VAT登録の要否:EU向けに電子商取引をする場合

EU向けに電子商取引をします。サイトが日本にある場合、EUでのVAT登録は必要ですか。

ここでは、消費者向けの販売(B2C)を前提に説明します。商品購入者が課税事業者(B2B)の場合、対応が異なります。


I. 商品を直接日本から消費者に届ける場合
インターネット上で受注した商品をDHLなどクーリエサービスで直接日本から買い手である消費者に発送する場合、消費者は、自宅に配送された商品の受取時、または通知を受けた最寄の税関で商品と引き換えに輸入付加価値税(輸入VAT)と関税を支払います。この場合、消費者が輸入VATの納税義務者となるため、貴社の現地でのVAT登録は不要です。


II. 貴社が輸入者となる場合(EU域内の取引)
貴社が輸入者としてEU域内で商品を輸入し通関地であるEU加盟国内または他のEU加盟国に居住する消費者へ商品を発送する場合、輸入者である貴社が「輸入VAT」ならびに現地の「国内VAT」の納税義務者となります。その場合のVAT登録の要否は以下のとおりです。


1. 通関地であるEU加盟国の消費者に販売する場合
その国の国内VATが課税されます。貴社は、消費者から代金にVATを上乗せして請求徴収し、税務署に納付します。この場合は、その国でのVAT登録が必要です。通関時に課税された輸入VATは、貴社が課税事業者であれば前段階税控除の対象となり、当該加盟国で控除申告できます。


2. 他のEU加盟国の消費者に販売する場合
例えば、オランダ、アムステルダムで通関し、フランスを送り先として販売する場合、商品の販売は原則として着荷地で課税されます。消費者からフランスの国内VATを代金と合わせて徴収し、貴社はフランスで納税する必要があります。従って、貴社はフランスでのVAT登録が必要です。輸入VATは通関時にアムステルダムで納付し、後日VATリファンドにより還付請求を行います。


III. EU域内消費者通信販売
上記のように、原則としては、商品の発送先であるEU加盟国ごとにVAT登録を行う必要があり、申告義務が発生します。この場合、相当のコンプライアンスコストが発生することになります。売上がさほど多くない間は「EU域内消費者通信販売の特例」を利用してVAT登録加盟国を限定することも検討に値します。

電子商取引などにより消費者に直接商品を販売する場合で、EUの他の加盟国の消費者に商品を届ける以下の取引は「EU域内消費者通信販売」とみなされます。

  1. 販売者により商品が輸送されること
  2. 商品は発送国とは別のEU加盟国へ輸送されること
  3. 購入者は消費者であること


「EU域内消費者通信販売の特例」を利用してVAT登録加盟国を限定することもできます。以下の条件をすべて満たす場合、消費者への商品が発送されるEU加盟国を資産譲渡の課税地とする「出荷地課税」を選択することができます。

  1. 商品が個別消費税の課税対象物または新しい車両、船舶、航空機ではなく、また販売者自身またはその手配により設置または組み立てられるものではないこと
  2. 特定の加盟国へ1暦年間に持ち込まれる資産のVAT抜き販売額が現地通貨で原則として10万ユーロ相当を超えないこと
  3. 特定の加盟国へ前年に持ち込まれた資産のVAT抜き販売額が現地通貨で原則として10万ユーロ相当を超えないこと
    上限額は各EU加盟国により異なります。詳細は文末のウェブサイトを参照ください。


上記を満たす場合、例えば、あるEU加盟国に保有する倉庫から他のEU加盟国に居住する消費者へ商品を発送することにより、倉庫があるEU加盟国でのみ、VAT登録をすればよいことになります。EU加盟国のVAT税率は国により異なります。どの国に倉庫を保有するかは、会計事務所等と相談の上、慎重に検討してください。

参考資料・情報
Eur-lex:
付加価値税の共通システムに関するEU理事会指令2006/112/EC(第33〜35条)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会:
VAT通信販売(distance selling)解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
EU域内消費者通信販売の特例」適用のための上限額一覧

※本資料は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の委託を受けた税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が作成しましたが、ジェトロおよびPwCによる法的な見解・助言でないことをあらかじめご了承願います。実際のビジネスに当たっては、本資料のみに依拠せず、別途専門家から助言を受けてください。


調査時点:2013/12

記事番号: P-100602

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