ロシアの貿易と投資 2023年版(世界貿易投資動向シリーズ)
要旨・ポイント
- 2022年の実質GDP成長率はマイナス2.1%。同年2月のロシアのウクライナ侵攻を受け、西側諸国が対ロ制裁を発動したことが影響した。
- 西側諸国の制裁に対抗し、ロシア政府は為替規制や「非友好国」企業の活動を制限するなど対抗措置を導入した。
- 貿易は、西側企業のロシア事業停止や撤退の影響で輸入が減少したが、資源価格上昇に伴い輸出は増加した。
- 外国企業の撤退が相次いだ結果、対内直接投資額は、統計が取れる1994年以降で初の引き揚げ超過を記録した。
- 日本の対ロ輸出は乗用車新車が大幅減となった一方、中古車が増加した。輸入は価格上昇などを受けLNGの増加が顕著だった。
公開日:2023年10月20日
マクロ経済
外国企業の撤退・活動停止が多方面に影響
連邦国家統計局によると、2022年の実質GDP成長率はマイナス2.1%であった。新型コロナ感染拡大の影響を脱し再び拡大基調に転じた前年から、一転してマイナスとなった。その一方で、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻直後に予想された大幅な景気減速には至らず、落ち込みは新型コロナ禍に見舞われた2020年よりも小さかった。
鉱工業生産は0.6%減、鉱業は0.8%増、製造業は1.3%減であった。原油生産(ガスコンデンセートを含む)は2.1%増の5億3,400万トンだったが、天然ガスは13.4%減の5,730億立方メートルにとどまった。EU向けのガス供給が激減したことが背景にある。液化天然ガス(LNG)は8.1%増であった。製造業では医薬品・医療用品(8.6%増)、金属製品(7.0%増)が好調だった一方、乗用車は67.0%減と急減した。電気機器は全体では3.7%減にとどまったが、品目別では洗濯機が49.2%減、冷蔵庫が42.2%減となった。いずれも外資系企業の生産停止の影響とみられる。木材・同製品も12.5%減と製造業の各産業で減少が目立った。
固定資本投資は4.6%増。陸上輸送やパイプラインを中心とした輸送・倉庫(18.9%増)、石油・天然ガス採掘(9.3%増)、資源採掘関連サービス(10.5%増)が伸びた。縮小が目立ったのは自動車製造(55.6%減)、統括会社・経営コンサルティング(35.5%減)、通信(18.7%減)で、外国企業の活動停止などが影響した。
小売売上高は6.5%減。サプライチェーンの寸断や経済制裁による輸出停止などが影響し、第2四半期以降、前年同期比で10%近いマイナスが続いた。消費者物価上昇率は前年12月比11.9%だった。3月に為替の暴落などから前月比7.6%と大きく上昇した以外は安定的に推移した。失業率は1992年以降の最低水準を更新し、2022年12月は3.9%であった。
財政収支は3兆3,000億ルーブルと2年ぶりに赤字となった。石油・天然ガス収入の伸び悩み、歳出額が例年を大きく上回った。なお、財務省は2022年1月以降の歳出の詳細を公表していない。石油天然ガス収入を原資とし、財政赤字補填や政府による投資プロジェクトに活用される国民福祉基金は、ドル換算で6月末の2,100億ドルをピークに減少に転じ、12月末には1,480億ドルと約3割の減少となった。ただし、これはルーブル為替レートが年末にかけて下落した影響も大きく、ルーブル建て残高は2021年末に13兆5,700億ルーブルだったところ、2022年6月末に10兆7,700億ルーブル、12月末には10兆4,300億ルーブル(6月末比3.2%減)となった。金を含む外貨準備高は通年で5,000億ドル台を維持し、ロシアが保有する在外資産の凍結や金融制裁により数回にわたり懸念されたデフォルトも回避した。
2023年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比1.8%減と、前期と比べマイナス幅は縮小した。卸・小売り、情報通信、資源採掘が依然として不調な中、ホテル・外食、金融・保険などのサービス業、建設などが好調だった。失業率は4月時点で3.3%とさらに低下している。財政赤字は、1~5月は累積で3兆ルーブルとなった。
項目 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年間 | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | Q1 | ||
実質GDP成長率 | 5.6 | △ 2.1 | 3.0 | △ 4.5 | △ 3.5 | △ 2.7 | △ 1.8 |
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8.0 | △ 0.3 | 4.6 | △ 2.7 | △ 2.3 | △ 0.7 | 3.5 |
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9.1 | 3.3 | 7.4 | 2.7 | 1.8 | 3.0 | 0.6 |
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3.3 | △ 13.9 | 3.6 | △ 15.8 | △ 26.6 | △ 14.6 | n.a. |
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19.0 | △ 15.0 | 1.4 | △ 27.6 | △ 20.5 | △ 11.2 | n.a. |
鉱工業生産 | 6.3 | △ 0.6 | 5.1 | △ 2.6 | △ 1.2 | △ 3.0 | △ 0.9 |
農業生産 | △ 0.4 | 10.2 | 5.4 | 8.4 | 12.7 | 9.4 | 2.9 |
固定資本投資 | 8.6 | 4.6 | 13.8 | 3.3 | 2.3 | 3.3 | 0.7 |
貨物輸送 | 5.8 | △ 2.3 | 4.2 | △ 2.6 | △ 5.1 | △ 5.3 | △ 1.9 |
小売売上高 | 7.8 | △ 6.5 | 4.8 | △ 9.6 | △ 9.8 | △ 9.6 | △ 6.9 |
