一時輸入制度:シンガポール
シンガポールへ展示会出品貨物・商品サンプル・職業用具を送る場合、ATAカルネを利用できますか。また、ATAカルネ以外の一時輸入制度の利用可否を教えてください。
シンガポール国内で行われる展示会、オークション、見本市に出展する貨物(ただし、酒類、タバコ類を除く)については、輸出入の振興を目的として、シンガポール国内で消費・販売しない場合は、輸入時の関税、物品税、財・サービス税(Goods & Services Tax: GST)が免除されます。主な一時輸入の方法には、ATAカルネを利用する方法と一時輸入制度(Temporary Import Scheme: TIS)の2通りの方法があります。
I. ATAカルネ
シンガポールは、一時輸入に関する条約(職業用具条約、展覧会条約、商品見本条約)には加盟していませんが、イスタンブール条約附属書に基づき、シンガポール税関の監視の下、ATAカルネの使用が認められています。ATAカルネを発給する機関は、日本商事仲裁協会です。
- ATAカルネによる輸入
輸入者は、必要事項を記入したATAカルネフォームを輸入地の税関に提出します。ATAカルネを使用する場合は、未納一時輸入許可[In-Non-Payment(Temporary Consignment) Permit]の申請は不要です。なお、ATAカルネによる輸入は輸入日より最長3カ月間に制限されます。ATAカルネを使用する場合でも、他法令等のライセンスが必要な場合はその承認を経なければ輸入はできません。当該承認なしに輸入した場合は、税関もしくは所轄省庁により貨物が差し押さえられる場合もあります。
- ATAカルネによる再輸出
輸入者は、再輸出用のカルネフォーム、その他関連する書類、当該貨物を税関に差し出し、税関の審査・承認を受けなければなりません。貨物をコンテナで再輸出する場合、輸入者または貨物運送業者はコンテナに積み込む24時間前に当該貨物の保管場所において税関官吏の立ち合いの下、検査を受け、輸出通関の行われる空港または港湾のチェックポイントまで搬送されなければなりません。
II. 一時輸入(TIS)手続き
- TISによる輸入
展示会主催者、出展者または貨物運送業者は一時輸入の際、事前に一時輸入の目的、期間、展示会開催場所など詳細を記した書状を必要書類(インボイス、パッキングリスト、B/LあるいはAWB)とともに税関の手続システム部(Procedures & Systems Branch)許可課(Permits Unit)に提出します(シンガポール税関法第90条・91条)。同時に税関に登録された貨物運送業者を通して、関税およびその他諸税額に相当する担保(銀行保証もしくは保証保険)を税関に提出し、未納一時輸入許可[In-Non-Payment(Temporary Consignment) Permit]の申請・許可を受けることで一時輸入できます。なお、輸入許可は税関が定める期間内(最長6カ月)に商品を再輸出する場合に限られます。
一時輸入する品目に他法令で輸入ライセンスが必要となる管理品目が含まれている場合には、所轄省庁から事前承認を取得する必要があります。事前承認なしに輸入した場合は、税関または所轄省庁により貨物が差し押さえられる場合もあります。また、輸入通関の際に税関が貨物を封印することがあります。その場合は、展示会場に貨物を搬入した後、税関官吏が立ち会いのもとで開封することが要件です。展示会主催者、出展者または貨物運送業者は、開封の24時間前までに税関のコンプライアンス部(Company Compliance Branch)に税関官吏の立ち合いを申請し、立ち合い費用は別途税関に徴収されます。 展示会で配布するカタログ、パンフレット、贈答品は現地で消費されるものとみなされ一時輸入の対象外で、輸入時点でGSTを納付しなければなりません。ただし、郵便小包または携帯品として搬入され、貨物のCIF価格が400シンガポールドル以下の場合は、GSTの支払いは免除されます。
- TISによる再輸出
展示会主催者、出展者または貨物運送業者は、展示会終了後に税関に対して再輸出貨物の明細を記載した包括リストを提出し、未納一時輸入許可番号を参照して再輸出許可[OUT(Temporary Consignment)Permit]を申請します。なお、再輸出される貨物は展示会終了の1日前までに税関のコンプライアンス部(Company Compliance Branch)に対して再梱包、再積み込みの申請を行い、当該貨物の保管場所で税関官吏の立ち合いのもと、検査と貨物の封印を受け、輸出通関の行われる空港または港湾のチェックポイントまで搬送されなければなりません。この検査で、輸入した貨物の紛失等がある場合は、必要な諸税を納付します。税関官吏の立ち合いには別途費用が徴収されます。
- 展示会用で一時輸入した展示品を販売した場合
展示会で販売された展示品は、展示会終了後14日以内に販売した貨物の明細を記載した包括リストを輸入者は輸入地を管轄する税関に提出し、CIF価額に基づく関税、物品税、GST(GSTの算出はCIF価額に関税および物品税が加算された金額に基づく)を支払わなければなりません。展示会終了後14日以内に販売された展示品の諸税が納付されない場合、税関は貨物運送業者により拠出されている担保から引き落とします。
III. サンプル品の一時輸出入手続き
シンガポール国内に手荷物で持ち込む600シンガポールドルを超えないサンプル品の一時輸入の方法にも、TISとATAカルネを使用する方法があります(詳細は展示会の輸出入手続きと同様)。なお、郵送による場合、CIF価額が400シンガポールドルを超えないサンプル品については、関税およびGSTの支払いが免除されます。ただし、400シンガポールドル以下であっても酒類およびタバコ類の場合はこの限りではありません。仕入書に金額が記載されていない場合、輸入者は実際の商業価値を反映した仕入書をサプライヤーから取得する必要があります。仕入書には「value for customs purpose only」と記載します。
IV. 職業用具の一時輸出入手続き
外交官、高等弁務官、貿易使節団等、シンガポール政府が外交上の特権または免責を付与した者は職業用貨物を免税で輸入できます。職業用具の申告にあたって、事前に税関の手続システム部(Procedures & Systems Branch)部長宛てに所定フォームに記入して登録後、未納許可[In−Non−Payment(GST Relief and/or Duty Exemption)Permit]を取得します。
関係機関
シンガポール税関
シンガポール国際商工会議所
日本商事仲裁協会(JCAA)
関係法令
Attorney General's Chambers:
税関法(Customs Act)
輸出入法(Regulation of Imports and Exports Act)
参考資料・情報
シンガポール税関:
一時輸入制度(Temporary Import Scheme)
サンプル品の一時輸入制度(Importing Trade Samples)
調査時点:2017年3月
最終更新:2017年9月
記事番号: N-110205
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