食品関連産業や製品調達で影響が徐々に顕在化(シンガポール)

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2011年4月1日 シンガポール・センター発

東日本大震災から3週間が経過し、シンガポールでも一部の産業で影響が顕在化し始めた。段階的な食品輸入規制の強化、風評被害による日本食離れなどによって、既に食品関連業界では深刻な影響が出ている。広範なサプライチェーンを有する電気電子機器産業などでは製品調達への影響を精査している段階で、今後、納品遅れや生産停止などへの影響を最小限にすべく努力が続いている状況だ。

シンガポールにおける現状の輸入規制

福島原発被災を受け、シンガポールでは、輸入規制が段階的に強化されているが、4月1日時点で、日本産品に対して適用されている輸入規制は表1の通りである。
シンガポール政府が導入した措置は、(1)果物、野菜、水産品、肉、牛乳、乳製品に対するシンガポール通関時の放射能検査と(2)特定の県からの一部食品の輸入禁止措置である。現在のところ、上記食品以外の品目に対する放射能検査は実施されず、また通関時に日本で発行した放射能検査結果に関する証明書提出は求められていない。

表1シンガポールにおける日本産品に対する輸入規制(4月1日時点)

  • 農食品・獣医庁(AVA)は日本から輸入された全ての果物、野菜、水産品、肉、牛乳、乳製品について、一時保留して放射能検査を実施。
  • 検査の結果、一部の生鮮食品から基準を超える放射能が検出されたことから、以下の県からの一部食品輸入を禁止。
    • 福島県、茨城県、栃木県、群馬県:牛乳、乳製品、水産品、肉、果物、野菜の輸入禁止。
    • 千葉県、神奈川県、埼玉県、東京都、愛媛県、静岡県:果物と野菜の輸入禁止。

日本産食品に対する輸入規制措置は、段階的に強化されている(表2)。3月14日にサンプル検査が導入された後、3月23日から一部県産の野菜から基準値を超える放射能が検出されはじめた。放射能が検出された県からの一部食品は即日輸入禁止措置がとられ、4月1日時点では、福島県、茨城県、栃木県、群馬県の4県からの牛乳、乳製品、水産品、肉、果物、野菜、千葉県、神奈川県、埼玉県、東京都、愛媛県、静岡県の果物、野菜の輸入が禁止されている。

表2 シンガポール政府が導入した日本産物品に対する輸入規制措置推移

日付 措置内容
3月31日 静岡県産の小松菜から基準を超える放射能がシンガポールにおける検査で検出されたことを受け、静岡からの野菜・果物の輸入禁止措置導入。
3月26日 神奈川産と東京都産の野菜から基準を超える放射能がシンガポールにおける検査で検出、日本国内で埼玉産の野菜から基準を超える放射能が検出されたことを受け、同3県・都からの野菜・果物の輸入禁止措置導入。
3月25日 日本から輸入した全ての果物、野菜、水産品、肉、牛乳・乳製品について、一時保留しての検査を義務付けに強化。検査で放射性物質の有無が確認されない限り、貨物を引き取ることができなくなった。放射性物質が検出された場合には、貨物は廃棄処分。
3月24日 栃木産(三つ葉)、茨城産(水菜)、千葉産(菜の花)、愛媛産(大葉)の野菜から基準を超える放射能がシンガポールにおける検査で検出されたことを受け、23日から輸入禁止措置がとられている栃木産、茨城産に加え、千葉県産と愛媛産の野菜・果物の輸入禁止措置導入。
3月23日 日本国内で福島県、茨城県、栃木県、群馬県の牛乳と野菜に基準を超える放射能が検出されたことを受け、同4県からの牛乳、乳製品、野菜、果物、水産品、肉の輸入禁止措置導入。
3月14日 3月11日以降に日本から輸出された水産品、果物、野菜、肉など生鮮食品について、サンプル検査を開始。

〔資料〕農食品・獣医庁(AVA)から作成

深刻な影響が顕在化している食品関連産業

深刻な影響が顕在化しているのが、食品関連産業だ。食品関連産業への影響は、(1)AVAが実施している通関時の放射能検査、(2)小売段階での風評被害の2つがある。
通関時点での放射能検査について、日本から食品輸入を行っている日系企業では、3月25日から日本産食品に対する放射能検査が一時保留しての検査に強化された結果、検査期間が丸1~2日要することとなり、魚介類などの輸入には鮮度ロスの影響が出ているケースがある。また、放射能検査の開始によって配達の目安がつかないため、調達を見合わせている企業もある。
なお、輸入禁止措置がとられている県に西日本の愛媛県が含まれている。これに対し、愛媛県は3月29日、シンガポールで放射能が検出された野菜(大葉)は、愛媛県産のものではなく、他県産を誤認したものと考えられると発表し、日本政府がシンガポール政府に対して輸入禁止措置の解除を要請すると発表している。
シンガポールで事業展開する日本食レストランへの影響も深刻だ。震災後、風評被害などによる売上の減少幅は3~5割程度にのぼっている企業が多い。日本食レストランは企業規模が小さいだけに、今後、資金繰りに影響が出ることも懸念される。

日本からの製品調達で最も影響を受ける産業は電気電子機器産業

日系製造業の中で、最も影響が出ている産業は電気電子機器産業とみられる。電気電子機器産業は部品点数が多く、サプライチェーンが複雑なため、チェーンのどこかに震災の影響で調達が停止している部品が組み込まれていると、今後、納品遅れや生産停止などにつながりかねない。
日本国内からの部品調達や完成品輸入が滞り、既に納品できないケースも発生しているが、多くの企業は、部品調達が既に滞っているものの、現状は在庫で対応している場合が多い。そのため、サプライチェーンを精査し、今後の部品調達への影響を調査している段階にあり、どの程度の期間で供給が不足するかまだ正確には把握できていない企業も多い。
工作機械や建設機械などでも、部品調達に影響が出ている企業がある。在庫は大枠で1~2カ月とする企業が多く、今後も調達が滞った場合、4月中旬から5月中旬にかけ在庫切れとなり、納期遅れや操業一時停止につながる可能性も否定できない。
製造業における今後の対策として、(1)日本で被災した工場復旧による供給再開、(2)代替調達先の発掘、(3)製品の設計変更をした上で調達変更を行うといった選択肢が考えられ、各社検討している段階だ。
一方、石油化学産業については、影響は比較的限定的とみられる。シンガポールの石油化学産業では、全般的に日本からの原料調達が限定的であることが要因だ。
中期的には、日本国内の計画停電への懸念は強い。計画停電により生産量が間に合わず、アジア域内での製品調達が不足しかねないためだ。

外国の船会社の関東抜港の動きも懸念

また、外国船が東京、横浜、川崎など東日本の港に入港しない抜港の動きも出ていることが、今後の物流に影響を与えかねないとの懸念もある。 なお、シンガポールにおける輸入規制情報は以下のウエブサイトから入手が可能である。
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