実質可処分所得 | 3.3 | △ 1.0 | 2.0 | 0.0 | △ 5.3 | △ 0.2 | 4.4 |
財政収支のGDP比 | 0.4 | △ 2.1 | 3.6 | 0.5 | △ 3.3 | △ 8.3 | △ 5.8 |
〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。財政収支のGDP比は、連邦政府ベース。
〔出所〕連邦国家統計局。財政収支のみ統計局および財務省資料からジェトロ作成。
通商政策
為替、資産などで「非友好国」企業への管理を強化
ウクライナ侵攻に端を発する欧米諸国などからの経済制裁措置を受け、ロシア政府は2022年2月末以降、為替、貿易、投資、知財などの分野で対抗措置を次々と打ち出した。それらの中には外国企業の活動に制限を加えるものも多数含まれ、日本企業を含むいわゆる「非友好国・地域」の外国企業は、ロシアでの活動に大きな影響を受けることとなった。
為替管理では、自国通貨の安定のための措置が導入された。事業者に対しては、輸出獲得外貨のルーブルへの強制交換比率が一時的に設けられた。2022年2月末に同比率が80%と設定されて以降、5月に50%に引き下げられ、同措置は6月に撤廃された。同年3月には、非居住者に対する外貨建ての貸し付けが禁止された。ロシア法人からの配当の国外送金については、7月から1,000万ルーブル相当額を超える送金には外国投資管理政府委員会小委員会(以下、小委員会)の許可が必要となった。居住者に対しては、国外で開設した自身の口座への外貨送金が3月から禁止された。同月、海外への自身の口座以外宛ての送金の上限額が暦月5,000ドルとなり、小委員会の許可が必要になった。4月には上限が暦月1万ドルに拡大した。個人による外貨の引き出し上限額について、3月に1万ドルとされ、4月には1万ドル相当のユーロも追加された。その他の金融関連では、非友好国の個人・法人に対するルーブル建ての貸付も小委員会の許可が2022年3月から必要となった。
貿易関連では国内需要の確保のため、輸出制限と輸入拡大を目的とした施策が数多く導入された。ロシア政府は2022年3月、機械類を中心に200以上の特定品目の輸出・再輸出を禁止したほか、非友好国への一部木材製品の輸出禁止も決定した。当初は2022年12月31日までの措置だったが、2025年12月31日まで延長された。欧米諸国を中心にサプライヤーがロシア向けの製品供給を停止したことや船舶・航空を中心とした輸送ルートの混乱を受け、国内での必要物資確保のため輸入の簡素化に向けた施策も導入された。ロシア政府は2022年3月、これまでの方針を転換し輸入品の並行輸入を認可した。これを受け産業商務省は5月、並行輸入品のリストを作成し、対象品目およびブランドを公表した。5月には、電気設備・機器の輸入手続きを簡素化し、優先的な投資プロジェクトに必要な機械や部品・原材料の輸入関税免除措置を導入した。
外国からのロシア向け投資へも様々な制限が加えられた。2022年8月、非友好国の投資家によるロシアの資源・エネルギー企業や金融機関の株式取引などが禁止された。日本企業が参画するエネルギー資源開発案件にも影響は及んだ。同年6月には「サハリン2」の、10月には「サハリン1」の運営主体を変更する大統領令により、ロシア主導による新運営会社の設立と事業移管が決められた。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州を中心にみられた外資系企業のロシアからの撤退に対し、ロシア政府は雇用や技術・ノウハウを国内で確保する観点から、撤退に対する制限措置を導入した。2022年3月、非友好国企業によるロシア事業の売却の際の手続きを定め、事業売却は小委員会の許可対象とした。12月に小委員会は事業売却に当たっての価格算定方法や売却代金の支払い方式、売却額の一部国庫納付を定めた。
知財分野では、ロシア政府は2022年3月、特許、工業意匠などの権利保有者が非友好国民などであった場合、権利者の同意を得ることなくそれらを利用できるようにし、かつ使用料を0%とすることを決定した。5月には輸出向け医薬品の権利保有者の同意なしでの生産を可能とした。
貿易
インド、中国向け資源輸出が増加
連邦税関局によると、2022年の貿易(通関ベース)は輸出が前年比19.9%増の5,914億6,000万ドル、輸入が11.7%減の2,590億8,300万ドルだった。西側諸国による輸出禁止措置や企業によるロシア・ビジネスの停止で輸入が減少する中、資源価格上昇による原油や天然ガス、石炭といった鉱物製品の輸出が好調だった。貿易黒字額は拡大し、3,323億7,700万ドルを記録した。
連邦税関局は2022年2月分以降の貿易統計の発表を停止した。2023年3月に一部統計の発表を再開したが、同年1月分までの品目大分類別の輸出入額のみにとどまっている。輸出のうち、原油や天然ガスを含む燃料・エネルギー製品が資源価格上昇の影響を受け、前年比42.8%増を記録した。アレクサンドル・ノワク副首相のエネルギー業界誌への寄稿によると、2022年の鉱物資源輸出量について、原油が2億4,200万トン(7.6%増)、天然ガスが1,844億立方メートル(25.1%減)、液化天然ガス(LNG)が457億立方メートル(7.9%増)だった。対ロ制裁に加担しない「友好国」向けが好調で、うちインド向けの原油が前年比19倍の4,100万トン、中国向けでは、パイプラインによるガス輸出量が1.5倍の154億立方メートル、LNGが35.2%増の600万トン、原油が28%増の8,900万トンだった。輸入では西側諸国の輸出禁止措置や外国企業によるロシア向け出荷停止を受け、主要輸入品目の機械・設備・輸送用機器が18.6%減となった。化学品・ゴムは6.0%増で、制裁対象になっていない医薬品や医療用品の輸入がEUから増えたことが要因である。
