化学品の現地輸入規則および留意点

質問

韓国へ化学品の輸出を検討しています。韓国での化学品の輸入規制および諸手続きについて教えてください。

回答

韓国向け化学品の場合、下記関連法令がありますので、これらを参照の上、一義的に法的責任を負う韓国側輸入者と事前に対応・手続きを確認してください。

大韓民国(韓国)へ化学物質又は化学物質から成る混合物を輸出する場合、環境部(Ministry of Environment)主管の「化学物質の登録及び評価等に関する法律(化評法)」、「化学物質管理法(化管法)」、雇用労働部(Ministry of Employment and Labor)主管の「産業安全保健法(産安法)」の規制義務の対象となるかを判断する必要があります。

I. 化学物質の登録及び評価等に関する法律(化評法・K-REACH)

化評法は国民の健康と環境を保護するために化学物質の登録・申告・有害性・危害性(リスク)に関する審査・評価、有害化学物質の指定に関する事項を規定した法律で、対応義務は原則として韓国内製造・輸入者にあります。法第3条により同法の適用除外に該当すれば「薬事法」や「化粧品法」など該当する他法の対象となるため化評法の対応は必要ありません。法第11条第1項第1号又は環境部公示 第2018-234号「登録又は申告免除対象化学物質」別表1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます・2に該当すれば化評法だけでなく、後述の化管法でも除外となり対応が必要ありません。 化評法にはOR(Only Representative:代理人選任)制度があるため、日本の製造者もORを選任して輸入者の代わりに義務を履行することが可能です。また、OR制度を利用することで輸入者への不必要な情報開示も避けることが可能です。
化評法には既存化学物質インベントリー(KECL)があり、既存化学物質と新規化学物質は対応が異なります。

  1. 既存化学物質
    既存化学物質は化学物質情報処理システム(英文あり)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCAS番号や化学物質名で検索をすることができます。KE No.の欄にKE-XXXXXのようにKEから始まる番号又は2005-3-XXXXのように年度から始まる番号があるものは全て化評法における既存物質です。資料保護が認められている物質は総称名で検索結果が出る場合もあります。検索結果が出てこない場合でも、環境部公示「既存化学物質」第2023-122号第3条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより既存物質と認められる物質もありますので確認が必要です。また、検索結果が出てきた場合でも「新規物質」と表示されているものは有害化学物質(有毒物質、許可物質、規制物質、制限物質)に該当する新規化学物質であり既存物質ではありません。 既存物質は年間製造・輸入量が1トン以上となる場合は申請が必要です。R&D用、低懸念ポリマー、表面処理物質などは登録確認免除申請の要件に合致するかどうか確認します。合致しなければ登録が必要と判断されます。登録の前に事前申告をすれば猶予期間が与えられ、下記の法第10条で定められた猶予期間内に協議体(CICO)内で代表登録者を選定し、協議体加入者で共同登録を行います。
    • 1000トン以上:2021年12月31日(満了)
    • 100-1000トン:2024年12月31日
    • 10-100トン:2027年12月31日
    • 1-10トン:2030年12月31日

    猶予期間が既に満了してしまったトン数に該当する場合は、事前申告・猶予期間無しに製造・輸入前に登録を完了していなければなりません。2023年11月現在(2024年3月現在)、100-1000トン帯又はそれ以下のトン数帯の場合はまだ事前申告が可能です。

  2. 新規化学物質
    既存化学物質を除いた全ての化学物質は新規物質とみなされます。新規化学物質は数量に関わらず申請が必要です。既存物質と同じようにR&D用、低懸念ポリマー、表面処理物質などの登録確認免除申請の要件に合致するかどうか確認します。合致しなければ100kg未満は申告、100kg以上は登録が必要です。新規化学物質は事前申告や猶予期間はないため製造・輸入前に通知書が発行されていなければなりませんので、必然的に個別での申請となります。例外的にR&D用と試薬の登録確認免除申請は輸入通関の30日後までの提出が認められます。
  3. 申請完了後の義務
    登録、申告、免除確認の通知書が発行された後は、法第29条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに従い登録した内容に沿った情報伝達が必須ですが、その際に産安法とも関連の深いMSDS(物質安全保健資料)が複雑に絡んできますので注意が必要です。また、通知書発行後も輸入者の変更、有害性・リスクの変更などは変更の申請が必要です。

