エチオピアのネットショッピング市場開拓するアスベザ

2024年2月8日

アスベザは、エチオピアの首都アディスアベバで2020年1月から、インターネットショッピングと商品配送サービスを提供しており、現在は多くの外国人駐在員にも利用されている。ジェトロは2024年1月8日、アスベザ創業者のベレケット・タデッセ氏に、顧客やビジネスモデルなどについて話を聞いた。


アスベザ創設者のベレケット・タデッセ氏(アスベサ提供)
質問:
アスベザとはどういう意味か。その事業概要は。
答え:
「アスベザ」とはアムハラ語で、私たちが定期的に買う食料品を意味する。当社はさまざまなスーパーマーケットや店舗、配送会社と提携し、食料品を主としたネットショッピングサービスを展開している。数年前から準備を進めていたが、国内の紛争や非常事態宣言などでネットショッピングに対する需要が高まったため、サービス開始を早め、2020年1月に正式にライセンスを取得した。現在従業員は5人、うち3人が正社員、残り2人が契約社員となっている。
質問:
提携している企業、パートナーシップを築いている企業は。
答え:
アディスアベバ市内の食料品店や配送会社と協力関係を築いている。 具体的には、フレッシュコーナー、オールマートスーパーマーケット、タプフーズ、シェガテフ、スプリングウォーター、ミサダナッツの食料品店6店舗とパートナーシップを締結し、Move ETやbeU Deliveryなどの配送会社を通じて、エンドユーザーに製品を届けている。当社では「信頼」と「品質」に重きを置いており、それがスーパーマーケットと配送会社の両方とパートナーシップを構築する上で重要なポイントだ。 今後もお客さまに質の高いサービスを提供するために、店舗や物流会社の数を増やすべく、さまざまな関係者と協議を行っていきたい。
質問:
販売している商品はどのようなものか。お客さまからの反響が最も多かった商品は。
答え:
食料品、青果物、飲料、パーソナルケア用品、ベビーケア用品など2,000点を超えるさまざまなカテゴリーの商品を販売している。定期的に届ける商品の種類は、お客さまのタイプによって異なるが、例えば、外国人はタマネギ、トマト、ジャガイモ、バナナ、肉、魚、飲料(ビール、水)などが多い。地元のエチオピア人は主にインジェラやスパイス、ドロワット、パンなどの伝統的な食品をよく注文する。
質問:
ビジネスモデルはどのようなものか。
答え:
販売手数料として店舗オーナーから3~5%の手数料を受け取る。 また、お客さまからは注文された商品の数量に応じて手数料を、配送先の距離に基づいて配送料を徴収しており、金額は変動制だ。配送料金は、お客さまがグーグルマップの検索欄に配送先住所を入力すると、配送料金が表示されるシステムになっている。当日配送の場合、配送料金は98ブル(約255円、1ブル=約2.6円)からだ。
質問:
決済方法と顧客層は。
答え:
クレジットカードのほかに、代金引き換えやオンライン決済 (PayPal) 、エチオピアの銀行各社が展開する決済サービス、通信会社エチオテレコムの決済アプリのテレブル(Telebirr)など、さまざまな支払い方法に対応している。 代金引き換えの場合、配送会社のドライバーが注文品の配達時に支払いを受け取る。ただ、ドライバーが常に十分な釣り銭(現金)を持っているとは限らないため、お客さまには注文分の金額を事前に用意してもらう方が望ましい。
顧客の70%がアディスアベバに拠点を置く外国人(外交官、駐在員など)、30%がエチオピア人という割合だ。外国人は日頃から定期的にさまざまな品物を購入しているが、エチオピア人は主にホリデーシーズンに当社のようなネットショッピングを利用して、伝統的なパン、インジェラ、スパイスなど地元の食料品を購入する傾向にある。

ドライバーが注文客に商品を配送(アスベサ提供)
質問:
競合他社はいるか。ネットショッピング事業を行う上での課題は。
答え:
競合相手はいないと捉えている。ホリデーシーズンなど、特定の時期にのみネットショッピングビジネスを始める企業が時々現れるが、ホリデーシーズンが終わると消滅する。
ネットショッピングはまだ一般的に国内で根付いているとは言えないため、スタートアップ企業が市場で生き残ることは困難だ。また、ネットショッピングのユーザー側にもいくつか課題がある。例えば、お客さまの方で指定した日時、場所にお客さま自身が現れなかったり、注文後に携帯電話の電源を切ってしまい、商品を適切に配達できなかったりということがしばしば発生する。
このビジネスのもう 1つの課題は、各店舗の価格調整のためのリアルタイムデータの欠如だ。スーパーマーケットのフレッシュコーナーなどでは価格の調整が行われるが、調整後の価格を当社にリアルタイムで共有してもらう必要がある。それに基づいて当社も必要な調整を行うが、一部の店舗ではリアルタイムで共有できず、当社とエンドユーザーの間に混乱が生じてしまうことがある。
質問:
今後の展開と、日本のような外資系企業に期待することは。
答え:
短期的には、当社と提携する店舗数を増やすことと、より広範囲な規模で展開すべく、市内全域に配送センターを設立することを計画している。長期的には、当社はエチオピアやその他の国で顧客に最も選ばれるネットショッピングプラットフォームとなることを目指す。
エチオピアでは、ネットショッピングビジネスはまだこれからの分野で、市場規模は巨大だ。外国企業にとっても、さまざまな形態でネットショッピングビジネスに参入できる機会が多くあると考えている。
執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所 リサーチマネージャー
メセレット・アベベ
エチオピア財務省を経て、ABEイニシアチブで来日し、国際大学にて修士号(国際開発)を取得。2019年から現職。