ロシアの貿易を相手国・地域側統計でみると、EUの対ロシア輸出額は前年比38.2%減の551億5,240万ユーロだった。主要輸出品目である機械類、中でも乗用車や自動車部品、航空機の減少が顕著だった。対ロシア輸入額は前年比24.2%増の2,033億2,620万ユーロで、輸入増は資源価格上昇によるものである。ロシアからの天然ガス(LNG除く)輸入量は半減し、EUの輸入天然ガス(同)に占めるロシア産の比率は前年比20ポイント下落し22.6%となった。ルーブル建てで代金の支払いを求めたロシア側によるガス供給停止、一部のEU加盟国によるロシアからの輸入停止に加え、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」が2022年9月に爆破されたことが影響した。米国の対ロシア輸出額は74.0%減の16億6,277万ドル、輸入額は51.3%減の144億3,777万ドルだった。中国の対ロシア輸出額は建設機械、トラック、タイヤが大きく伸び、12.8%増の761億2,300万ドル、輸入額は43.4%増の1,141億4,900万ドルで鉱物資源が増加に寄与した。ロシアとウクライナ間の仲介役を担うトルコの対ロシア輸出額は、機械類の輸出が増加し、61.8%増の93億4,280万ドル、輸入額は倍増の588億4,895万ドルだった。原油や石油製品など鉱物性燃料が増加した。
現地報道によると、2022年のロシア極東沿海地方の貿易額は前年比2.2倍の130億ドルだった。うち輸出が2.2倍の39億5,000万ドル、輸入が2.3倍の90億7,000万ドルだった。中国との貿易額が46%増の75億ドルに上り、同地方の貿易額に占める中国のシェアは57%となった。ハバロフスク地方でも中国との貿易額が31%増加した。
品目 | 輸出(FOB) | 輸入(CIF) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021年 | 2022年 | 2021年 | 2022年 | |||||
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
食料品・農産品(繊維を除く) | 35,965 | 41,276 | 7.0 | 14.8 | 34,042 | 35,722 | 13.8 | 4.9 |
鉱物製品 | 277,348 | 390,434 | 66.0 | 40.8 | 5,575 | 5,240 | 2.0 | △ 6.0 |
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268,805 | 383,730 | 64.9 | 42.8 | 2,429 | 2,558 | 1.0 | 5.3 |
化学品・ゴム | 37,852 | 41,992 | 7.1 | 10.9 | 53,814 | 57,057 | 22.0 | 6.0 |
皮革原料・皮・同製品 | 208 | 223 | 0.0 | 7.6 | 1,304 | 981 | 0.4 | △ 24.8 |
木材・パルプ製品 | 16,994 | 14,149 | 2.4 | △ 16.7 | 4,159 | 3,871 | 1.5 | △ 6.9 |
繊維・同製品・靴 | 1,727 | 1,874 | 0.3 | 8.5 | 17,020 | 15,783 | 6.1 | △ 7.3 |
貴石・貴金属および同製品 | 31,597 | 18,514 | 3.1 | △ 41.4 | 1,144 | 815 | 0.3 | △ 28.8 |
金属および同製品 | 51,036 | 52,212 | 8.8 | 2.3 | 20,373 | 18,301 | 7.1 | △ 10.2 |
機械・設備・輸送用機器 | 25,726 | 20,440 | 3.5 | △ 20.5 | 133,355 | 108,522 | 41.9 | △ 18.6 |
合計(その他を含む) | 493,096 | 591,460 | 100.0 | 19.9 | 293,531 | 259,083 | 100.0 | △ 11.7 |
〔出所〕連邦税関局
国名 | 2021年 | 2022年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
輸出総額(FOB) | 493,096 | 591,460 | 100.0 | 19.9 |
中国 | 68,902 | n.a. | — | — |
オランダ | 42,136 | n.a. | — | — |
ドイツ | 29,727 | n.a. | — | — |
トルコ | 27,066 | n.a. | — | — |
ベラルーシ | 23,137 | n.a. | — | — |
英国 | 22,258 | n.a. | — | — |
イタリア | 19,189 | n.a. | — | — |
カザフスタン | 18,496 | n.a. | — | — |
米国 | 17,523 | n.a. | — | — |
韓国 | 16,893 | n.a. | — | — |
日本 | 10,725 | n.a. | — | — |
〔注〕輸出総額、輸入総額ともその他を含む。連邦税関局は、2022年2月分以降の国・地域別貿易統計を発表していない。
〔出所〕連邦税関局
国名 | 2021年 | 2022年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
輸入総額(CIF) | 293,531 | 259,083 | 100.0 | △ 11.7 |
中国 | 72,700 | n.a. | — | — |
ドイツ | 27,362 | n.a. | — | — |
米国 | 16,872 | n.a. | — | — |
ベラルーシ | 15,637 | n.a. | — | — |
韓国 | 12,988 | n.a. | — | — |
フランス | 12,209 | n.a. | — | — |
イタリア | 12,034 | n.a. | — | — |
日本 | 9,127 | n.a. | — | — |
カザフスタン | 7,135 | n.a. | — | — |
トルコ | 6,518 | n.a. | — | — |
〔注〕輸出総額、輸入総額ともその他を含む。連邦税関局は、2022年2月分以降の国・地域別貿易統計を発表していない。