II. 産業安全保健法(産安法)

産安法は、労働災害を予防し快適な作業環境を作ることで労働者の安全と保健を維持·増進することを目的とした法律です。化評法と同じく原則として対応義務は韓国内の製造・輸入者にありますが、産安法はその性格上、化学物質の製造・輸入と直接関連する条項はほんの一部に限られています。なお、産安法では下記の2のMSDS関連義務だけOR(Only Representative)制度があり、日本の製造者もORを選任して輸入者の代わりに義務を履行することが可能です。1の有害性・危険性調査報告書と除外確認申請は製造・輸入者が申請者となる必要があります。

  1. 有害性・危険性調査報告書と除外確認申請
    化評法で既存物質のうちKEから始まる番号は化評法・産安法ともに既存物質ですが、年度から始まる番号は産安法の既存物質とは限らないため、産安法施行規則第153条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによる過去の「新規化学物質の名称などの公表」リストに収載されているかどうかを確認する必要があります。リストに収載されていなければ、化評法では既存であるが産安法では新規物質として有害性・危険性調査報告書の提出が必要です。化評法と産安法の両法律で新規物質で尚且つ化評法で既に同じ要件において登録・申告・免除確認が完了している場合は、産安法では「有害性・危険性調査報告書を提出したもの」「有害性・危険性調査報告書除外確認を受けたもの」とみなされ、産安法で実際の申請は必要ありません。但し、一部高分子や一般消費者生活用については、化評法と産安法の概念が異なるために上述の「みなされ」が利きませんので、その場合は産安法の要件に沿って有害性危険性調査報告書や除外確認が必要です。
  2. MSDS(物質安全保健資料)
    法第104条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの分類基準によってGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に沿って分類がつく産業用の製品(単一の化学物質又はこれを含有する混合物)は、施行令第86条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより除外対象となる場合を除いて安全保健公団(KOSHA)へのMSDS提出と、提出により発行されるMSDS番号を記載したMSDSの輸入者・下位使用者(製造・輸入・販売者及び消費者を除く)への譲渡が義務付けられています。また、製品に含有される成分に法第104条によりGHS分類がつくにも関わらず成分の化学物質名称又は含有率を輸入者・下位使用者に非開示にしたい場合は、安全保健公団(KOSHA)へ非公開承認申請を提出し、承認を受けなければなりません。非公開承認申請の有効期間は5年間ですので、5年ごとに再申請する点に注意が必要です。

III. 化学物質管理法(化管法)

化管法は、化学物質による国民の健康及び環境上の危害予防のための化学物質管理と、化学物質事故への対応を定めた法律であり、主な対象者は 製造・輸入者だけでなく、販売、保管·保存、運搬又は使用する者までを含みます。化管法にはOR(Only Representative)制度がないため、輸入者側が対応できるように国外製造者が協力することが求められます。

  1. 化学物質確認明細書
    初回輸入前に、製品単位で新規・既存・有毒・許可・制限・禁止・事故警戒(直訳:事故対備)物質が含有されているかどうかを自己で確認して韓国化学物質管理協会(KCMA)に提出します。例外的にR&D用と試薬は化評法の登録確認免除申請と同様に輸入通関の30日後までの事後提出が認められます。2023年11月現在(2024年3月現在)は国外製造者の直接提出ができないため、輸入者に化管法用のLoC(Letter of Confirmation)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提供し、輸入者側で対応してもらう必要があります。
  2. 許可物質の許可
    年間100kg以上の許可物質を製造・輸入・使用するためには予め事業者登録されている地域の地方環境官署から許可証を発行してもらわなければなりません。
  3. その他
    統計調査(2年に一度)、排出量調査、有毒物質の販売時の陳列・保管量制限と運搬時の運搬計画書、制限物質の輸入許可・(100kg未満の)有毒物質の輸入申告、化学事故予防管理計画書、有害化学(有毒・許可・制限・禁止)物質の営業許可、取扱施設検査(設置、定期、随時)などの義務があります。試薬の営業許可義務は除外となり必要ありません。原則として韓国輸入者側が対象者であり、国外製造者が直接関わってくるのは統計調査程度です。

