関税制度
最終更新日:2024年01月12日
管轄官庁
ロシア財務省
ロシア財務省
2016年1月15日付ロシア連邦大統領令第12号により、財務省が連邦税関局を管轄することになった。
関税率問い合わせ先
連邦税関局
連邦税関局
所在地:121087, Moscow, Novozavodskaya street, 11/5
Tel:+7 (499) 449-77-71, 449-76-75
Fax:+7 (499) 449-73-00
関税体系
開発途上国を原産国とする商品には最恵国税率の75%が適用される。後発開発途上国は免税。CIS諸国の商品も一部の品目を除いて免税。
2015年1月1日から、ユーラシア経済連合の加盟国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)には、原則として統一された税率が適用されている。例外的な場合においては、合意された関税と異なる税率の適用も可。また加盟国間の輸出入は、原則として免税。
統一の通関手続きについては、2018年1月1日よりユーラシア経済連合関税基本法が発効した。また共通の関税率適用にあたっては、一部の加盟国では移行措置が取られており、移行期間中は特別な税率が適用される場合がある。
関税制度に関しては、ユーラシア経済連合条約(2014年5月29日署名、2015年1月1日発効)、2009年11月27日付関税同盟委員会決定第130号「ユーラシア経済連合の統一関税規制について」、2018年6月14日付ユーラシア経済委員会評議会決定第60号「開発途上国及び後発開発途上国の原産国の認定の規則の承認について」、2016年4月6日付ユーラシア経済委員会評議会決定第47号「ユーラシア経済連合の関税優遇措置の統一体制の適用の条件と手続について」、1993年5月21日付連邦法第5003-I号「関税率について」、2012年7月16日付ユーラシア経済委員会評議会決定第54号「ユーラシア経済連合の対外経済活動統一品目一覧およびユーラシア経済連合の統一関税率の承認について」、2006年11月27日付連邦政府決定第718号「ロシア連邦の関税率および貿易に適用する品目分類について」、その他の関税同盟の規定ならびにロシア国内の法令に従い、次の関税体系がある。
- ロシアが最恵国待遇を与える国を原産国とする商品には、最恵国税率が適用される。
- ユーラシア経済連合条約(2014年5月29日署名、2015年1月1日発効)に従い、開発途上国を原産国とする商品には、統一税率の75%が適用され、後発開発途上国を原産国とする商品は免税となる。当該措置が適用される開発途上国のリストならびに後発開発途上国のリストは、2009年11月27日付関税同盟委員会決定第130号「ユーラシア経済連合の統一関税規制について」により承認された。なお、前述の決定により、当該減税・免税措置の対象商品のリストが承認された。
- CIS諸国を原産国とする商品は、免税(相互協定で定められた一部の品目を除く)。
品目分類
ユーラシア経済連合貿易品目分類(HS分類およびCIS貿易品目分類に基づく)
ロシアはユーラシア経済連合の参加国として、ユーラシア経済連合の品目分類を採用する(2021年9月14日付ユーラシア経済委員会評議会決定第80号「ユーラシア経済連合の対外経済活動統一品目分類およびユーラシア経済連合の統一関税率の承認について」)。当該品目一覧は、世界税関機構(WCO)の国際関税分類(HS分類)およびCIS貿易品目分類に基づいている。
また、物品の輸入申告より前の時点で税関当局に対し当該物品の関税分類(HSコード)の照会申請を行い、回答を受ける事前教示制度がある。当該教示は、書面もしくは電子による照会申請日から60日以内に行われ、回答日から原則として5年間有効である(2020年4月16日付連邦税関局命令第375号「ユーラシア経済連合統一品目分類による品目分類の事前決定に関する税関当局の国家サービスの提供についての連邦税関局の行政規則の承認について」)。なお、ユーラシア経済連合関税基本法第21~27条で規定されている。
関税の種類
従価税、従量税、あるいは、これらの併用。輸入関税、輸出関税、季節関税、特殊関税(アンチダンピング関税、相殺関税、特別セーフガード関税)
ユーラシア経済連合条約、ユーラシア経済連合関税基本法、2012年7月16日付ユーラシア経済委員会評議会決定第54号「ユーラシア経済連合の対外経済活動統一品目分類およびユーラシア経済連合の統一関税率の承認について」、1993年5月21日付連邦法第5003-I号「関税率について」および連邦政府による施行細則に従い、次の種類の関税が課税される。
- 課税対象商品の関税価格に一定の比率を乗じて算出した従価税。
- 課税対象商品の単位当たりで一定の税額を定め、算出した従量税(例:1キロ当たりのユーロまたは米ドル建て金額など)。
- 1.2.の関税率の併用、いわゆる複合関税(例:関税価格の25%相当とするが、1キロ当たりの税額の下限を2ユーロとするなど)。
一定の輸出品目(海産物、エチルアルコール、原油、石油製品、天然ガス、アルミ、その他)に関しては、輸出税が適用される。原油にかかる輸出関税については、国際原油価格相場を考慮した特別算定方式が適用される。
季節関税は、適用期間が1年のうちで最長6カ月に限定され、通常、農産物を対象に導入される関税である。ロシアでは砂糖類、ひまわり油などに適用される場合がある。
また、国と国内生産者の経済的利益を保護するための措置として、特殊関税(アンチダンピング関税、相殺関税、特別セーフガード関税)の発動が可能である。2020年9月22日付ユーラシア経済連合理事会決定第115号に従い、アゼルバイジャンもしくは中国を原産とするアルミニウムテープに対して、10月から5年間のアンチダンピング関税が導入された。
