果物の輸入手続き:日本
質問
果実(生鮮、冷蔵、冷凍)の輸入手続きについて教えてください。
回答
果実の輸入条件は植物防疫法に定められており、海外から病害虫の侵入を防ぐため、輸入植物検疫が行われます。その際、輸出国植物検疫機関発行の「植物検疫証明書」が必要になります。ただし、果実の状態・種類によって輸入植物検疫が免除されるものもありますので、植物防疫所に確認して下さい。
また、残留農薬基準や食品添加物など使用基準が定められている物質の含有にも注意を要します。
I. 関税分類番号(HSコード)
果実(HS08類)
果実の品目、加工の状態によってHSコードは異なります。
II. 輸入時の規制
生鮮・冷蔵、冷凍、乾燥果実など、加工の状態等によって異なりますが、主な関連法令は以下のとおりです。
- 関税定率法/関税暫定措置法
関税暫定措置法では、農林水産省が毎年の輸入割当数量(一次税率)を定めて、輸入者の申請に応じて輸入枠を割り当て、この枠を超えて輸入される場合に高関税(二次税率)を適用することで国内生産者保護を図る関税割当制度が規程されています。関税割当による一次税率の適用を受けるには、輸入前に関税割当申請手続きが必要です。たとえばパイナップル缶詰は関税割当品目に該当します。また、生鮮のバナナ、オレンジ、グレープフルーツなどは、輸入時期によって関税率が異なる季節関税品目です。 - 植物防疫法
- 輸入規制
チチュウカイミバエ、ミカンコミバエ種群、クインスランドミバエやウリミバエなど、検疫有害動植物が発生している国・地域からの生鮮果実の輸入は原則禁止されています。日本の植物検疫当局(農林水産省)と解禁要請国政府機関間の技術的協議を経て、輸出国で完全な消毒方法等が確立された場合には、植物検疫基準を規定し、この基準を満たすものについて輸入を解禁しています。 条件付き輸入解禁情報は、植物防疫所ウェブサイトで確認できます。
また、同法施行規則に定める指定有害動植物(例: 第40条 柿、柑橘、キウィフルーツ、梨、びわ、桃のカメムシ類ほか)や、別表2(第9条: 輸入禁止地域および輸入禁止植物)にも注意を要します。病害虫の発生状況は国・地域によって異なるため、同じ植物でも輸入条件は異なります。
- 輸入手続き
輸入時にまず、農林水産省植物防疫所に検査申請を行います。
病害虫が付着していない旨が記載された輸出国の植物検疫機関発行の「植物検疫証明書」が必要です(国際植物防疫条約に定める様式による)。
植物防疫所での検査の結果、病害虫等の付着が判明した場合は、消毒、駆除、廃棄等の措置が命じられます。なお、土が付いたものは輸入できません。
ただし、以下の品目は検疫対象外です。あんず、いちじく、かき、キウィフルーツ、すもも、なし、なつめ、なつめやし、パイナップル、バナナ、パパイヤ、ぶどう、マンゴー、もも、りゅうがんの乾果
亜硫酸、アルコール、酢酸、砂糖、塩等につけられた植物、ココやしの内果皮を粒状にしたもの等 - 輸入植物検疫制度の改正
近年、輸入植物の種類や輸出国が増加・多様化しています。
より効率的な植物検疫措置のため、数度の植物防疫法施行規則改正を経て2016年5月施行で検疫有害植物リスト、植物検疫措置内容の見直しが行われました。
改正の概要についてはジェトロ貿易・投資相談Q&A「植物防疫法」を参照ください。
- 輸入規制
- 食品衛生法
- 規制内容
輸入時は、農産物の農薬残留基準(農薬の各食品中の残留量の限度)に留意します。
これは食品衛生法に基づく厚生省告示第370号「食品、添加物等の規格基準」で規定されています(残留農薬等に関するポジティブリスト制度)。
なお、ポジティブリスト記載の農薬等のうち残留農薬基準が設定されていないものに許容される一定量は0.01ppm以下です。
生鮮果実は品目ごとに残留農薬基準が定められているため、輸入前に生産国での使用農薬の種類や使用状況などを確認のうえ、農薬の散布履歴書を入手し、同基準に適合するための適切な農薬使用管理について、輸出入者間で合意することが重要です。特に果実類は、植物防疫所が実施するモニタリング調査で、基準値を超える残留農薬が検出された場合、当該輸出国からの同一輸入果実すべてを対象とする検査命令が出されることが多いため、注意を要します。
