジションの必要性である。気候変動目標の達成には遠く及ばない状況にあり、21世紀の成長機会であるクリーンエネルギー経済の戦略を早急に構築する必要があるとした。最後の課題として指摘したのは、経済格差とそれが民主主義にもたらすダメージである。貿易から生じる利益は全国に広く共有されるはずであったが、実際には多くの労働者に届くことはなかったとした。また、国内製造業に強い打撃を与えたチャイナ・ショック(中国製品の流入)は、適切に予期されず、影響が明らかになった後も適切に対処されることはなかったと断じた。

表1:バイデン政権発足時に米国が抱えていた主要課題
課題 主な内容
国内産業基盤の空洞化 戦後の米国に活力をもたらした公共投資のビジョンは消え去り、減税と規制緩和、民営化、貿易自由化といった一連の考えに取って代わられていた。単純化された市場効率の名の下に、戦略物資の産業や雇用とともにそのサプライチェーン全体が海外へ移転。金融のような特定セクターに特権を与える改革が行われた一方で、半導体やインフラなど必要不可欠な部門が縮小。
新たな国際環境への適応 過去数十年間の国際経済政策の多くは、経済統合が各国をより開放的かつ責任あるものにするとの前提に依拠。しかし、中国は鉄鋼などの伝統産業だけでなく、クリーンエネルギー、デジタル・インフラ、先端バイオテクノロジーといった将来の主要産業においても巨額の補助金を継続。米国は将来を左右する重要技術の競争力を失っていた。
気候危機の加速とエネルギー・トランジションの必要性 安定的で安価なクリーンエネルギー供給についての明確な道筋を持たず、気候変動目標の達成には遠く及ばなかった。クリーンエネルギー経済を構築することは、21世紀における最大の成長機会の1つ。雇用を生み出し、コストを引き下げ、イノベーションを前進させる慎重かつ実践的な投資戦略が求められていた。
経済格差と民主主義にもたらすダメージ 貿易から生じる利益は最終的に全国に広く共有されるはずであったが、実際には多くの労働者に届くことはなかった。米国の中間層が行き場を失う一方で、富裕層はかつてないほどに好調だった。製造業に強い打撃を与えたチャイナ・ショックは適切に予期されずに、そして影響が明らかになった後も適切に対処されることはなかった。

出所:「Remarks by National Security Advisor Jake Sullivan on Renewing American Economic Leadership at the Brookings Institution」から作成

演説では続いて、米国が抱える上記の課題解決のための5つの措置(step)が提示された。すなわち、(1)現代的な産業政策によって国内に新たな製造基盤を構築、(2)パートナー国と協力し能力、強靭(きょうじん)性、包摂性を構築、(3)伝統的な貿易協定を超えた、新たな国際経済パートナーシップへの移行、(4)新興国に対し数兆ドルの投資を動員、(5)「小さな庭を高いフェンス(a small yard and high fence)」で囲い込む方式で米国の基盤技術を守る、の5点であり、いずれも中国との競争を意識した内容となっている(表2参照)。

(1)1つ目の措置である「現代的な産業政策によって国内に新たな製造基盤を構築」では、国家安全保障の観点から、民間企業が必要な投資をできていない重要分野を特定し、公共投資を振り向けて長期的成長の基盤を整備するとした。例えば、重要鉱物は8割以上が中国で加工されていているため、クリーンエネルギーのサプライチェーンを武器化される恐れがあり、インフラ投資雇用法(IIJA、2021年11月成立)やインフレ削減法(IRA、2022年8月成立)を通じて行動を起こしていると指摘した。実際にIRAでは、電気自動車(EV)用バッテリー材料であるグラファイト(黒鉛)など重要鉱物の調達先から、中国などの懸念国を排除する補助金ルールが定められた。さらに、米国内での重要鉱物や電池などの製造に対する税額控除として約306億ドルの予算を割り当てている。このほか、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法、2022年8月成立)における半導体の国内製造能力増強のための補助金(390億ドル)なども「現代的な産業政策によって国内に新たな製造基盤を構築」に沿った施策と位置付けられる。商務省では2030年までに、少なくとも2つの半導体クラスターを国内に形成したい考えだ。連邦政府の発表によると、こうした補助金が呼び水となり、2021年1月のバイデン政権発足以降、2023年8月までの期間における民間の投資公表額は、EV・バッテリー関連で1,330億ドル、半導体・エレクトロニクス関連では2,310億ドルに上ったとされる。