〔出所〕連邦税関局
対内・対外直接投資
外国企業の撤退に加え、残留企業も新規投資停止が増加
ロシア中央銀行の直接投資統計(国際収支ベース、ネット、フロー)によると、2022年の対内直接投資は400億4,300万ドルの引き揚げ超過だった。統計が発表されている1994年以降初めての引き揚げ超過となった。2022年末の対内直接投資残高は前年末比27.9%減の4,398億1,500万ドルだった。2022年の国・地域別、業種別の統計は発表されなかった。
ロシアによるウクライナ侵攻が開始した2022年2月24日以降、西側諸国の対ロ制裁、ロシアの対抗措置の影響も相まって、撤退を表明の上、ロシアにおける事業・資産を整理する西側企業が多い。ドイツの化学品大手ヘンケルは2022年4月にロシアからの撤退を発表し、ロシア事業を現地投資会社のコンソーシアムに540億ルーブルで売却する契約を締結した。10月には、米国の自動車大手フォード・モーターもロシア自動車メーカーのソレルスとの合弁事業の株式49%を売却し、ロシア事業の撤退を決定した。オーストラリアに拠点を置く包装大手アムコアも12月、ロシアの3工場をロシア地場のHSインベストメンツに売却が完了したことを発表した。アムコアの発表によると、売却した事業価値は3億7,000万ユーロに相当する。日系企業の主な撤退事例としては、11月に日産自動車がロシア市場の事業を産業商務省所管の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡が完了したものなどがある。
ロシアに残留する西側企業についても、事業活動は継続しつつも投資計画を凍結させることが多い。フランス流通大手オーシャンは2022年3月、ロシア市場への残留を発表すると同時に、ウクライナ侵攻開始後はロシアへの投資を停止しているとも公表した。日本たばこ産業(JT)も同様に、ロシア市場におけるマーケティング活動や新規の投資を停止すると発表した(2022年3月)。
西側企業とは対照的に、ウクライナ侵攻後も中国や中東における企業は、投資計画を凍結することなく継続する企業も多い。例えば、トルコのハヤト・ホールディング傘下のハヤト・ロシアは、ロシアのカルーガ州に7,600万ルーブルを投じて進めていた生産工場が2023年3月に完成したことを公表し、生産を開始している。
2022年の対外直接投資は131億1,600万ドルの引き揚げ超過だった。統計が発表されている1994年以降初の引き揚げ超過を記録した。同年末の対外直接投資残高は前年末比21.6%減の3,815億6,900万ドルだった。国・地域別、業種別の統計は発表されていない。
業種 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|
金額 | 金額 | 伸び率 | |
農林業、漁業 | 24 | n.a. | — |
鉱業 | 4,137 | n.a. | — |
資源エネルギー採掘 | 4,261 | n.a. | — |
非資源エネルギー採掘 | △ 124 | n.a. | — |
製造業 | 3,877 | n.a. | — |
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△ 1 | n.a. | — |
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△ 134 | n.a. | — |
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△ 76 | n.a. | — |
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833 | n.a. | — |
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262 | n.a. | — |
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△ 92 | n.a. | — |
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△ 518 | n.a. | — |
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3,128 | n.a. | — |
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58 | n.a. | — |
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△ 75 | n.a. | — |
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461 | n.a. | — |
電力・ガス・熱供給 | △ 147 | n.a. | — |
水道、廃棄物処理 | △ 20 | n.a. | — |
建設 | 8 | n.a. | — |
卸売り・小売り・自動車修理 | 5,832 | n.a. | — |
運輸・倉庫 | △ 774 | n.a. | — |
情報通信 | 126 | n.a. | — |
金融・保険 | 28,854 | n.a. | — |
不動産 | 1,937 | n.a. | — |
保健・社会サービス | △ 28 | n.a. | — |
合計(その他含む) | 40,450 | △ 40,043 | △ 199.0 |
〔出所〕ロシア中央銀行
〔注〕2022年分の業種別データは公表されていない。
国・地域 | 2021年 |
2021年末 残高 |
2022年 |
2022年末 残高 |
|
---|---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 伸び率 | |||
キプロス | 27,956 | 182,303 | n.a. | — | n.a. |
英国 | 7,108 | 53,482 | n.a. | — | n.a. |
