新車登録はEV含め増加、自動車生産は過去最多を記録(ルーマニア)

2024年5月7日

ルーマニアにおける2023年の新車登録台数は、前年比11.6%増の14万2,791台だった。エコカーの登録が前年比25.9%増と好調だった。

自動車生産台数は、過去最多の51万3,050台を記録した。地場の自動車メーカー、ダチアが生産を伸ばした。

新車登録台数では国産車ダチアが伸びを牽引

自動車製造業者・輸入業者協会(APIA)の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2024年1月18日付発表)によると、ルーマニア国内の2023年乗用車新規登録台数は前年比11.6%増の14万2,791台と好調で、うち58.0%が法人、42.0%が個人の購入だった。

新車登録台数をメーカーまたはブランド別にみると、首位はルノー傘下のルーマニア国産メーカー、ダチアで4万5,947台だった。次いでトヨタの1万574台、フォルクスワーゲン(VW)傘下のシュコダの1万557台、ルノーの1万301台、VWの9,696台と続く。トップ5のメーカー・ブランドは、トヨタを除きいずれも前年から2桁台の伸びを示した(表1参照)。

車種別の新車登録台数では、ダチアが「ロガン」を筆頭に、「ダスター」「サンデロ」「スプリング」「ジョガー」と上位5車種を独占した。シュコダ「オクタビア」、現代「ツーソン」が続いた。

表1:メーカー・ブランド別新車乗用車登録台数(2023年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー、ブランド 台数 構成比 前年比
1 ダチア 45,947 32.2 14.8
2 トヨタ 10,574 7.4 6.1
3 シュコダ 10,557 7.4 21.8
4 ルノー 10,301 7.2 28.6
5 フォルクスワーゲン 9,696 6.8 20.3
6 現代 8,978 6.3 △ 6.0
7 フォード 6,159 4.3 △ 26.5
8 BMW 4,689 3.3 57.1
9 スズキ 4,622 3.2 75.4
10 メルセデス・ベンツ 4,188 2.9 25.4
合計(その他含む) 142,791 100.0 11.6

出所:APIAの資料を基にジェトロ作成

なお、内務省運転免許自動車登録所(DRPCIV)が発表しているメーカー・ブランド別の統計によると、日系メーカー・ブランド全体の新車登録台数は、前年比17.1%増の2万462台だった(表2参照)。トヨタ、スズキ、マツダのトップ3のうち、スズキが前年比73.5%増と大幅に増加した。

表2:日系メーカー・ブランド別新車登録台数(2023年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 2022年 2023年
台数 前年比
トヨタ 10,110 10,531 4.2
スズキ 2,635 4,572 73.5
マツダ 2,298 2,770 20.5
日産 871 994 14.1
ホンダ 1,074 802 △ 25.3
三菱自動車 232 413 78.0
レクサス 201 330 64.2
スバル 47 50 6.4
合計 17,468 20,462 17.1

注:DRPCIVとAPIAは一部の車種で車両分類が異なるため、表1のデータと一致しない。
出所:DRPCIVの資料を基にジェトロ作成

EV市場も堅調に拡大

新車登録台数の動力別の割合をみると、ガソリン車が62.6%(前年は64.5%)、ディーゼル車が12.9%(同13.8%)、エコカーが24.4%(同21.7%)だった。エコカーでは、バッテリー式電気自動車(BEV)が前年比31.9%増の1万5,318台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が同45.2%増の5,560台、ハイブリッド車(HEV)が同14.2%増の1万4,017台となった。

BEVのメーカー別の首位はダチアの「スプリング」で6,875台、テスラの「モデルY」が2,079台、テスラの「モデル3」が1,022台と続いた。PHEVはフォードの「クーガ」が首位で735台、現代の「ツーソン」が379台、トヨタの「RAV4」が371台と続いた。HEVはトヨタの「カローラ」が首位で2,283台、次いでトヨタの「C-HR」が2,082台、トヨタの「ヤリスクロス」が1,559台となり、上位3位をトヨタが占めた。

エコカー増加の背景には、環境省が提供する新車買い替えを促進するための補助金「ラブラ・プログラム(Programul Rabla)」がある。同プログラムは新車購入時の補助金制度で、2016年6月から施行。この補助金制度は「ラブラ・クラシック」と「ラブラ・プラス」の2本立てになっており、併用可能だ。2024年版の「ラブラ・クラシック」では、車齢6年以上の中古車を新車に買い替える際、7,000レイ(約23万円、レイはレウの複数形、1レウ=約33円)が補助されることに加えて、(1)二酸化炭素(CO2)排出量がWLTP(国際調和排出ガス・燃費試験法)基準で120 g CO2 / km以下の新車の場合1,500レイ、(2)LPガス(LPG、液化石油ガス)または圧縮天然ガス(CNG)エンジンを搭載した新車の場合1,500レイ、(3)ハイブリッドシステムを搭載した新車の場合3,000レイ、(4)車齢15年以上かつ欧州排ガス規制ユーロ3以下の中古車を廃車にする場合1,500レイが、それぞれ追加で補助される。さらに、代替燃料車を対象にした「ラブラ・プラス」では、中古車の廃棄に加えて新車購入時に、BEVまたは水素燃料電池車(FCEV)の場合2万5,500レイが、HEVの場合は最大1万3,000レイが、追加補助される。

また、自動車製造者協会(ACAROM)によると、2023年の中古車登録台数は31万6,695台で、2022年の31万6,332台から横ばいとなった。

生産台数は過去最多を記録

自動車製造者協会(ACAROM)の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2024年1月22日付発表)によると、2023年の国産新車生産台数は前年比0.7%増の51万3,050台で過去最多を記録した。当地での自動車生産は、地場自動車メーカーのダチアと、フォードとトルコ企業との合弁会社であるフォードオトサンの2社体制だ。2023年は、前者が2.5%増の32万2,086台、後者が2.2%減の19万964台の生産となった(表3参照)。

表3:国内完成車メーカー別生産台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
台数 前年比
ダチア 349,528 259,099 257,405 314,228 322,086 2.5
フォード 140,884 179,008 163,350 195,237 190,964 △ 2.2
合計 490,412 438,107 420,755 509,465 513,050 0.7

出所:ACAROMのデータを基にジェトロ作成

ダチアのミオベニ工場では現在、「ダスター」「サンデロ・ステップウェイ」「ロガン」「ジョガー」の4車種が生産されている。同社は2023年3月、新型ダスターの生産を2024年に、ビッグスター・コンセプトをベースとした新しい中型SUV(スポーツ用多目的車)の生産を2025年にそれぞれ開始する予定だと発表した。フォードオトサンは2024年3月、クライオバ工場の生産設備や車両、エンジニアリング関連の投資プロジェクト実施のために複数の金融機関から4億3,500万ユーロの融資を受けたと発表した。

執筆者紹介
ジェトロ・ブカレスト事務所長
高崎 早和香(たかざき さわか)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、ジェトロ熊本、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所、海外調査部中東アフリカ課、経済産業省(出向)、イノベーション・知的財産部を経て現職。共著に『FTAガイドブック』、『世界の消費市場を読む』、『加速する東アジアFTA』、『飛躍するアフリカ!-イノベーションとスタートアップの最新動向』など。