(2)2つ目の「パートナー国と協力し能力、強靭性、包摂性を構築」では、米国と同志国がともに投資を行い、強固で強靭な最先端の技術・産業基盤を構築することを最終目標に据えた。具体例として、欧州、韓国、日本、台湾、インドなどと協力し、半導体のインセンティブに関するアプローチを調整していることや、日米間で署名した重要鉱物サプライチェーン強化協定などを挙げ、重要製品のサプライチェーン構築では、米国への生産回帰だけでなく、同志国とのフレンドショアリングを志向する姿勢を強調した。実際にバイデン政権は発足以降、同盟・友好国との間で、既存の経済枠組みの強化、あるいは新たな枠組みの立ち上げを相次ぎ発表しており、結束強化に取り組んでいる。日本との間で2022年1月にサプライチェーン強靭化など経済安全保障面での協力深化を目的とする日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)を立ち上げたほか、カナダ・メキシコと産学官による北米半導体会議(NASC)を設立(2023年1月)するなど、同盟・友好国重視の姿勢を鮮明にしている。2023年にはコンゴ民主共和国やザンビア、モンゴルといった新興・途上国とも、EVバッテリー、および重要鉱物のサプライチェーン協力に関する覚書に署名した。また、ベトナムとは、半導体分野の連携強化に合意した。同盟・友好国重視の姿勢は、トランプ前政権からの大きな転換である。

(3)3つ目の「伝統的な貿易協定を超えた、新たな国際経済パートナーシップへの移行」では、新たなパートナーシップの具体例として、まず初めにインド太平洋経済枠組み(IPEF)を挙げた。新型コロナウイルス禍でサプライチェーンが混乱した際に、もしIPEFがあれば、加盟国間で新たな調達先の選択肢を示すなど、迅速な対応ができたはずと意義を主張した。その上で、貿易政策は従来の関税の引き下げを超えたものになる必要があり、国内外の経済政策と完全に統合されるべきと指摘した。IPEFについては、2022年5月にジョー・バイデン大統領が東京で立ち上げを宣言して以降、「公平で強靭性のある貿易」「サプライチェーンの強靭性」「インフラ・脱炭素化・クリーンエネルギー(クリーン経済)」「税・反腐敗」の4本柱で参加14カ国による交渉が進められたが、中国は参加していない。2023年11月にはサンフランシスコで開催されたIPEF閣僚会合において、サプライチェーンの強靭性の柱でサプライチェーン協定への署名、およびクリーン経済と税・反腐敗の柱で交渉の実質妥結が発表された(注2)。残る貿易の柱は、引き続き交渉を継続する。ただ、サリバン補佐官が上記で指摘したように、交渉範囲には従来の自由貿易協定(FTA)にみられる関税譲許を伴う市場アクセスを含んでおらず、高水準のルールと分野別の協力が中心となる。バイデン政権では、こうしたIPEFと類似の経済枠組みを台湾や中南米との間でも志向している。

(4)4つ目の措置である「新興国に対し数兆ドルの投資を動員」は、中国による国際的なインフラ資金協力構想「一帯一路」への対抗を直接的に意識した内容となっている。米国を含むG7で2022年6月に立ち上げた「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」の下で行われるプロジェクトは、一帯一路のファイナンスと異なり、透明性、高水準、持続的成長を兼ね備えたものであり、立ち上げから1年足らずで鉱山や海底ケーブルなどに多額の投資を行ってきたと説明した。G7各国はPGIIを通じて、低中所得国のインフラ格差を縮小するため、2027年までに最大6,000億ドルを動員することを目指しており、「気候変動とエネルギー危機」「サプライチェーンの強靭化」「デジタル・インフラと交通網による連結性」「持続可能な保健システム」「ジェンダー平等と公平性」などの分野において、透明性高く持続可能で質の高いインフラ開発を推進する方針を掲げている。バイデン大統領はPGII立ち上げに併せて、PGIIに対し無償・有償資金協力、民間投資を合わせ向こう5年間で2,000億ドルの拠出を公表しており、2023年5月に開催された広島サミットでは、その象徴的な案件として、米政府系金融機関によるコンゴ民主共和国とザンビア、アンゴラをつなぐ鉄道路線、アンゴラにおける太陽光発電への融資プロジェクトなどが示された。銅やコバルトなどの重要鉱物が豊富なサブサハラにおいては、中国が大規模な鉄道建設で先行しており、これに対抗する狙いがある。

