医薬品の現地輸入規則および留意点:インドネシア向け輸出

インドネシア向けに医薬品を輸出する際の現地規制と留意点について教えてください。

インドネシアに医薬品を輸出する場合、まずは当該の医薬品を国家食品医薬品監督庁(BPOM)に登録し、国内流通許可を取得しなければなりません。

I. 輸入規制

  1. 流通許可の取得

    2011年10月10日付BPOM長官規則No. HK.03.1.23.10.11.08481(2013年3月26日付BPOM長官規則第3号で変更)によると、輸入予定の医薬品をBPOMに登録できるのは、当該の医薬品を製造する海外の製造者から承認された者で、医薬品登録者としてBPOMに登録した後、医薬品の登録申請を行います。この際、海外の製造元が、医薬品の適正製造基準(CPOB、2012年12月20日付BPOM長官規則No.HK.03.1.33.12.12.8195)の条件を満たしていることが認証されていなければなりません。

    医薬品の登録申請はオンラインで行われ(http://aero.pom.go.id/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、インドネシア語あるいは英語で作成された製品情報と表示についての書類、品質証明文書、ノンクリニック・テストやクリニック・テストの文書の提出が求められています。登録プロセスは、医薬品の登録区分や審査コース、審査料、提出すべき書類を決める事前登録と、事前登録結果に基づき医薬品を審査して登録を進める本登録から成ります。審査は製品情報や表示、品質について行われるほか、効果・効能や安全性の確認は科学的立証に基づいて行われることになっており、40日、100日、150日、300日の4コースが設定されています。審査の結果によりBPOM長官が承認した医薬品に対し、流通許可が発行されます。

  2. 搬入承認の取得
    2015年5月6日付BPOM長官規則第12号(2016年10月17日付BPOM長官規則第25号にて変更)は、HSコード3003および3004番台75品目の医薬品の輸入に、その船積みごとに、BPOM長官から輸入証明書(SKI)の形で発行される搬入承認を取得することを義務付けています。上記の流通許可の保有者がBPOMに搬入承認申請者として登録した後、流通許可承認書、バルク形式での輸入承認書(バルク医薬品の輸入の場合)、分析証明、インボイス、BPOMへの手数料(PNBP)支払い証明、原産国の当局が発行したバッチ/ロット引き渡し証明(batch/lot release certificate)、バッチ/ロット・サマリー・プロトコル(ともにワクチン輸入の場合)等を添付してBPOMへオンライン申請します(http://e-bpom.pom.go.id/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ここでまた安全性や品質、効果・効能についての審査が行われた後、搬入承認の発行となります。
  3. 輸入者
    2015年BPOM長官規則第12号(2016年BPOM長官規則第25号にて変更)により、医薬品の輸入は、上記1の流通許可の保有者あるいはその委任を受けた者が行います。輸入業者認定番号APIなど一般輸入に必要な許認可のほか、保健省内の医薬品産業の指導を担当する総局から発行された医薬品製造業許可(2010年12月16日付保健大臣規則第1799号、No.1799/MENKES/PER/XII/2010、2013年2月22日付同第16号で変更)または大規模医薬品商(PBF)許可(2011年6月13日付保健大臣規則第1148号、No.1148/MENKES/PER/VI/2011)を取得していなければ、上記2の搬入承認の申請者として登録されません。ちなみに、PBF許可保有者にも薬剤師の正規雇用などが条件づけられています。

II. 販売時の規制

  1. 表示
    医薬品の外箱や容器、被包、ラベルなどに、少なくとも次の事項を表示することが求められています(2011年BPOM長官規則No. HK.03.1.23.10.11.08481、2013年BPOM長官規則第3号で変更の添付VII)
    1. 医薬品の名称
    2. 形状
    3. 内容量
    4. 有効成分の名称と分量
    5. 登録者の名称と住所
    6. 製造者の名称と住所
    7. 処方方法
    8. 流通許可番号
    9. 製造番号
    10. 製造日
    11. 使用期限
    12. 効果・効能
    13. 用法・用量
    14. 禁忌
    15. 副作用
    16. 薬物相互作用
    17. 警告・注意
    18. 特記事項(処方箋必須、豚由来、アルコール含有、等)
    19. 保存方法
    20. 特別表示(小売価格上限、医薬品区分ロゴ、ジェネリックロゴ、等)

