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外食産業の動向:日本食レストランの戦略と現状

勢いを増す大衆向けチェーン店、悩める日本人シェフ

2010年10月
分野:食品・農林水産物

現在、ロシアでは日本食は幅広い客層に受け入れられ、日本食専門の高級店だけでなく大衆向けチェーン店や、カフェなどの非専門店でも日本食を提供する店が増えている。

今回の調査では、人気の日本食レストランの戦略について、各関係者への聞き取り調査を基にその背景および要因を分析した。

幅広い顧客をターゲットにしたチェーン店の戦略

モスクワでは、値段の高い日本の食品・食材よりも、中国産・韓国産の食品・食材が食品関係者の間で人気が高く、この傾向は大多数のレストランでも例外ではない。

現在モスクワには、日本食を取り扱うレストラン、カフェ、バーが600軒以上あるといわれており、その中には日本人シェフのいる日本食レストランも数店営業している。その代表的なレストランがYakitoriyaやGin no Taki、Planeta Sushi、Tanuki、Yaposha、Wabi Sabi、Dve Palachiki(「2本の箸」の意)などの大衆向けチェーン店である。

こういったチェーン店は、ロシア人向けに日本食を現地化し、幅広い顧客層を獲得する戦略を取っている。

モスクワでの日本食ブームの礎を築いたYakitoriyaは1999年に1号店を開店した。当時モスクワに日本食レストランは数軒あったが、ほとんどが高級レストランか、その正反対の安価で日本食とは呼べないようなクオリティの低い食事を提供するレストランであったが、この中間に位置づけられていたのがYakitoriyaであった。

同店は、それまでにはなかった日本食レストランの手法でチェーン展開を考えていたため、店内は木製の家具で統一し、日本人シェフの写真を入れたメニューを配り、浴衣に似た衣装を身につけた従業員が、客が出入りする度に日本語であいさつするなど日本的な接客を打ち出す一方で、鮮やかな照明を使ったカウンターバーを設置し、日本食でありながら欧米スタイルも取り入れたコンセプトで、ここ10年間でモスクワ市・州で34店舗まで店舗数を増やした。

サンクトペテルブルクやウクライナの首都キエフにもフランチャイズ展開している。さらに、レストランだけでなく、現在では日本食専門店を1店舗、弁当の配達専門店Yakitoriya Bentoを3店舗展開している。

このYakitoriyaチェーンを運営するロシアレストラン業界の大手Vesta-Tesntr Internationalは、そのほかにGin no Taki、Menza(麺専門店)、IST Bufet(中華食べ放題のレストラン)といった人気のレストランチェーンも運営している。この企業グループに日本食品の大手輸入兼卸業者であるKonus Plusが属している。同社はYakitoriyaの成長とともに、ここ数年間で日本食や中国産の食品を数多くのレストランに供給する大手のサプライヤーとなった。

また、Yakitoriya以外にも日本食ブームの牽引役となったPlaneta Sushiも現在ロシアをはじめウクライナ、CIS諸国に134店舗を展開している。このチェーン店の運営会社であるRosinter Restorants Holdingは、このほかにもイタリアンレストランチェーンIL Patio(144店舗)やアメリカンレストランチェーンT.G.I. Friday's(31店舗)を展開している。このRosinter Restorants Holdingの取る戦略は、アジアに的を絞ったとみられるVesta-Tesntr Internationalの戦略とは異なり、ロシア人に最も人気の高い外国料理であるイタリア料理と、その次に人気がある日本料理に焦点をあて事業を拡張してきた。立地戦略のひとつとして、街中ではIL PatioとPlaneta Sushiを隣接させ営業している。

日本人シェフが語る本音とジレンマ

前述のチェーン店で出される日本食は、米国発の「ロールずし」系がメインで、日本人には馴染みのない日本食がほとんどである。これらのチェーン店は、本場の日本食を知らない客層がターゲットであるため、必ずしも食材が日本産である必要はなく、安価な中国産や韓国産のしょうゆ、のり、米、しょうが、みそ等を仕入れ、消費者に提供しているのが現状である。

一方、日本人シェフのいる日本食レストランは、中間所得層以上の顧客層がターゲットである。こういったレストランには在モスクワの日本人も数多く訪れるため、本場の味へのこだわりが強い。また日本人シェフの場合は、客に良いものを提供したいというポリシーもあり、シェフは良い材料を仕入れるのに、日々アンテナを張って模索している。