(5)最後の「小さな庭を高いフェンスで囲い込む方式で米国の基盤技術を守る」では、具体的な施策として、米商務省が2022年10月に導入した半導体関連製品(物品・技術・ソフトウエア)の中国向け輸出管理強化を例示した(注3)。中国への最先端半導体技術の輸出については、注意深く調整された規制を課したと指摘。これらの規制は国家安全保障の懸念に直接ひも付くもので、主要な同盟・友好国も米国の動きに続いていると主張した。バイデン政権は、同規制導入から1年となる2023年10月に規制の一部改定を発表し、対象となる半導体製造装置の種類拡大、米国人による中国国内の先端半導体施設向けのサービスに対する規制内容の精緻化、中国以外の国を経由する迂回リスクへの対処などを新たに加えた。先端技術の国外流出防止を巡っては、輸出規制に加え、投資審査の厳格化にも取り組む。外国企業による対米投資が安全保障上の脅威となるか審査する対米外国投資委員会(CFIUS)がフォローすべき重点分野(重要製品の国内サプライチェーンの強靭性など)を大統領令(2022年9月)で明示したほか、その翌月には新たに執行と罰則に関するガイドラインを公表した(本特集「米国対内投資審査の動向(前編)2018年以降、重点分野が明確化」参照)。さらに、米国企業の対外投資についても規制導入を図る。2023年8月には半導体・マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、人工知能(AI)システムの3分野で対中投資を規制する大統領令を発令した。同規制の施行は2024年以降となる見込みだが、先端技術の流出防止に向けた政権の強い意志があらためて示された(本特集「対外投資規制へ動き出したバイデン米政権」参照)。

表2:米国が抱える主要課題解決のための措置
措置 主な内容
現代的な産業政策によって国内に新たな製造基盤を構築 国家安全保障の観点から、民間企業が必要な投資をできていない重要分野を特定し、公共投資を振り向けて長期的成長のための基盤を整備。最先端半導体の生産は他の地域に集中し、重大な経済リスクを創出するが、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)によって国内の半導体産業への投資は大きく増加。また重要鉱物は8割以上が中国で加工され、サプライチェーンが武器化される恐れがあり、インフラ投資雇用法(IIJA)やインフレ削減法(IRA)を通じて行動。
パートナー国と協力し能力、強靭性、包摂性を構築 自国での産業戦略を堂々と追求するが、友好国を置き去りにはしない。米国と同志国がともに投資を行い、信頼できる強固で強靭な最先端の技術・産業基盤を構築する。インフレ削減法を活用して、北米のサプライチェーンに根ざしたクリーンエネルギー製造エコシステムを構築し、欧州、日本、その他の地域に拡大。また欧州、韓国、日本、台湾、インドなどのパートナーと協力し半導体インセンティブのアプローチを調整。
伝統的な貿易協定を超えた、新たな国際経済パートナーシップへの移行 多様で強靭なサプライチェーンの構築、クリーンエネルギー経済への移行、労働と環境の保護といった課題に焦点を当て、解決するため、野心的な地域経済イニシアティブのIPEFを設計。また米EU貿易技術評議会や日米韓の協力を通じ、産業政策が互いを補完し底辺への競争を回避するよう調整。(労働者の権利、気候危機、国家安全保障への対応など)貿易政策は従来の関税の引き下げを超えるものになる必要があり、国内外の経済政策と完全に統合。
新興国に対し数兆ドルの投資を動員 今日の課題に対応できるよう、世界銀行など国際開発機関を進化させるための主要な取り組みを開始。また低中所得国におけるインフラ格差を埋めるための取り組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」をG7で開始。今後10年間に、エネルギー、物理的インフラ、デジタル・インフラへの融資に数千億ドルを動員。多くの脆弱(ぜいじゃく)な国が直面している債務危機への対処にもコミット。
「小さな庭を高いフェンスで囲い込む」方式で米国の基盤技術を守る 中国への最先端半導体技術の輸出については、国家安全保障上の懸念を前提に、注意深く調整された制限を実施。自国の懸念と合致する主要な同盟・友好国も、これに追随。また国家安全保障に関連する重要分野への外国からの投資審査を強化。加えて、機微技術に係る米国企業の対外投資審査への対応も進展。これらは、ごく一部の技術と、米国への軍事的挑戦を意図する少数の国に焦点を合わせて行われる。

出所:表1に同じ

不断のサプライチェーンの見直しが必要に

演説の終盤では、中国を名指しして、米中関係の方向性が示された。補佐官がまず指摘したのが、米国は中国とのデカップリングではなく、デリスキングと分散を志向するとの点である。米国は自国のサプライチェーンへの投資を続け、輸出管理は軍事バランスを傾ける可能性のある技術に限定されると強調した。米国は中国と多くの面で競っているが、対立や衝突は望んでいないとも述べた。米国は、責任をもって中国との競争を管理し、気候やマクロ経済の安定、健康や食料の安全保障といった分野で協力を求めるが、そのためには両国間のオープンなコミュニケーションが必要だ、と訴えた。

