政府、比較的冷静な対応(英国)

記事詳細

2011年3月24日 ロンドン・センター発

日本の原発被災を受け、3月15日に欧州委員会の保健・消費者保護総局は、EU加盟国に対して、動植物由来の食品・飼料について、放射線レベルの分析を行うよう勧告している。加盟各国の対応はまちまちであるが、英国は比較的冷静に対応している様子である。

<英国政府がホットラインを開設>
日本の原発被災およびEU勧告を受け、英国食品基準庁(FSA)は、3月16日に食品における放射線の影響について、一般消費者向けの応答集(Q&A)を公表したが、「放射線は食品の中に自然に存在しているか?」、「FSAは放射線に関する食品安全に対し適切に評価を行っているか?」などの一般的な情報提供に留まったものであった。しかし、その後、英国内の消費者、日本への旅行者に向けたホットラインを開設し、今回の問題に関する問合せに対応している。

3月23日、ようやくFSAのサイトで「日本からの輸入食品について」というプレスリリースがされた。ここでは、(1)FSAは日本からの輸入食品(特に魚介類)について、検疫所などと協力して放射性物質を監視している、(2)輸入食品のうち、日本からのものはわずか0.1%に過ぎないが、規定レベルを超えた放射性物質が検出された食品については、英国に入ることはない、(3)FSAは日本や他国の機関と協議を行っており、情報を共有している、(4)英国外務省を通じて、食品安全に関するアドバイスを英国民および日本への旅行者へ提供している、と述べているだけで、具体的な対応については言及されていない。FSA担当者に問い合わせると、「現在はEU規則に基づく通常対応を行っており、今回の原発事故による特別な対応はしていない。日本国内の議論(放射線量の基準など)を注視しながら対応を検討しているところである」との回答であった。

3月24日時点の日本食品関係企業への聞き取りによると、船便についてはまだ当局の検査を受けたという情報はないが、空輸便による魚介類や野菜についてはサンプル調査を受けたという情報が入っている。船便については、原発被災以降に日本を出発しても、英国に到着するのは早くとも4月中旬であることから、それ以降に監視体制が強化されるものと想定される。

<日本産商品が品薄に>
日本食品メーカーについては、現地系卸売業者から安全性を示す証明書の提示を求められ始めているという声が多い。そのため、日本の本社で独自の検査・証明を行うことを検討しているところもある。

卸売業者に関しては、放射線の影響に関する問合せよりも、むしろ震災によって、輸出向けの供給量に影響が出ることを心配する声が多く寄せられている。今のところ、各社は、仕入れ先を量的に供給可能なところへ変えるなどして対応している。ただ、被災地の地酒など特定の商品については仕入れが止まっている状況とのことである。

他方、一部の非日系事業者による日本食レストランでは、安全面の問題から日本産食品をしばらく使わないと決めたところもある。

小売店においても、将来的な日本産商品枯渇の事態を予測してか、日本人・英国人問わず大量買いの動きが出始めており、一時的に売上高が伸びるほどとのことである。なかでも日本国内の被災地に優先供給されているカップ麺、ご飯を中心としたレトルト食品、水やお茶などのペットボトルはすでに品薄状態となっており、今後も仕入れの見通しは立っていない。最近、英国へも本格的に入り始めた日本産米については、日本人を中心に大量買いされている状況である。一方、みそやしょうゆなどの調味料については、日本国内の供給も比較的安定していることから、英国への輸入についても影響は少ない見通しである。

日系の日本食レストランについては、客足はそれほど落ちていないものの、利用者からの質問が届いている。また、今後の食材仕入れについては、量が確保できるかを懸念しており、足りない場合は他国産の食材で乗り切ろうと考えているところが多い。

<今後の検査体制に注視>
現時点では、英国政府も英国民も比較的冷静な対応をしている様子である。ただ、今後、被災後の商品が本格的に英国へ届くようになってくると、検査などの強化により英国内の日本産食品市場に何らかの問題が生じてくることも予想される。

英国における日本食品関係企業からは、日本から出荷される際の検査の徹底、また英国政府が入荷時に適切な検査を行い、それを英国民にアピールすることにより英国民の信頼を向上させることなどが期待されている。