IV. 化学製品安全法(K-BPR)

家庭、オフィス、多重利用施設など日常的な生活空間で使用される産業用ではない化学製品は化評法の対象になり得ると同時に製品単位で(単一物質又は混合物)生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律(化学製品安全法)の対象になります。安全確認対象生活化学製品はK-BPRと化評法の両方の義務を確認する必要がありますが、殺生物物質・製品はK-BPRで承認を受けた場合は製品内の殺生物物質以外の含有成分については化評法の対応は必要ありません。K-BPRにはOR(Only Representative)制度があるため、日本の製造者もORを選任して輸入者の代わりに義務を履行することが可能ですが、情報開示が前提となっているため、ORを選任した場合でも物質情報を非開示にすることはできません。

  1. 安全確認対象生活化学製品
    環境部公示第2023-163号「安全確認対象生活化学製品の指定及び安全·表示基準」の別表1「安全確認対象生活化学製品の種類」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで製品品目の指定があるものは3年ごとに指定機関で試験・検査を実施した後に安全基準適合確認の申告を行い、証明書を受けた結果を製品ラベルに反映させなければなりません。一方で上記、別表1「安全確認対象生活化学製品の種類」で製品品目に指定されている生活化学製品に当てはまらない製品は国立環境科学院公示第2023-25号「安全確認対象生活化学製品の承認等に関する規定」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに沿って承認を受けなければなりません。
  2. 殺生物物質・製品の承認
    有害生物の除去、無害化、抑制する機能として使用する化学物質、天然物質又は微生物又はこれらを含有する混合物は殺生物物質や殺生物製品の承認を受けなければなりません。この場合、殺菌剤、殺藻剤、忌避剤、木材用防腐剤などは1番の安全確認対象生活化学製品としての安全確認の申告を行いつつ殺生物物質・製品の承認も必要です。殺生物製品タイプ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによって下記の4つのグループに分けられ、既存殺生物物質の申告をすれば施行令別表1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで定められた猶予期間が与えられますが、各猶予期間は環境部長官の命により2029年12月31日までの範囲内で短縮・延長される可能性もあります。
    • 1グループ: 殺菌剤類(消毒剤類)、駆除剤類 2022年12月31日(満了)
    • 2グループ: 保存剤類(防腐剤類)、除去剤類 2024年12月31日
    • 3グループ: 保存剤類(防腐剤類) 2027年12月31日
    • 4グループ: 保存剤類(防腐剤類)、その他 2029年12月31日

    猶予期間が既に満了してしまった製品タイプに該当する場合は、申告・猶予期間無しに製造・輸入前に承認を完了していなければなりません。承認を受けた殺生物製品は、承認の有効期間が最低で物質5年、製品3年、最長で10年与えられ、有効期間中に再申請をすることで継続して輸出が可能です。

  3. 殺生物処理製品
    製品の主な目的ではなく、有害生物除去等の付随的な目的のために殺生物製品を使用した製品は処理製品として処理に使用した殺生物製品の承認を受けた範囲内でのみ使用が可能であり、ラベル表示の義務があります。但し、輸入される殺生物処理製品の場合は既に殺生物製品の承認を受けている製品と類似性基準や外国政府の承認・確認等により安全性が認められた殺生物物質・製品を使用するなどの基準を満たしていれば一から承認を受ける必要はなく輸入が可能です。
    ※殺生物処理製品のうちの輸入される殺生物処理製品について、対象製品リストはありません。あくまで「既に殺生物製品の承認を受けている製品と類似性基準や外国政府の承認・確認等により安全性が認められた殺生物物質・製品を使用するなどの基準を満たして」いることが条件であり、判断は各社に委ねられます。

V. 危険物安全管理法

危険物の貯蔵·取扱及び運搬並びにこれに伴う安全管理に関する事項を規定することにより、危険物による危害を防止し、公共の安全を確保することを目的とした法律であり、上述の環境部、雇用労働部とは別に消防庁(National Fire Agency)が主管です。対象となるのは、同施行令別表1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに酸化性固体、可燃性固体、自然発火性物質及び禁水性物質、引火性液体などです。法の目的が韓国国内の貯蔵、取扱、運搬であるため、OR(Only Representative)制度はなく、輸入者など製造、貯蔵・保管、取扱、運搬をする者が対応しなければなりません。

関係法令

オンライン申請サイト

参考サイト

調査時点:2024年1月
最終更新:2024年3月

記事番号: K-231201

ご質問・お問い合わせ

記載内容に関するお問い合わせ

貿易投資相談Q&Aの記載内容に関するお問い合わせは、オンラインまたはお電話でご相談を受け付けています。こちらのページをご覧ください。