ロシアの食品加工機械—市場推移
2011年3月
分野:機械・部品
ロシアの食品加工機械を巡るビジネス環境について、以下のようなことが指摘できる。
- ロシアの食文化はその改善に長い間大きな関心が払われてこなかった。
その結果、平均寿命が他の先進国と比較してもかなり短く、このため食生活の改善は国家的にも重要課題となりつつある。 - 伝統的にロシアの食品需要はほとんどが国産食品で賄われている。ロシア国民の所得の増大にともない、食品の品質に対する関心が飛躍的に高まってきた。このため、食品の加工品質を高めようと、最新の食品加工機械・設備の導入の需要が増大している。
- 食材についても、農業省は水産物の比率を増やし、牛肉・豚肉の比率を減らそうという方針を打ち出しでおり、食材における水産物の占める比率を現在の16%から20%以上まで引き上げる方針である。
このような流れを反映して、
- ロシアの食品加工機械メーカーも機械性能を向上させようする傾向が顕著である。食品メーカーでは、生産コストを下げる為の新規設備導入が活発化している。特に、安い材料を使ってもしかるべき品質の製品ができるような設備・技術への関心が高い。
- 食品加工機械の輸入では、中国からの輸入の比率が増えている。
- 肉加工用の設備の輸入が減少している。
- 食品包装用の設備の売り上げが伸びている。
- 菓子、ケーキ類の製造用の設備の売り上げは著しく伸びている。
といった傾向が出てきている。
食品加工機械でもその範囲は非常に広いため、一概にシェアを表す数字はない。ただし、モスクワでは毎年10月にAGROPRODMASH(農業生産機械展示会)があり、この見本市の参加各社に関するデータが参考になる。
2010 | % | 2006 | % | |
---|---|---|---|---|
Russia | 531 | 66.9 | 407 | 64.5 |
Germany | 85 | 10.7 | 60 | 9.5 |
Italy | 22 | 2.8 | 52 | 8.2 |
France | 20 | 2.5 | 10 | 1.6 |
Holland | 15 | 1.9 | 8 | 1.3 |
Poland | 13 | 1.6 | 11 | 1.7 |
Ukraine | 12 | 1.5 | 10 | 1.6 |
Denmark | 10 | 1.3 | 3 | 0.5 |
Israel | 9 | 1.1 | 0 | 0 |
China | 9 | 1.1 | 0 | 0 |
Belarus | 8 | 1 | 6 | 1 |
Austria | 7 | 0.9 | 12 | 1.9 |
Belgium | 6 | 0.8 | 0 | 0 |
Bulgaria | 6 | 0.8 | 4 | 0.6 |
Spain | 6 | 0.8 | 13 | 2.1 |
Switzerland | 5 | 0.6 | 3 | 0.5 |
UK | 4 | 0.5 | 7 | 1.1 |
Hungary | 3 | 0.4 | 0 | 0 |
Turkey | 3 | 0.4 | 0 | 0 |
Czech Republic | 3 | 0.4 | 5 | 0.8 |
Ireland | 2 | 0.3 | 0 | 0 |
USA | 2 | 0.3 | 0 | 0 |
Brazil | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Greece | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Iceland | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Canada | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Latvia | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Lithuania | 1 | 0.1 | 2 | 0.3 |
Portugal | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Serbia | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Slovakia | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Slovenia | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Uzbekistan | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Finland | 1 | 0.1 | 6 | 1 |
Sweden | 1 | 0.1 | 0 | 0 |
Korea | 0 | 0 | 2 | 0.3 |
Japan | 0 | 0 | 2 | 0.3 |
Other | 0 | 0 | 8 | 1.3 |
Total | 794 | 100 | 631 | 100 |
ロシアの機械メーカーが65%と圧倒的に多く、2位にドイツ、3位にイタリア、4位にフランスと欧州メーカーが並んでいる。
参加企業も2006年の631社から2010年の794社と増えているが、その中でいくつかの国で増減が見受けられた。
2位のドイツは60社から85社と増えたのに対し、3位のイタリアは52社から22社と大幅に減少している。
スペインも13社から6社、フィンランドも6社から1社に減少している。
一方フランスは10社から20社へと大幅に増え、オランダも8社から15社、デンマークも3社から10社へ増え、イスラエルが0社から9社、ベルギーも0社から6社と増えた。
これらの傾向は、ロシアにおける食品の加工分野の需要の変化と連動していると思われる。すなわち、単純な食品加工の設備ではなく、特定かつ技術をともなう設備を得意とするメーカーを擁する国が、より多くの機械メーカーの参加となって表れていると言える。
このような中にあって、日本が欧州のメーカーに対抗出来る分野は極めて限られる。特に肉加工設備は、日本においてもほとんどが欧州からの輸入品であり、また包装機械も、数多くのバリエーションを持つ欧州の各メーカーに対抗できるものは極めて少ないのである。
(モスクワ・センター)