化学品の現地輸入規制および留意点:シンガポール向け輸出

質問

シンガポールに化学品を輸出する際の現地輸入規則と留意点について教えてください。

回答

シンガポールでの化学品の輸入は1999年環境保護管理法(Environmental Protection and Management Act 1999:EPMA)などの規制を受けます。

I. 化学品に関わる法令体系

1. EPMAによる規制

シンガポールの環境基本法令であるEPMAおよび下位規範である環境保護管理(有害物質)規則(Environmental Protection and Management (Hazardous Substances) Regulations:EPMR)が、規制対象となる「有害物質」(Hazardous Substance)を定め、有害物質の輸入、製造または販売を行う者に対してライセンスの取得を義務付け、また、規定値を超える有害物質の輸送または保管を行う者に対して書面による許可の取得や有害物質の輸入および輸送の際のラベル表示等を義務付けています。

2. その他の法令による規制

上記のほか、以下の法令において、化学品の取扱いに関する規制が定められています。

  1. 事業場の安全および健康法(Workplace Safety and Health Act 2006):同法およびその下位規範である各規則が、有害物質等を取り扱う職場につき、有害物質に関する警告ラベルの貼付や安全性データシート(SDS)の取得および周知等を義務付けています。
  2. 火災安全法(Fire Safety Act 1993):石油および可燃物の輸入や貯蔵等を取り扱う者にライセンスの取得を義務付けています。
  3. 有害廃棄物(輸出入および中継貿易の管理)法(Hazardous Waste (Control of Export, Import and Transit) Act 1997):有害廃棄物の輸出入および中継貿易を行う者に当局からの許可の取得を義務付けています。
  4. シンガポール海事港湾庁(危険物、石油および爆発物)規則(Maritime and Port Authority of Singapore, Dangerous Goods, Petroleum and Explosives Regulations 2005):危険物を運搬等する船舶の所有者等が港長に事前通知を行うことや荷卸を行う場合には港長の許可を得ることを義務付けています。
  5. 健康製品法(Health Products Act 2007)および治療薬法(Medicines Act 1975):一定の健康製品や薬品の輸入等を行う者にライセンスの取得を義務付けています。
  6. 食品販売法(Sale of Food Act 1973)および食品規則(Food Regulations):食品への使用が禁止される食品添加物を含む製品の輸入等を規制しています。
  7. 植物管理法(Control of Plants Act 1993):植物に使用する農薬について当局への登録義務を定めています。
  8. 飼料法(Feeding Stuffs Act 1965):飼料の輸入等を行う者にライセンスの取得を義務付けています。
  9. 生物剤および毒素法(Biological Agents And Toxins Act 2005):指定された生物剤および毒素の輸入等を行う者にライセンスの取得を義務付けています。

II. 対象品目

公衆に重大な悪影響を及ぼす可能性がある毒性物質または難分解性物質は、EPMAの別表第2(Second Schedule)パートIにより、規制対象となる有害物質として指定されています(ただし、パートIの一部および同パートIIにおいて含有量や有害物質を含む別の物質についての例外が設けられています)。
規制対象となる有害物質に該当するか否かは、HSコードと製品コードにより確認することができます。有害物質についてのHSコードと製品コードのリスト(All HS/CA Product Code)は、シンガポールの輸入申告に関するプラットフォームであるTradeNetのHS/CA Product Code Search Engineからダウンロードすることが可能です。

III. 事前手続き(輸入業の許可および品目別輸入許可・承認・届出・登録等)

    1. 貿易関連事業者の登録
      シンガポールへの輸入を行う事業者は、会計・企業規制庁(ACRA)への登記を行った上、ACRAより発行される個別企業登録番号(UEN)をシンガポール税関(Singapore Customs)に登録することが必要です。その上で、輸入事業者は、通関(Singapore Customs)へのアカウント登録を行い、貨物がシンガポールに輸入される前に、自ら、または申告代行業者(Declaration Agent)により、輸入全般に必要な輸入申告手続として、TradeNetを通じて輸入許可の申請を行い、輸入許可を取得することが求められます。輸入許可が認められると貨物通関許可証(Cargo Clearance Permit)を取得することが可能となります。
    2. EPMA上の有害物質輸入についてのライセンス
      EPMAにおいて、EPMAの定める有害物質を輸入する事業者は、環境保護局長からライセンスを取得しなければ輸入を行うことが認められません。取得したライセンスを他の者に譲渡することはできず、有害物質の輸入を行うことが認められるのは、ライセンスに記載された事業者のみです。

IV. 輸入通関手続き

輸入通関につき、コンテナ貨物を海上輸送で輸入する場合には、貨物通関許可証等の提示を求められませんが、コンテナ貨物を空輸および陸送で輸入する場合、または在来貨物や手持品を輸入する場合、通関に対して、貨物通関許可証と共に、補足書類(商業送り状、包装明細書、船荷証券・航空貨物運送状など)を通関手続きの際に提示することが必要です。

V. 表示・ラベリング

EPMRにおいて、有害物質の輸入ライセンスを取得した事業者は、有害物質の輸入に用いるコンテナやタンクコンテナにおいて、環境保護局長が承認するラベルの規範に従ったラベル表示等が行うことが求められます。また、有害物質の輸送に際して、環境保護局長が指定するラベルの規範に従った警告パネルまたはラベルをタンクローリー、海上コンテナ、タンクコンテナおよびその他の輸送手段表示することが求められます。環境保護局長が承認・指定するラベルの規範には、国連基準(UN Standard)、国際海事危険物規範(IMDG Code)およびシンガポール基準586(Singapore Standard 586)等がありますが、有害物質の種類や量によって適用される規範が異なりますので、具体的に適用される規範を確認するためには国家環境局(National Environmental Agency)への照会を行うことが推奨されます。

VI. その他留意点

シンガポールでは、上記のとおり、EPMAにおいて一定の毒性物質または難分解性物質を有害物質として定めており、有害物質の輸入には事前のライセンス取得が必要とされています。
一方で、一部の国で行われているように、規制対象物質として指定されていない化学物質を「新規化学物質」として、輸入時の届出等を求める制度は導入されておらず、「新規化学物質」の輸入は可能です。ただし、当該化学物質の輸入につき上記Iの各法令に基づく手続等が必要であり、各法令に基づき輸入が制限される場合があります。
また、一定の量を超える化学品を保管するために使用される施設等、EPMAの別表第1(First Schedule)で定める「指定施設」(Scheduled Premises)を占有、または利用しようとする者には、環境保護局長の書面による許可の取得が求められています。

関係法令

参考資料・情報

国家環境局:
化学品の安全:有害物質外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家環境局への照会フォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
通関:
輸入業者向けクイックガイド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
TradeNet(HS/CA Product Code)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2023年10月

記事番号: S-231001

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