VAT支払いの要否:EUに発注した製品の製造時に発生した人件費について

ハンガリーから機械を輸入しています。2009年の発注で、現地メーカーが製造繁忙時に作業員を臨時雇用した人件費が別途請求されました。その際、機械本体には課税されていないVAT(付加価値税)が加算されています。このVATは支払う必要がありますか。あるいは還付を受けられますか。

機械本体の売買契約の中で別個のサービスとして特段の規定がなければ、人件費は本来「本体機械対価の一部」とみなされます。本体機械は日本へ輸出されているため、対価の一部である追加人件費も「輸出免税」となり、現地VATは課税されません。

今回の取引では、貴社が当初発注時にメーカーに依頼したのは役務の提供でなく「完成品としての機械」であると推測できます。そのため、本請求は通常の製造活動にかかった人件費の追加請求、つまり機械の販売価額の変更(値上げ)と考えることができます。以下に説明するように、今回のケースは輸出免税取引であると考えられるにもかかわらず、ハンガリーのメーカーからVAT込みの金額が請求されています。このようなケースではVATを支払わないよう注意してください。非課税とされるべき取引について誤って支払われたVATは還付を受けられません。

I. VATが輸出免税となる取引は以下のように規定されています(EU指令2006/112/EC第146条a.〜e.および第147条)。

  1. サプライヤー自身またはその依頼によってEU域外の終着地へ輸送される資産の譲渡
  2. その加盟国で設立されたものではない取得者自身またはその受託者によってEU域外の終着地へ輸送される資産の譲渡(ただし、レジャーボート、自家用航空機およびその他の自家用乗物の装備、燃料、補給資材として取得者自身で輸送されたものを除く)
  3. EU域外で行われる人道的活動、慈善活動または教育活動の一環としてEUから輸出する機関として認定された機関への資産の譲渡
  4. EU域内で行われる加工のために、輸入または取得された資産が作業者またはその加盟国で設立されたものではない作業の発注者自身またはそのいずれかの受託者により再輸出されることを条件として、動産に対する作業を内容とする役務の提供
  5. EU指令第61条に定められた保税等手続に置かれている資産および関税法上の保税倉庫以外の倉庫に搬入される予定の資産で、その資産の輸出入に直接関連して提供される役務の提供(運送など付随役務を含む)


今回の取引は上記a. に該当すると考えられます。

II. 今回のケースのVAT課税の考え方
1. VATが課税される場合
メーカー側が人件費とそれに係るVATを請求してきたのは、「本体機械対価の一部」ではなく、「動産に対して行う作業の対価」と判断している可能性もわずかですがあります。仮に、今回の取引を動産に対して行う作業の対価と認めるならば、当該取引の課税地は、2009年までは、原則として、「その役務が行われた場所(本ケースではハンガリー)」が課税地になると考えられます(EU指令第52条(c)及び第55条)。従って、VATは支払う必要があります。

2. VATが非課税となる場合
EUではVATパッケージと呼ばれる制度改正が実施されたことに伴い、2010年1月1日以降、事業者間(B2B)で行われるサービス提供の課税地は、原則として「受益者が事業を営む場所」となりました(EU指令2006/112/EC 第44条、B2Bで行われるサービス提供の課税地の原則ルール)。従って、本件を動産に対して行う作業の対価と考えれば、「受益者が事業を営む場所(本ケースでは日本)」が課税地となり、VATは課税対象外となります。

ただし、動産に対して行う作業の場合でも輸出免税取引になる場合もあります。資産の譲渡ではなく役務の提供についても輸出免税取引となる事例がI. のd. e. に規定されています(輸出類似取引)。今回の取引では、上記d. の加工再輸出される資産に対する輸出免税が適用できるか否かを確認する必要があります。当該機械がハンガリーのメーカーによって「輸入または取得された資産」ではないため、該当するとは考えられません。機械の生産工程に発生した人件費の一部が別個のサービスを構成する可能性は低いと考えられます。

III. 留意点

EU域内の課税事業者の中には、VATは納付漏れが発覚した時の納税額が時に多額となるため、課税・非課税の判断が難しい取引については保守的に課税取引とみなしてVAT込みで請求する例が散見されます。課税・非課税の判断が明確でない場合は、VATを支払う前に請求者側に十分確認することをお勧めします。非課税とされるべき取引について誤って支払われたVATは還付を受けられません。

関係法令
Eur-lex:
付加価値税の共通システムに関するEU理事会指令2006/112/EC


※本資料は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の委託を受けた税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が作成しましたが、ジェトロおよびPwCによる法的な見解・助言でないことをあらかじめご了承願います。実際のビジネスに当たっては、本資料のみに依拠せず、別途専門家から助言を受けてください。

調査時点:2013/12

記事番号: P-100609

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