今回、日頃から交流のある日本人シェフ数人に話を聞いた。その中でほぼ共通している意見は、高級店を除けば、日本産品を仕入れたいという希望はあるものの、レストランオーナーの意向により、類似品を仕入れざるを得ないというものだった。現地で販売されている日本食品や食材の値段が高く、経営上採算が合わない点がこのような状況を生み出している。

例えば、重要な食材である米に関して、純日本産米を取り扱っているレストランは少なく、そのほとんどが中国・台湾産など、日本産米と比較して安価なアジア産の米を使用している。

ある高級日本食レストランでは、試しに日本の農産物を使ってさまざまな日本料理を出したところ、客の評判はとても良かったという。ただ、その後のレギュラーな仕入れの仕組みが出来上がっていないため、その評判の良い日本産の食材や農産物は、安くて近い欧州産に取って代わられたそうである(こういった動きはレストランに限らず、小売チェーン店でも見受けられる)。

とはいえ、こういった高級日本食レストランを訪れるのは、政治家や企業のオーナー、有名人等の富裕層で、日本にも何度も行ったことがある客が多いため、高級レストランのシェフたちは、価格の折り合いさえつけば、日本ののりや米など、仕入れたい日本の食材はたくさんあるという。彼らは皆、モスクワ市内で手ごろな価格で日本食品・食材が買えるようになる日が来るのを待ち望んでいるのである。

最近では日本の食品会社や商社の社員がモスクワの日本食レストランに直接自社商品を売り込みにくることが多いという。しかし、日本人シェフのいる日本食レストランはチェーン展開している店が少なく、一店舗もしくは数店舗しかないため、買い取り量に限界があり、取引が成り立つことはまれであるという。また輸入業者や卸売業者が決まらない状態で商品を提案されることも多いが、こういった試みは受け入れられるケースは少ない。自社商品を売り込む場合は、まずレストランに取引先を聞き、そこに直接売り込んでみるのが得策と考えられる。

以上からもわかるように、大衆向け日本食レストランと高級日本食レストランでは経営戦略および置かれた状況が全く異なっている。

カフェやバーでも人気のロールずしを提供

増加する大衆向け日本食レストランのほかに、日本食ブームを演出する存在がある。それが一般のカフェやバーである。モスクワでは非常に多くのカフェやバーが、すしやロールずしをメニューに加えている。しかしその品質は様々である。しかも価格は、大衆向け日本食レストランの価格帯とほぼ同じか、またはそれ以上の値段に設定している店もある。

大衆向けのYakitoriyaやTanuki、Planeta Sushiを例に挙げると、その人気メニューである「カリフォルニア・ロール」や「フィラデルフィア・ロール」は、一人前の値段は前者が255~330ルーブル(2010年12月13日現在、約690~895円)、後者が275~285ルーブル(同約745~772円)の価格帯にある。しかし、日本食の看板を掲げない非専門店のロールずしが、そのステイタスやコンセプトに合わせるために、この価格帯を超える金額で提供されているケースが多い。こういった非専門店の戦略は、ロシアの現在の日本食人気を上手く利用するためメニューにすしを加え、一方では原価を抑えるため、より安価な中国産や韓国産など代替となる食材を使用し、人気の日本食レストランの価格帯で客に提供することにより、利益率を高めるという戦略を取っているのである。

また、離職率の高いロシア、特にモスクワではシェフの流動性が高いため、以前日本食レストランで日本人シェフの下で働いていたシェフたちが、こういったカフェやバーに再就職することになる。ソ連時代の慣習から、ロシアのレストランは細かいレシピや作り方に至るまで書類を作成し監督官庁に提出しなければならないが、離職する際に日本人シェフが作った料理に関する書類をコピーし、再就職の面接・実技の際に活用することも珍しくないそうである。実際に日本人シェフがほかのレストランのコンサルティングを行った際、メニューのロールずしの多くが、彼が作ったオリジナルロールずしだったという皮肉な話もある。

このように日本食をメニューに取り入れたカフェやバーは多数あることを考慮すると、円高の影響とこれらの要因も加わって、中国・韓国産品の食品・食材の需要が伸びているのではないかと推察できる。

(モスクワ・センター)

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