アイルランド | 4,207 | 34,064 | n.a. | — | n.a. |
ドイツ | 3,628 | 25,420 | n.a. | — | n.a. |
カタール | 1,498 | n.a. | n.a. | — | n.a. |
ジャージー | 1,393 | n.a. | n.a. | — | n.a. |
バハマ[諸島] | 1,186 | 24,920 | n.a. | — | n.a. |
香港 | 848 | 2,440 | n.a. | — | n.a. |
英領バミューダ諸島 | 776 | 62,484 | n.a. | — | n.a. |
オーストリア | 719 | 7,893 | n.a. | — | n.a. |
日本 | 21 | 3,260 | n.a. | — | n.a. |
合計(その他含む) | 40,450 | 610,083 | △ 40,043 | △ 199.0 | 439,815 |
〔注〕2022年分の国・地域別データは公表されていない。
〔出所〕ロシア中央銀行
国・地域 | 2021年 |
2021年末 残高 |
2022年 |
2022年末 残高 |
|
---|---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 伸び率 | |||
キプロス | 47,078 | 224,831 | n.a. | — | n.a. |
英領バミューダ諸島 | 5,678 | 907 | n.a. | — | n.a. |
スイス | 2,919 | 24,489 | n.a. | — | n.a. |
ルクセンブルク | 2,380 | 22,780 | n.a. | — | n.a. |
ジャージー | 1,783 | 20,589 | n.a. | — | n.a. |
英国 | 1,013 | 22,664 | n.a. | — | n.a. |
シンガポール | 905 | 12,567 | n.a. | — | n.a. |
バハマ[諸島] | 769 | 4,982 | n.a. | — | n.a. |
アイルランド | 853 | 10,390 | n.a. | — | n.a. |
ドイツ | 909 | 10,031 | n.a. | — | n.a. |
日本 | △ 0 | 36 | n.a. | — | n.a. |
合計(その他含む) | 65,883 | 487,004 | △ 13,116 | △ 119.9 | 381,569 |
〔出所〕ロシア中央銀行
〔注〕2022年分の国・地域別データは公表されていない。
業種 | 企業名 | 国籍 | 時期 | 売却額 | 概要 |
---|---|---|---|---|---|
石油 | シェル | 英国 | 2022年2月 | n.a. | ロシアのガス最大手ガスプロムとの合弁を解消する考えを表明したほか、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」や「サハリン2」プロジェクトへの関与も終了する考えを示した。これに続き、3月には原油、石油製品、ガス、液化天然ガス(LNG)などの事業についても段階的に撤退する意向であることを発表。2023年3月、ガスプロムネフチとの西シベリアの合弁事業の所有分を同社に売却したことを発表。 |
石油 | BP | 英国 | 2022年2月 | n.a. | ロシア石油大手ロスネフチとの合弁を解消し、BPが保有するロスネフチの株式19.75%の売却を決定したと発表。撤退に伴う費用として、2022年第1四半期決算で244億ドル費用を計上した。 |
化学 | ヘンケル | ドイツ | 2023年4月 | 540億ルーブル | ロシア事業を現地投資会社のコンソーシアムに売却することで合意。売却取引もロシア関係当局の承認を既に得ており、最終決済に向けて調整中と発表。 |
自動車 | ルノー | フランス | 2022年5月 | n.a. | ロシア事業をモスクワ市政府に、また、保有していた67.69%のアフトワズ株式を自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に売却する契約への調印が社内で承認されたと発表。アフトワズの株式については今後6年間の買戻しオプションを保持。 |
重工業 | シーメンス | ドイツ | 2022年5月 | n.a. | ロシア市場からの撤退を発表、170年近いロシアでの活動を停止した。同月の2022年1~3月期決算では、撤退に関連するコストとして6億ユーロを計上。 |
外食 | マクドナルド | 米国 | 2022年5月 | n.a. | ロシア事業を現地の事業実施権者に売却する契約を締結したと発表。2023年1月の通年決算発表によると、ロシア事業売却に関連する費用は13億ドルだった。 |
外食 | スターバックス | 米国 | 2022年5月 | n.a. | ロシアにおける全ての事業活動を停止することを発表。旧店舗などは現地経営者の手に渡り、「スターズ・コーヒー」として第1号店が2022年8月にモスクワでオープンした。 |
小売り・ホテル | Sグループ | フィンランド | 2022年6月 | 非公表 | プリズマ小売り事業(スーパーマーケット)をロシアのX5グループ(小売り大手)に、サンクトペテルブルクのソコス・ホテルを現地投資家に売却すると発表。売却価格やそのほか取引条件は非公表。 |
電気機器 | シュナイダーエレクトリック | フランス | 2022年7月 | n.a. | 同社のロシア事業を現地経営陣に売却する契約に調印したと発表。 |
コングロマリット | コーク・インダストリーズ | 米国 | 2022年7月 | n.a. | 同社傘下のガーディアン・インダストリーズが所有していた2工場を現地実業家に売却した。 |
自動車 | フォード・モーター | 米国 | 2022年10月 | n.a. | 地場自動車メーカーのソレルスとの合弁企業の株式49%の売却を完了、ロシア事業から撤退した。ただし、5年以内の買戻しオプションを保持している。2022年3月に製造、部品供給、エンジニアリングサポートを含むロシアでの全事業を停止していた。 |
