企業・経済関係への影響は限定的(ベルギー、EU)

記事詳細

2011年3月18日 ブリュッセル・センター発

(1)日本とベルギーの経済関係に及ぼす影響

<経済への影響は限定的だが、日本の対ベルギー輸出への影響を懸念>
国内主要日刊紙の一つ「デ・ティヒト(De Tijd)」紙は、今回の震災がベルギー経済にもたらす影響は限られているとの見方を示している。ベルギー国立銀行によると、2010年のベルギーの対日輸入額は47億2,990万ユーロで、対日輸出額は14億2,330万ユーロに上る。ベルギーの輸入総額2,138億ユーロのうち、対日輸入額は2.2%を占め、ベルギーにとって日本は10番目の輸入相手国となっている。輸入を項目別にみると、最大輸入品目は自動車(構成比52%)で、震災による日本の自動車工場閉鎖の影響が懸念される。また第2位の輸入品目である機械・電気機器(同23%)に与える影響(特にベルギー市場への輸入の多い液晶テレビ、ゲーム機、カメラなど)についても今後の動向が懸念される。
2010年のベルギーの輸出総額のうち、対日輸出額は0.7%程度で、輸出国のトップ20位にも入らない。このため、同紙は、震災の影響については、ベルギーの対日輸出ではなく、日本の対ベルギー輸出への影響を懸念している。
他方、「レコー(L’Echo)」紙は、日本国内には250社のベルギー企業があるが、今回の東北地方太平洋沖地震の影響は少ないとみており、主なベルギー企業の日本でのビジネス状況についても以下のとおり伝えている。
○影響が生じていない企業

  • 従業員40人が勤務している化学企業のソルベイは通常通り営業。
  • バイオ製薬会社のUCBは日本で300人の従業員を抱えているが、今のところ大きな問題は生じていない。
  • チョコレートのガレー(Galler)は通常通りの営業。

○多少の影響があった企業

  • エネルギー素材・リサイクル事業などを手がけるユミコアの(日本)国内3工場のうち、茨城工場は、地震により生産を一時停止。
  • 自動ドア用センサーのBEAは東京支店を閉鎖し、従業員に対し、南(西)へ退避するように指示。
  • スチールワイヤーメーカーのベカルトは東京オフィス、鉄鋼ファイバーに30人の従業員を抱えているが、工場を一時停止。

(2)進出日系企業に与える影響

<輸入自動車の輸送の遅れを懸念>
震災が在ベルギー日系企業に与える影響を見ると、日本の自動車工場からの輸入車の輸送の遅れが見込まれている。
「デ・ティヒト(De Tijd)」紙 によると、自動車メーカーA社は日本の全工場が一時閉鎖されたことから、日本からベルギー市場への自動車の輸送の遅れを懸念。これから製造され、輸入予定の車については、震災による更なる遅れが見込まれる、という。
自動車メーカーB社は欧州で販売されている自動車の半分が近隣国で製造されており、現在のところ大きな問題はないとしている。ただし、日本からベルギーへの輸入車については、船で通常6週間かけて輸入されているが、震災後は注文をしてから最低でも2~3カ月を要するとみられる。
自動車メーカーC社は、震災の影響は限定的との見方であるものの、停電などの影響から日本での生産に遅れが出るだろうとみている。欧州顧客への納品については現時点では大きな問題になるとはみていない。
素材メーカーD社は、日本の工場で震災の影響があったものの、同社製品や部品の日本からの輸入がほぼないため、欧州の事業活動にはあまり影響がないとみている。
他方、ベルギー企業で日本に拠点を抱えているディスプレイメーカーでは影響が予想される。同社は欧州域内でのプロジェクタやモニターの製造のために日本から部品を輸入しており、今回の震災の影響を懸念している。同社の総売上高のうち日本市場は約2%を占めており、販売に与える影響も少なからずあるだろうとの見方。

(3)その他日本に対する論調、具体的動き

<EU指示で放射線検査始まる>
欧州委員会の保健・消費者保護総局は3月15日、EU加盟国に対して日本からの輸入食品に対する放射線量検査を実施、下記の点について確認するように指示した。
(1)食品の種類と量
(2)当該食品の日本出発時期
(3)放射線被曝リスクの有無(許容される最高値は 参照)
(4)日本からの情報の正確な分析・確認
EU加盟各国での検査結果については、欧州委員会に報告する義務が課される。

2010年の日本からベルギーに輸入された魚介類や甲殻類は1トンに満たず、少量にとどまる。一般的なイメージと異なり、ベルギー国内の日本食レストランで消費されている魚介類の殆どは欧州で水揚げされたものか、養殖である。また、穀物、大豆、香辛料、海藻、アルコール飲料などの日本からの輸入も非常に少量である。
ベルギー食品安全局(AFSCA)によると、今後数週間の間に日本から届く食品については注意深く検査していく必要性があるとの見方を示している。ベルギー・日本間には直航便がないため、食品が最初に入国するEU加盟国にて食品の放射線量検査を受けることになる。他方、ベルギーに日本から直接船舶で入港する食品については、ベルギーでの検査となり、今後は更なる注意を要するとしている。
さらにAFSCAは、食品安全の責任は最終的には、日本からの輸入食品を扱う事業者にあるとの見解も示している。
AFSCAによると、日本からベルギーへの食品輸入自体が少ないこと、またその中、ベルギーに直接届く食品はさらに限られていることから、放射線量検査の対象が少なく、リスクはあまりないと見ている。

尚、ステブン・バナッケル副首相兼外務・制度改革相は3月16日、在日ベルギー人がベルギーに無事に帰国できるよう、臨時チャーター便(エアバスA330機)を日本に送ることを決定した。チャーター機は、韓国・ソウルに17日に向かい、その後東京に向かう予定。同機の収容可能人数は250人である。希望者は在日ベルギー大使館にEメールか電話で連絡を取るように案内している。

表:食品における放射線量の最高値基準(単位:該当食品1kgあたりのベクレル)
食品 飼料
ベビーフード
(注1)
乳製品
(注2)
その他食品(主要でない食品以外)(注3) 飲料水
(注4)
放射性ストロンチウム(特にSr-90) 75 125 750 125
放射性ヨウ素(特にI-131) 150 500 2,000 500
プルトニウムと超プルトニウム元素(特にPu-239、Am-241) 1 20 80 20
その他放射性核種の半減期が10日間以上のもの(特にCs-134,Cs-137)(注6) 400 1,000 1,250 1,000 豚:1,250
家禽類、子羊、子牛:2,500
その他:5,000

出所:EU理事会規則(EURATOM)No 3954/87

(注1)乳児が4~6カ月頃に食する食品
(注2)CNコード0401、0402に該当する乳製品(04022911以外)
(注3)「主要でない食品」は欧州委員会規則944/89(944/89/EURATOM)の付属書を参照( Energy: Radiation protection legislation - European commission外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
(注4)CNコード2009(ジュースなど)、CNコード第22類(飲料、アルコールおよび食酢)
(注5)飼料は欧州委員会規則770/90(770/90/EURATOM)の付属書を参照( Energy: Radiation protection legislation - European commission外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
(注6)炭素14、トリチウム、カリウム40はここには含まれない