非居住者による通関および非保税地域の貨物管理:米国

質問

当社は米国に住所のない日本企業です。米国に貨物を送り、米国に住所を持たない非居住者名義で、米国で輸入通関できますか。また、非保税地域に貨物を保管し、現地での注文のつど貨物を出荷するなど、貨物の在庫管理はできますか。

回答

米国に住所を持たない非居住者は、所定の手続きを経ることで、非居住者名義の輸入通関および貨物の在庫管理が可能です。ただし、ビジネスの規模、企業形態、ビジネスを行う州や郡により規則が異なりますので、留意が必要です。

I. 非居住者名義での米国への輸入申告

非居住者名義で輸入申告はできます。ただし、輸入に先立ち、以下の手続きが必要です。

  1. 通関業者に対する委任状(Power of Attorney: PA)の発行
    米国居住の通関業者に米国輸入通関の代行を依頼するために必要な書類です。非居住者が通関業者にPAを発行する場合、企業名、営業内容、PAに署名した人の権限などを証明する書類が求められます。実際には、通関業者がPAの自社フォームを用意していることが多いようです。詳細は起用する通関業者に確認ください。
  2. 税関ボンドの購入
    米国非居住者は米国輸入申告の際、税関ボンドの購入が義務付けられています。税関ボンドとは、米国の輸入者が関税等を支払えない等の場合に備え、米国国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)が輸入者に求めるものです。通常、通関業者を通じて税関ボンドを購入します。
  3. 輸入者番号(Importer Number)の取得
    輸入者番号は、米国納税者番号を利用します。法人の場合はEmployer Identification Number(EIN)、個人の場合はSocial Security Number(SSN)、いずれの番号も保有していない場合は、CBPにForm5106を提出して輸入者番号を取得します。輸入者番号は輸入通関、税関ボンドの購入に必須です。起用した通関業者を通じて手続きができます。
  4. 貨物最終受取人の指定
    通関後の貨物最終受領者(Ultimate Consignee)は米国居住者であることがCBP規則で取り決められています。

II. 非居住者の非保税地域での内国貨物管理

  1. 米国居住代理人(Resident Agent)の登録
    米国ではFederal(連邦)、State(州)、County(郡)によって規則が異なります。ビジネスの規模や企業形態により、ビジネスライセンスの取得有無、ビジネス登録の有無、税への対応などが異なるため、連邦、州、郡各々の規則に従って書類を提出する必要があります。これらの法的手続きを行うには、米国居住代理人(Resident Agent)を起用する必要があります。
  2. 米国連邦税・州税の課税の有無、税の種類
    米国には連邦所得税(Federal Income Tax)と州所得税(State Income Tax)があります。各々の納税の期日、申告書類等はビジネスの形態により異なります。米国の税務専門家に確認ください。このほかの連邦税と州税について簡単に説明します。
    1. 米国連邦税
      1. 自営業者に対する税(Self-employment tax)
      2. 雇用者、企業に対する税(Taxes for employers)
      3. 物品税(Excise tax)
    2. 州税
      1. 販売権税
        カリフォルニア州を例に説明します。
        米国非居住者企業がカリフォルニア州で在庫を持ち売買を行えば、カリフォルニア州の販売権税(Franchise Tax)の対象となります。通常、ビジネス登録はビジネスを行う州に申請します。その際、ビジネスの主体となる日本企業または代理人を登録します。代理人は、非居住者に代わって法的手続き等を行うことができる米国居住者であることが重要です。カリフォルニア州で営業を行おうとするすべての者は、販売人許可書(Seller’s Permit)を取得する必要があります。詳細は、文末のウェブサイトで「カリフォルニア州での販売行為に関する情報」を参照ください。
      2. 売上税(Sales Tax)
        売上税は最終消費段階で最終消費者が負担します。税率は州ならびに州内地区によって異なります。販売先が最終消費者でない場合、販売先から再販売証明書(Resale certificate)の提示を受ければ、売上税を含める必要はありません。また、州外に販売する場合、販売者に売上税徴収義務はありません。最終消費者は、売上税を課されずに購入した場合、自州へ使用税(use tax)を納付します。
        納税書類提出の詳細、納税の時期等は米国税務専門家に確認ください。
  3. PE認定(リスクと留意点)
    日本企業が米国内に恒久的施設(事業を行う一定の場所、Permanent Establishment: PE)を有する場合、米国で課税が発生します(日米租税条約)。米国税務当局からPEと認定された場合、米国で課税対象となりますので、あらかじめPEに精通した弁護士や税務専門家に相談することをお勧めします。

参考資料・情報

米国税関:
輸入通関情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
連邦政府印刷局:
非居住者の米国輸入通関に関する情報19CFR141-Entry of MerchandisePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(270KB)
米国中小企業庁:
政府の規則に則って新たにビジネスを発足する手順外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
連邦政府へのビジネス登録の要否、納税開始日、連邦税、州税の種類、支払い義務等外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国歳入庁:
非居住者対象の税制情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国際貿易対象の税制情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2024年6月
最終更新:2024年6月

記事番号: Y-130201

ご質問・お問い合わせ

記載内容に関するお問い合わせ

貿易投資相談Q&Aの記載内容に関するお問い合わせは、オンラインまたはお電話でご相談を受け付けています。こちらのページをご覧ください。