自動車 | 日産自動車 | 日本 | 2022年11月 | 1ユーロ | ロシア事業のNAMIへの売却を正式に完了。この売却にはサンクトペテルブルクの日産の生産・研究開発拠点およびモスクワに所在する販売・マーケティングセンターも含まれる。 |
包装 | アムコア | オーストラリア | 2022年12月 | 3億7,000万ユーロ | サンクトペテルブルクとノブゴロドに所在する3つの工場について、ロシアに地盤を持つHSインベストメンツへの売却が完了したと発表。売却した拠点における売上高は、2022年度(2021年7月~2022年6月)の売上高の2%を占めていた。 |
〔出所〕各社発表および報道などから作成
対日関係
対ロ輸入は増加も23年第1四半期は大幅減、撤退も相次ぐ
日本の財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算すると、2022年の日本の対ロシア輸出額は前年比40.5%減の46億7,900万ドル、輸入額は8.8%増の153億3,900万ドルだった。ウクライナ侵攻に端を発した物流網の混乱や日系各社の出荷および生産の停止、政府による輸出禁止措置などが影響した。主要輸出品目である自動車の輸出額が23.9%減だった。台数ベースでみると乗用車は前年比4.8%減の22万736台、うち新車が前年比79.6%減の1万6,064台、中古乗用車が前年比33.5%増の20万4,672台だった。乗用車輸出台数に占める中古乗用車の割合は前年比26.6ポイント増の92.7%で、自動車各社のロシア向け新車出荷停止が影響した。また、乗用車に次ぐ規模の一般機械は45.4%減となった。輸入額の増加には資源価格の上昇が影響した。主要輸入品目である液化天然ガス(LNG)が53.8%増の51億9,900万ドル、石炭が41.2%増の36億7,100万ドルといずれも大幅に増加した。原油および粗油は減少し14億4,200万ドル(38.2%減)だった。数量ベースでみると、それぞれ4.6%増(687万トン)、41.3%減(1,158万トン)、56.4%減(229万キロリットル)だった。
2023年1~3月の対ロシア輸出額は前年同期比48.0%減の8億9,800万ドル、輸入額は50.1%減の24億8,300万ドルだった。輸出減は主要品目である自動車が33.2%減、乗用車が26.9%減、バス・トラックは81.6%減、自動車の部分品87.7%減となった。乗用車輸出台数は前年同期比2.4%減の4万8,869台となり、全て中古乗用車だった。一般機械は57.8%減、建設用・鉱山用機械(94.6%減)、原動機(75.3%減)、荷役機械(82.5%減)などが軒並みマイナスだった。ポンプ・遠心分離機は70.3%増となった。資源価格は前年並みの水準に戻ったが、主要輸入品目ではLNGが13.5%減、石炭が57.5%減、原油および粗油が93.0%減といずれも大幅に減少した。LNG、石炭、原油および粗油を数量ベースでみると、それぞれ22.9%減(165万トン)、67.1%減(139万トン)、91.1%減(12万キロリットル)だった。
日本の財務省の国際収支統計をドル換算すると、2022年の日本の対ロシア直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比50.6%増の10億100万ドルだった。業種別にみると、製造業では主に輸送機械器具が増加し、製造業全体で前年比15.5倍増の2億1,300万ドルとなった。非製造業では農・林業が2億2,500万ドルとなったものの、卸売り・小売り業が23.2%減となり、非製造業全体で13.5%増の7億4,100億ドルとなった。2022年末の対ロ直接投資残高は45億5,700万ドル(前年末比25.9%増)となった。内訳をみると、現地での収益の再投資と、親会社から現地子会社への融資などを含む負債性資本が増加した。業種別では主に卸売り・小売り業と輸送機械器具の残高が増加した。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、進出日系企業による事業の停止や撤退が相次いだ。ユニクロは2022年3月からロシア国内全店舗の休業を続けている。いすゞ自動車は3月から、コマツは4月からロシアでの生産を停止している。9月以降は自動車・自動車部品製造業の生産終了や撤退の発表が相次いだ。トヨタ自動車は9月、ロシアでの生産事業の終了を発表、2023年3月に産業商務省所管の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)へのサンクトペテルブルク工場の譲渡を完了した。した。マツダは2022年10月、ウラジオストクにある自動車生産合弁会社を合弁相手のソレルスに譲渡する契約を締結した。日産自動車もロシア市場での事業からの撤退を決め、11月にNAMIへの事業売却を完了した。電通グループは11月、ロシア事業を担う現地合弁会社の持ち分を現地経営陣に譲渡すると発表した。2023年1月には、日立エナジーがロシア事業を現地経営陣に売却し、ロシアに関わる全ての活動を停止した。同年3月、ヤンマーホールディングスがロシア事業を全面的に停止し、北海道銀行はユジノサハリンスク駐在員事務所を閉鎖した。KYBのロシア法人は4月に事業を無期限で停止した。任天堂ヨーロッパは5月、ロシア現地法人の事業縮小を発表し、ハイレックスコーポレーションは自動車用制御ケーブルなどを生産していたロシア子会社の清算手続きと撤退の処理を決議した。
ロシアは2022年6月、非友好国によるロシアへの制限措置に対する対抗策の一環として石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の運営主体の再編を命じる大統領令を発行した。「サハリン2」を運営する新会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」を8月に設立し、旧運営会社から事業を移管した。ロシアのガスプロムが引き続き権益の50%超を保有したほか、三井物産と三菱商事それぞれ12.5%、10.0%の持ち分を維持する申請をロシア政府に行い、9月1日までに承認された。
