DDP条件で輸出する際の注意事項:EU向け輸出

質問

現在、DDU(Delivered Duty Unpaid)条件でドイツに衣料品を輸出しており、商品代金と物流コストを輸入者側に請求しています。先日、輸入者から今後は、関税・VAT(付加価値税)も含めて代金決済したいと言われました。日本から輸出していても、このような決済ができるのでしょうか。

回答

貴社で関税とVATを納付するDDP(Delivered Duty Paid)条件に切り替えることは可能です。しかし、いくつか留意すべき点がありますので、以下に示します。

I.DDU条件とDDP条件の違い

DDU条件とDDP条件の大きな違いは、サプライヤーが輸入者となって通関を行うことです。日本企業が欧州にDDP条件で製品を供給する場合には、下記のような問題点がありますので、留意が必要です。

  1. EU関税法では、原則としてEUに恒久的施設(例えば支店)を持たない企業は、自らが輸入申告者となることはできません(継続的ではない輸入行為では例外的に拠点をもたない者が輸入申告者となることが認められる場合もあります)。
  2. 日本企業自ら輸入申告者となることができないことから、EUに拠点を有している輸送業者に代わりに輸入申告者となってもらうという方法(indirect representative:間接代理人制度)もあります。その場合、輸入申告書類には間接代理人である輸送業者と貴社の情報を記載する必要があります。

II.VAT登録と税務代理人

輸出者である貴社が製品の所有権を留保したまま加盟国内(本件ではドイツ)で取引先に販売する場合、VATの観点では、EU加盟国内での「課税資産の譲渡」という行為に当たります。原則として、貴社は顧客から販売対価と一緒に国内VATを徴収し、申告納税の義務が発生します。したがって、当該加盟国でのVAT登録、及び申告義務が生じることとなります。
「資産の譲渡」にリバースチャージ制度が適用される国ではEU域内の販売先にVATの納税義務が移りますので、VAT登録は不要です。しかし、ドイツでは資産の譲渡に国外事業者に係るリバースチャージ制度は適用されないため、ご質問のケースでは、輸出者がドイツにおいてVAT登録をした上で、申告を行う必要があり、納税義務者としての登録、その後毎年発生する申告手続きが発生します。

なお、加盟国によっては、「税務代理人」の制度が導入されており、納税義務者がEU域内事業者でない場合には、EU域内にVATの税務代理人を指名する義務がある場合があります。税務代理人については、EU指令2006/112/EC第204条で、「EU域内で設立されたものではない事業者が納税義務者である場合には、連帯納税義務を負う税務代理人の指名を認めること」、または、「EU加盟国間に相当する徴収共助関係がない国で設立された課税事業者には、税務代理人の指名を義務付けること」ができると定められています。EUでの税務代理人は日本の納税管理人と違い、単に納税事務を代行する者ではなく保証人としての意味合いを持ち、自らが納税義務者となるため連帯納付義務が生じます。

ドイツの場合、非居住者が輸入した資産をドイツ国内で販売するのではなく、輸入に引き続き他の加盟国に移送または納品する場合等には、税務代理人を指名することができます。税務代理人は自らのVAT番号を利用して代理するすべての課税事業者のためにまとめて申告を行います。税務代理人を利用できれば、通常の申告納付義務にかかる手間を削減できるため、条件さえ合えば検討に値すると思われます。

関係法令

Eur-lex:
付加価値税の共通システムに関するEU理事会指令2006/112/EC(第204条)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

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調査時点:2011年8月
最終更新:2024年8月

記事番号: P-100608

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