なお、統一関税基本法により、関税や通関に伴う支払いは、通関国の通貨にて行うと規定されているので、ロシアにおける関税関連の支払いはルーブルで行われる。
課税基準
ユーラシア経済連合関税基本法に基づいて算出される関税価格(関税評価)に対して課税される。通常は、運賃を含む取引価格を課税対象とする。
課税は、前述の関税価格協定に基づく。
一般に、輸入品への課税は、買手によって売手に対し支払われた、または支払われるべき価格に、輸入港までの運賃、買手が負担する手数料または容器・包装の費用、知的財産権の使用料等の特定要素を加えた価格(取引価格)に基づいて査定された関税価格をベースとして、設定される。
この算定方式が適用できない場合、同種または類似の商品に係る取引価格による算定方式等が適用される。
また、ユーラシア経済連合関税基本法では、関税価格の決定方法の採用について事前決定制度を締結国の国内法により導入することが可能となり、2018年8月3日付連邦法第289-FZ号「ロシア連邦における関税規制及びロシア連邦の一部の法律の改正について」第25条に基づき導入された。当該決定は申請日から30日以内に行うこととなっている。
対日輸入適用税率
最恵国税率
日本からの輸入品は、最恵国に適用される最恵国税率で課税される。
特恵等特別措置
CIS加盟国からの輸入は、免税となる(ただし、砂糖、アルコール類、たばこなど例外あり)。
一般特恵制度(GSP)に基づき、開発途上国と後発開発途上国からの一部の輸入品に対しては、優遇税率が適用される(開発途上国の場合は基本税率の75%で課税、後発開発途上国の場合は免税)。優遇税率対象品目のリストは、ユーラシア経済連合が制定する。
CIS諸国を原産国とし、同諸国から輸入された商品には関税がかからないが、砂糖、アルコール類、たばこ製品に関しては、ロシアとCIS諸国間の相互協定により、例外措置が設けられている。
また、原産地について事前決定制度がある。当該決定は、照会申請日から60日以内に行われ、当該決定の根拠となった原産地証明書の有効期間以内に有効である(2018年8月3日付連邦法第289-FZ号「ロシア連邦における関税規制及びロシア連邦の一部の法律の改正について」第22条およびユーラシア経済連合関税基本法第32~36条)。
関連法
ユーラシア経済連合関税基本法(2017年4月17日付ユーラシア経済連合関税基本法に関する条約により制定)、および1993年の「関税率について」が、関税、通関価格、原産国の定義などを規定している。
- ユーラシア経済連合条約(2014年5月29日署名、2015年1月1日発効)
- 1993年5月21日付連邦法第5003-I号「関税率について」:関税率の定義、関税価格の査定方法、商品の原産国の決定方針を規定。
- 2018年6月14日付ユーラシア経済委員会評議会決定第60号「開発途上国及び後発開発途上国の原産国の認定の規則の承認について」
- 2009年11月27日付関税同盟委員会決定第130号「ユーラシア経済連合の統一関税規制について」
- 2012年7月16日付ユーラシア経済委員会評議会決定第54号「ユーラシア経済連合の対外経済活動統一品目一覧およびユーラシア経済連合の統一関税率の承認について」
- 2006年11月27日付連邦政府決定第718号「ロシア連邦の関税率および貿易に適用する品目分類について」
関税以外の諸税
付加価値税(基本税率は20%、一部10%や0%の軽減税率)、物品税、通関手数料、車両リサイクル税、環境税
付加価値税、物品税
国税基本法が定める税率により、付加価値税および物品税が、それぞれ課税される。
通関手数料
通関手数料は、2020年3月26日付連邦政府決定第342号「通関手続きのための通関手数料算出のための料率および根拠について」に基づき、通関商品の価額によって決定される。例えば、2020年8月1日から通関の価額が、20万ルーブルを超えない場合、手数料の額は775ルーブルとなるが、通関の価額が1,000万ルーブル1コペイカ以上の場合、手数料の額は3万ルーブルとなった。
車両リサイクル税
輸入車について、2012年9月1日から車両リサイクル税(廃車税)が課せられている。当該税金は、1998年6月24日付連邦法第89-FZ号「製造と消費によるスクラップについて」第24.1条に基づいて導入された。2014年1月1日からは、輸入車のみならず国内生産車についても、同一条件で車両リサイクル税が徴収されている。2014年1月1日以降の車両リサイクル税の計算方法および支払い手続きは、2013年12月26日付連邦政府決定第1291号により規定されている。
環境税
リサイクルが必要とされる輸入物品(洋服、プラスチック製品、家庭電器製品等)について、1998年6月24日付連邦法第89-FZ号「製造と消費によるスクラップについて」第24.5条に従い、環境税が徴収される。その算定・支払手続および税率について、2015年10月8日付連邦政府決定第1073号、および2016年4月9日付連邦政府決定第284号によって規定されている。
その他
2018年7月6日付連邦政府決定第788号「米国を原産国とする特定の品目の関税率の承認について」に従い、米国に対する報復措置として、2018年8月6日より米国産の一部の工具、建設・道路機械、工作機械、ダンプカーなどを対象に関税率が引き上げられた。
また、2022年12月7日付連邦政府決定第2240号「ロシア連邦の経済的利益を侵害する諸国および地域を原産国とする一部の商品にかかる輸入関税の税率の策定について」では、米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランド、ポーランドを原産国とする洗剤、ならびに、日本を含む一部の諸国を原産国とする民間武器の関税が引き上げられた。
日本、欧州、米国、カナダを含む一部の諸国はロシアを最恵国待遇から除外しているが、2024年1月12日現在、ロシア側による同等の対抗措置が講じられていない。