実際に、バイデン政権発足後、ナンシー・ペロシ元下院議長(民主党)の台湾訪問(2022年8月)、中国の気球の米上空横断(2023年2月)、台湾の蔡英文総統の訪米(2023年4月)などを要因に、両国の政府間対話はほぼ途絶えていたが、サリバン補佐官による2023年4月の本演説以降、政府高官の相互訪問の動きが活発化している。演説の翌月には同補佐官が中国外交トップの王毅・共産党中央政治局員とウィーンで会談し、対話継続の重要性を確認した。その後、米国側はアントニー・ブリンケン国務長官(2023年6月)、ジャネット・イエレン財務長官(7月)、ジーナ・レモンド商務長官(8月)など主要閣僚の訪中が続き(注4)、中国側も5月に王文涛商務相がデトロイトでのAPEC貿易相会合で訪米した。10月には王政治局委員兼外相が訪米し、ブリンケン国務長官、サリバン補佐官、バイデン大統領と立て続けに会談を行った。これら緊張緩和プロセスの仕上げとして、11月にサンフランシスコで開催されたAPECに合わせ、2022年11月以来1年ぶりとなるバイデン大統領と習近平国家主席の首脳会談が実現した。国防当局間の関係改善は途上にあるものの、そのほかのチャネルではおおむね1年前のコミュニケーションの水準を回復したことになる。

サリバン補佐官は、演説の最後に再び、民間のみで対処するのに適していない分野で、的を絞った必要な投資を促すアプローチの重要性を説いた。その上で、米国のあらゆる層の人々や地域社会、産業を引き上げ(lift up)、友好国に対しても同様のことを行う。これこそが経済、安全保障、民主主義の交わりにおいてバイデン政権が政策決定を行う際の指針となるものだと述べ、演説を締めくくった。台頭する中国との競争関係を管理しつつ、先端産業を対象とした大規模な財政支援や厳格な技術流出防止、同盟・友好国との連携でサプライチェーンを強化し、世界の経済・軍事バランスの維持を目指す。バイデン政権が続く限り、同方針に大きな修正はないとみられる。加えて、対中強硬論については米議会においても超党派の根強い支持が存在する(注5)。2024年11月の大統領選挙を控え、野党・共和党の候補者間では対中強硬姿勢を競い合う状況だ。選挙に向けて、与野党とも今後、一層強硬に振れる可能性もある。米中首脳会談が実現し、一時的に和らぐことはあっても、根本的な対立の解消は難しいだろう。日本企業にとっては、対立を前提とした米中両国による規制強化、自国産業振興、第三国との連携といった政策をにらみながら、自社のサプライチェーンを検証していく状況が当面続きそうだ。


注1:
他の政府高官では、イエレン財務長官も同時期に米中経済関係に関する演説を実施(財務省ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。その内容は、バイデン政権の中国経済に対する認識や経済面における対中政策の原則を示したもので、サリバン補佐官の講演内容と重なる点が多い。イエレン長官は2023年12月にも米中経済関係に関する演説を実施した(財務省ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。そのほか、政権の外交政策を解説する主要な資料としては、2022年10月に発表された「国家安全保障戦略」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(562KB)がある。同戦略では、中国とロシアを主要な競争相手に名指しし、専制国家に対抗して民主主義を守ると強調。目的達成のため、自国への投資、他国との連携、米軍の強化を図るとしている。
注2:
閣僚会合後に開かれたIPEF首脳会合では、参加国内の重要鉱物サプライチェーン協力を醸成するため「IPEF重要鉱物対話」の創設に合意。
注3:
技術流出防止以外の観点でバイデン政権が導入した対中貿易制限措置の代表例として、中国における人権侵害防止を目的とした「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」(2021年12月成立、2022年6月本格施行)がある。同法は、中国・新疆ウイグル自治区が関与する製品の米国への輸入を原則禁止するもの(本特集「施行2年目の米ウイグル強制労働防止法」参照)。
注4:
米議会関係者では、2023年10月に上院トップのチャック・シューマー院内総務(民主党、ニューヨーク州)率いる議員団が訪中し、習近平国家主席、王毅・共産党中央政治局委員兼外相、王文涛商務相と会談した。
注5:
下院では超党派の合意により、中国との競争問題を扱う「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」が2023年1月に設立された。同委員会は立法権限を持たないが、公聴会を開催するなどして調査活動を行い、政策提言をまとめる機能を担う。2023年12月には中国との経済・技術競争に焦点を当て、約150の提言を盛り込んだ報告書を発表した(米国下院特別委員会ウェブサイト参照)。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 次長
米山 洋(よねやま ひろし)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ北海道、ジェトロ・マニラ事務所、海外調査部国際経済課長などを経て、2020年9月から現職。共著『ジェトロ世界貿易投資報告総論編 各年版』『南進する中国とASEANへの影響』『ASEAN経済共同体』『FTAガイドブック2014』『分業するアジア』(ジェトロ)など。