ジェトロが2022年9月に実施したロシア進出日系企業実態調査によると、ウクライナ情勢の影響を受け、在ロシア日系企業の業績は2013年度の調査開始以降、最も悲観的な結果だった。2022年の営業利益見込みを「赤字」と回答した企業の比率は50.0%と、前年の8.3%から大きく悪化した。2023年の見通しについても、2022年に比べ「悪化」が57.4%と過半数を占めた。今後1~2年の事業展開についても「縮小」が48.3%、「第三国(地域)への移転・撤退」が8.3%だった。営業利益の悪化、事業の縮小・撤退の主な理由として、西側諸国による対ロ経済制裁、レピュテーションリスクが挙がった。経営上の問題点について、販売・営業面では、「取引先からの発注量の減少」(31.1%)が最多(13.2ポイント増)で、財務・金融・為替面では「対外送金に関わる規制」(63.3%)が最多(49.5ポイント増)となった。雇用・労働面では「解雇・人員削減に対する規制」(35.0%)が最多(18.3ポイント増)で、「事業縮小または拠点閉鎖により解雇費用がかさんでいる」といったコメントがみられた。
品目 | 2021年 | 2022年 | ||
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金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
輸送用機器 | 4,225 | 2,746 | 58.7 | △ 35.0 |
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3,259 | 2,479 | 53.0 | △ 23.9 |
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2,861 | 2,324 | 49.7 | △ 18.8 |
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397 | 155 | 3.3 | △ 60.9 |
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913 | 233 | 5.0 | △ 74.5 |
一般機械 | 1,587 | 867 | 18.5 | △ 45.4 |
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528 | 257 | 5.5 | △ 51.4 |
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421 | 178 | 3.8 | △ 57.8 |
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190 | 107 | 2.3 | △ 43.9 |
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151 | 130 | 2.8 | △ 14.0 |
原料別製品 | 650 | 249 | 5.3 | △ 61.6 |
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425 | 116 | 2.5 | △ 72.7 |
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111 | 67 | 1.4 | △ 39.9 |
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34 | 20 | 0.4 | △ 39.9 |
電気機器 | 536 | 193 | 4.1 | △ 64.0 |
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86 | 16 | 0.3 | △ 81.1 |
合計(その他含む) | 7,867 | 4,679 | 100.0 | △ 40.5 |
〔出所〕財務省「貿易統計」から作成
品目 | 2021年 | 2022年 | ||
---|---|---|---|---|
金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
鉱物性燃料 | 8,668 | 10,506 | 68.5 | 21.2 |
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2,333 | 1,442 | 9.4 | △ 38.2 |
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3,380 | 5,199 | 33.9 | 53.8 |
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2,599 | 3,671 | 23.9 | 41.2 |
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353 | 193 | 1.3 | △ 45.5 |
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353 | 193 | 1.3 | △ 45.5 |
原料別製品 | 3,181 | 2,785 | 18.2 | △ 12.4 |
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2,672 | 2,250 | 14.7 | △ 15.8 |
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412 | 442 | 2.9 | 7.2 |
食料品 | 1,296 | 1,219 | 7.9 | △ 5.9 |
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1,243 | 1,196 | 7.8 | △ 3.8 |
