一時輸入制度:フィリピン

フィリピンにおける展示会出品貨物・商品サンプル・職業用具の一時輸入制度について教えてください。ATAカルネの利用が可能か、またカルネを利用しない一時輸入制度について教えてください。

I. ATAカルネに関する条約加盟状況
フィリピンは一時輸入に関する条約(展覧会条約、商品見本条約、職業用具条約)のすべてに加盟していませんので、ATAカルネを利用しての一時輸入はできません。

II. 展示会出品貨物の一時輸入手続き
フィリピン国内で行われる展示会(および見本市)に出展する貨物については、フィリピン国内で消費・販売を行わない限り、輸入時の関税、付加価値税が免税となる一時輸入制度(フィリピン関税法第105項 条件付き免税輸入制度:Tariff and Customs Code of the Philippines SECTION 105)があります。

1. 輸入時の手続き
輸入者は、一時輸入制度の申請時に、展示会の詳細ならびに出品者(輸入者)の詳細、出品の目的等が分かる資料を関税局に提出することで、フィリピン関税法第105項(条件付き免税制度)による輸入申告が可能となります。また、当該輸入品の関税および諸税の1.5倍に相当する担保を関税局に提供する必要があります。担保を受領した関税局は輸入者に対して再輸出約束書(Re-export Commitment Form)を発行します。

なお、免税措置を受けることができるのはフィリピン国際センター(CITEM)により開催される展示会や見本市に限られていますので、注意が必要です。それ以外の展示会、見本市出品のための輸入の際は、一時輸入時の免税措置はありませんので、輸入関税、付加価値税を納める必要があります。

(必要な書類)

  1. インボイス(英語表記)
  2. パッキングリスト(英語表記)
  3. B/L(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)
  4. その他、関連する書類

なお、フィリピン関税局は展示会用の一時通関について厳しく取り締まりを行っています。アンダーバリュー(関税局が設定しているアイテムごとの標準価格より低い輸入価格での申告)の場合や輸入申告内容に誤りがある場合には、罰金が課される場合もあるので注意が必要です。

2. 輸出時の手続き
輸入者は、輸入時に関税局が発行した再輸出約束書を関税局に提出することで、担保として提供した保証金が返金されます。輸出申告時に必要な書類は以下のとおりとなります。また、輸入申告の日から起算して6カ月以内に当該貨物を輸出しなければなりません(関税局の承認を受けた場合に限り、さらに6カ月の延長が可能)。

(必要な書類)

  1. インボイス
  2. パッキングリスト
  3. B/L(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)
  4. 再輸出約束書(Re-export Commitment Form)

3. 展示会で輸入した展示品を販売する場合
展示会で輸入した展示品を販売する場合は、事前に財務省に対して販売計画を報告し、承認証書(Letter of Endorsement)を受け取る必要があります。そして、販売後にインボイスもしくは売買同意書を関税局に提出して関税、付加価値税を支払った後でなければ、展示会場からの搬出はできません。

販売計画の申請には、以下の内容を記載します。

  1. 展示会、イベント等の詳細
  2. 展示会、イベント等の開催期間
  3. サンプル品の価格
  4. サンプル品の販売予定数量、等

III. 商品サンプルの一時輸入手続き
販促用サンプル品を輸入する場合、輸入時の関税、付加価値税が免税となる一時輸入制度(フィリピン関税法第105項条件付き免税輸入制度:Tariff and Customs Code of the Philippines SECTION 105)があります。

1. 輸入時の手続き
販促用サンプル品については、課税価格が1万ペソ以内のものは免税措置を受けることができます。ただし、関税および諸税の合計課税評価額の2倍相当の担保を関税局に提出しなければなりません。また、1万ペソを超える分については、輸入者は保税扱いで保管、廃棄、滅却するか自己消費として通常輸入するかを選択できます。

なお、サンプル品は数量や寸法が商用として適していない、もしくは商業価値がないもの(例えばモデル品等)であることが求められ、"Samples, not for sale."という表示をつけなければならないので注意が必要です。必要書類等の詳細は展示品の一時輸出入手続きを参照してください。

2. 再輸出時の手続き
輸入者は、輸入時に関税局が発行した再輸出約束書を関税局に提出することで、担保として提供した保証金が返金されます(詳細は展示品の一時輸出入手続きを参照)。

IV. 職業用具の一時輸入手続き
職業用具を輸入する場合、輸入時の関税、付加価値税が免税となる一時輸入制度(フィリピン関税法第105条条件付き免税輸入制度:Tariff and Customs Code of the Philippines SECTION 105)があります。

1. 輸入時の手続き
職業用貨物については、フィリピン関税法第105条(条件付免税制度)による輸入申告が可能です。また、当該輸入品の関税および諸税の1.5倍に相当する担保を関税局に提供する必要があります。なお、担保を受領した関税局は輸入者に対して再輸出約束書(Re-export Commitment Form)が発行されます。必要書類等の詳細は展示品の一時輸出入手続きを参照してください。

2. 再輸出時の手続き
輸入者は、輸入時に関税局が発行した再輸出約束書を関税局に提出することで、担保として提供した保証金が返金されます(詳細は展示品の一時輸出入手続きを参照)。

関係機関
フィリピン財務省関税局(Bureau of Customs:BOC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令
ChanRobles Virtual Law Library:
フィリピン関税法第105条(Tariff and Customs Code of the Philippines SECTION 105:条件付き免税輸入制度)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

ジェトロ:
調査レポート「小口貨物の通関・関税制度(フィリピン)

調査時点:2015/08

記事番号: N-110210

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