    特に、イスラム教で摂取が禁止されている豚由来の物質を含む医薬品には豚を含有していることを赤字で表示すること、アルコール由来の、あるいはアルコールを含む医薬品についてはアルコール含有度を表示することが、流通許可の取得条件となっています。その他のイスラム教で摂取が禁じられている特定の原料由来の、あるいはそれらを含む食品・飲料の流通は禁止されています(2010年6月30日付けBPOM長官規則No.HK.03.1.23.06.10.5166)。

  2. 適正流通基準
    2012年11月23日付BPOM長官規則No. HK.03.1.34.11.12.7542に、医薬品の適正流通基準が示されています。

III. 関税・その他諸税

  1. 医薬品の関税率は、CIF価格に対し大方5%です。日本・インドネシア経済連携協定(IJEPA)に基づく原産地規則を満たせば、同協定の譲許表に定める関税が適用されます。このEPA税率は2008年7月1日から順次引き下げが行われ、多くはすでに0%になっていますが、まだ0%になっていない品目もありますので、確認が必要です。
  2. 上記輸入関税に加えて、付加価値税(VAT)10%が課せられます。課税基準はCIF価格です。
  3. また、輸入には前払い所得税(PPh-22)も課せられます。輸入業者認定番号(API)を有している企業にはCIF価格の2.5%が、輸入申告前に徴収されます。これは法人税の年次申告時に法人税と相殺することができます。

IV. その他

  1. 2011年BPOM長官規則No. HK.03.1.23.10.11.08481(2013年BPOM長官規則第3号で変更)によると、医薬品の輸入は、政府の保健プログラムで定められた医薬品、特許権の保護期間中、インドネシアで初めて流通許可が発行された、あるいは新発明された医薬品、国内に生産設備がないあるいは、あってもキャパシティが不十分なもの、またはまれな疾病のためのもので国内での製造は経済的に見合わないもの、海外で集中生産されているような医薬品の輸入が優先されます。
  2. 2011年BPOM長官規則No. HK.03.1.23.10.11.08481(2013年BPOM長官規則第3号で変更)により、輸入医薬品の登録には、国内生産に向けた技術移転を段階的に実施するよう定められています。
  3. 2015年BPOM長官規則第12号(2016年BPOM長官規則第25号にて変更)により、輸入医薬品は輸入時に使用期間全体の最低1/3を残している状態でなければなりません。

関係法令

2010年保健大臣規則第1799号(医薬品製造業)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(435KB)
2011年BPOM長官規則No. HK.03.1.23.10.11.08481(医薬品の流通許可)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.6MB)
2011年6月13日付保健大臣規則第1148号(大規模医薬品商(PBF))PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(168KB)
2012年BPOM長官規則No.HK.03.1.33.12.12.8195(医薬品の適正製造基準)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.5MB)
2012年BPOM長官規則No. HK.03.1.34.11.12.7542(医薬品の適正流通基準)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(485KB)
2013年保健大臣規則第16号(医薬品製造業についての2010年保健大臣規則第1799号の変更)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(36KB)
2013年BPOM長官規則第3号(医薬品の流通許可についての2011年BPOM長官規則No. HK.03.1.23.10.11.08481の変更)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(165KB)
2015年BPOM長官規則第12号(医薬品の搬入承認)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2016年BPOM長官規則第25号(医薬品の搬入承認についての2015年BPOM長官規則第12号変更)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(156KB)

調査時点:2016/12

記事番号: I-170201

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