原料品 | 721 | 616 | 4.0 | △ 14.6 |
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484 | 444 | 2.9 | △ 8.3 |
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76 | 89 | 0.6 | 16.2 |
化学製品 | 144 | 140 | 0.9 | △ 2.6 |
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85 | 92 | 0.6 | 7.9 |
合計(その他含む) | 14,101 | 15,339 | 100.0 | 8.8 |
〔出所〕財務省「貿易統計」から作成
その他(西側諸国の対ロ制裁)
G7が協調し、相次いで対ロシア制裁を導入
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、G7など西側諸国が中心となり、対ロシア制裁措置を発動している。情勢長期化に伴い、各国・地域が協調する形で制裁の追加措置を講じており、ロシアのビジネス環境は著しく悪化している。
金融面での措置では、各国・地域によってロシアの主要銀行の資産凍結が導入されたほか、銀行間の国際送金や決済に関するネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの特定銀行が排除された。
貿易関連措置では、日米、EUなどがロシアに対して貿易上の最も有利な待遇を保障してきた最恵国待遇を撤回した(注)。各国・地域では、軍事用途に利用可能な二重用途製品にとどまらず、先端技術関連製品やロシア産業の基盤強化に資する物品など汎用品を含む幅広い品目を対象とした輸出禁止措置に加え、ロシアの主力輸出品である資源エネルギーを対象にした輸入制限措置も導入された。
日本は2023年8月、2022年の対ロシア輸出額のうち約4割を占めた中古車を含む排気量1900cc超の自動車を輸出禁止とした。米国はロシア産の多くの品目の関税を引き上げている。例えば、2023年3月から4月にかけて特定のアルミ製品の関税率を200%に引き上げた。欧州では、ドイツが2022年2月、ロシアがウクライナ侵攻直前にウクライナ東部で親ロ派が実効支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認したことを受け、ロシアからの新たな天然ガス調達ルートとして期待されていた海底パイプライン「ノルドストリーム2」の稼働に必要な承認手続きを停止した。EUは同年4月、ロシアの道路輸送事業者によるEU域内での輸送を禁止した。
この他、各国・地域がロシアの特定組織や銀行、政府・企業関係者など個人を対象にした資産凍結や取引禁止などの制裁措置を導入している。
2023年に入り、ロシアへの迂回輸出を問題視し、防止する措置が取られている。米国は3月、ロシア関連制裁の迂回および輸出管理の順守に関する勧告を発表した。4月以降、ロシアおよびロシア国外の企業に対する輸出管理を強化、対象企業を拡大させている。EUも6月の対ロシア制裁第11弾の中で、迂回輸出防止措置や輸送規制を強化した。
(注)EUは関税の引き上げではなく、輸出入禁止措置を通じて最恵国待遇を停止した。
措置内容 | 年 | 日本 | 米国 | EU |
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金融関連措置 | 2022年 |
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2023年 |
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貿易関連措置 | 2022年 |
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2023年 |
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〔注1〕カッコ内の日付は実施日。上記以外に、ロシアの特定団体や政府・企業関係者などを対象とした資産凍結、査証発行停止や取引禁止措置などが各国・地域で導入されている。
〔注2〕SDN指定されると、在米資産の凍結および在米法人や個人などとの資金・物品・サービスの取引が禁止される。
〔出所〕各国政府およびEU発表資料、ジェトロ・ビジネス短信より作成
基礎的経済指標
- 人口
- 1億4,645万人(2023年1月1日現在)
- 面積
- 1,712万5,000平方キロメートル(2022年1月1日時点)
- 1人当たりGDP
- 1万5,444米ドル(2022年、推定値)
項目 | 単位 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|
実質GDP成長率 | (%) | △ 2.7 | 5.6 | △ 2.1 |
消費者物価上昇率 | (%、前年12月比) | 4.9 | 8.4 | 11.9 |
失業率 | (%) | 5.8 | 4.8 | 3.9 |
貿易収支 | (100万米ドル) | 93,441 | 190,337 | 314,124 |
経常収支 | (100万米ドル) | 35,373 | 122,114 | 236,077 |
外貨準備高 | (100万米ドル、期末値) | 457,018 | 497,554 | 445,784 |
対外債務残高(グロス) | (100万米ドル、期末値) | 467,605 | 482,400 | 380,626 |
為替レート | (1米ドルにつき、ルーブル、期中平均) | 72.10 | 73.65 | 68.48 |
注:
面積:クリミア共和国・セバストポリ市含む。
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:連邦国家統計局
1人当たりGDP、外貨準備高、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ロシア中央銀行