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不可抗力による契約不履行について

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2011年4月7日更新 ビジネス情報サービス課(旧・貿易投資相談課)

ジェトロでは、貿易投資に関する様々な相談に応じている。今般の震災の影響として、「海外の取引先との契約が不可抗力(Force Majeure)によって履行できなくなった場合の対応」などの問い合わせが寄せられている。
そこで、こうした場合のポイントについて報告する。

1.「不可抗力」とは

「不可抗力」(Force Majeure)とは、地震、津波、洪水、戦争、暴動等、当事者の合理的な支配を超えて発生する事象をいう。契約書等で不可抗力条項(Force Majeure Clause、不可抗力発生時、契約の不履行や遅延を免責とする条項)がある場合は、不可抗力による契約の不履行は免責となる。ただし、金銭債務の不履行については免責とならないのが国際契約の原則である。日本法でも、民法第419条第3項で、債務不履行について、債務者は不可抗力をもって抗弁することができない、と規定している。

2.今回の震災について

2011年3月11日(金)に発生した東日本大震災は、典型的な「不可抗力」といえる。通常、契約書には、地震(Earthquake)、津波(Tsunami)等々、起こり得る事象を列挙するが、特にこれらを除外していない限り、列挙していなくてもこれらの典型的な天災は不可抗力に含まれる。契約書に不可抗力を列挙する際には、“including, but not limited to(以下のものを含むが、これらに限定されない)”を付加することが望ましい。

3.取引先への通知と因果関係の立証

今回の震災の影響で、契約内容が履行できない場合や遅延する可能性がある場合は、まず、その旨を取引先に速やかに通知する。その際、被害状況や現在の状況(生産設備や調達環境など)を確認できる範囲でできる限り詳細に通知する。免責となるためには、通常、取引先に対し、不可抗力によって契約内容が不履行になったことを立証することが必要となる。そのためには、被害状況の写真、ライフラインや物流の停止の状況などを伝えた新聞記事やウェブサイトのURLなどをその証拠として取引先に送信する。

4.第三者による証明

不可抗力の発生自体を証明する公的機関や第三者機関はない。そこで、もし、取引先に公的機関や第三者機関の証明を求められた場合は、以下のように対処する。

(1)公証人役場での公証
発生した事実をまとめた宣誓供述書を作成した後、公証人役場で公証を受け、取引先に送付する。この行為は、日本では宣誓に虚偽のある場合には罰則規定もある法的行為となるため、第三者機関の認証機能を帯びることとなる。

(2)商工会議所によるサイン証明
商工会議所では、客観的な事実に基づいた自己宣誓文書に対する「サイン証明」を行っている。これは商工会議所が事態に対して証明を行うのではなく、自社にて今回発生した事態について宣誓文書を作成し、その文書に自署した署名が、商工会議所に登録のあるサインと同一のものであることを証明するものである。従って、商工会議所のサイン証明が第三者機関の証明機能として有効かどうかについては取引先に確認する必要がある。

5.契約書に不可抗力条項がない場合

契約書等に不可抗力条項がない場合は、双方の話し合いや、我が国で2009年8月より発効となったウィーン売買条約の適用が考えられる(第2節「損害賠償」(第74条~第77条)、第4節「免責」(第79条、第80条)、第5節「解除の効果」(第81条~第84条)等を参照)。同条約では不可抗力について、第79条において「当事者は、自己の義務の不履行が自己の支配を超える障害によって生じたこと及び契約の締結時に当該障害を考慮することも、当該障害又はその結果を回避し、又は克服することも自己に合理的に期待することができなかったことを証明する場合には、その不履行について責任を負わない。」と規定している。つまり、同条約の規定では、契約の不履行が不可抗力によるということが証明できれば免責となる。 ただし、相手方の国・地域がウィーン売買条約の非締約国・地域であったり、締約国・地域であっても、契約で別途準拠法がある場合や同条約の除外規定を設けている場合は、それらが優先され、同条約は適用されない。

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