過去の違反事例として、クロルピリホス(インド産マンゴー)、フルシラゾール(フランス産ブラックカラント)などの検出があります。
また、食品添加物や使用基準が定められている物質の含有にも注意を要します。外国産果実には日本では使用が規制されている発色剤、着色料、保存料等の食品添加物が使用されている場合があります。 - 基本的な手続き
販売目的(頒布を目的とするサンプルも含む)で輸入する場合、厚生労働省検疫所食品等輸入届出受付窓口に「食品等輸入届出書」と必要書類(原材料、成分または製造工程等に関する説明書、必要に応じて衛生証明書、必要に応じて試験成績書)を届け出る必要があります。 審査の結果、規格基準や安全性の確認が必要と判断されたものは検査が実施されます。審査・検査で同法上問題がなければ、税関への輸入申告時に植物検査合格証明書及び通関書類とともに、検疫所から発行される「食品等輸入届出済証」を提出します。不適格と判断され「食品衛生法違反通知書」が出されたものは輸入できないため、輸入者は積戻し・廃棄等の措置を取ります。
- 規制内容
III. 販売時の規制
- 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
国内販売時は、JAS法に基づく品質表示基準に従って一括表示を行う必要があります。輸入品には原産地(国)表示が義務付けられています。
生鮮果実は「生鮮食品品質表示基準」、加工品は「加工食品品質表示基準」の確認が必要です。詳細は、文末の消費者庁ウェブサイト「品質表示基準一覧」を参照ください。その他、缶詰などには個別品質表示基準(注)が定められています。(注)果実関連の他の品質表示基準(農産物缶詰・瓶詰、果実飲料、ジャム類)
JASマーク認証品目として、以下のJAS規格(任意規格)があります。
- 一般JAS: 農産物缶詰・農産物瓶詰、果実飲料、ジャム類
- 有機JAS: 有機農産物
「有機」、「オーガニック」と表示するためには、有機JAS基準に基づく登録認定機関の検査を受け、認定を受ける必要があります。 - 生産情報公表JAS: 農産物
- 特定JAS: 特色規格に位置付けられるりんごストレートピュアジュース
- 食品表示法
2013年6月28日に「食品表示法」が公布され2015年4月に施行されました。しかし、加工食品と添加物は5年間、生鮮食品は1年6カ月の間、以前の制度に基づく表示を認めるという猶予期間が設けられました(ただし、機能性表示制度については、新しい制度であるため猶予期間はありません)。食品表示法の制定により、これまでの食品衛生法、JAS法、健康増進法に基づく表示に関する規定が一元化されました。既定の規程の概要は下記のとおりです。
- 品質事項として、JAS法で定められていた、原材料名、内容量、原産国名等の食品の品質に関する表示
- 衛生事項として、食品衛生法で定められていた添加物、賞味期限、保存方法、アレルゲンや製造所等の健康の保護を図るための表示
- 保健事項として健康増進法で定められていた、栄養成分表示などの健康の増進を図るための表示
- JAS法と食品衛生法に定められていた遺伝子組み換えについての表示など
容器包装入り果実、オレンジ、キウィフルーツ、もも、りんご、バナナは、アレルギー表示推奨品目に指定されています。対象果実が含有されている場合は一見して判別が困難なため、注意が必要です。
なお、「食品表示法」の詳細については文末の消費者庁「食品表示法等(法令及び一元化情報)」を参照ください。 - 資源有効利用促進法/容器包装リサイクル法
缶詰・ビン詰め容器等は、分別回収促進のための材料識別表示が義務付けられており、特定事業者(輸入業者を含む)は容器廃棄物の再商品化が義務付けられています。
IV. その他
種苗法
植物新品種保護に関する国際条約(UPOV条約)と連関して、開発新品種を国に登録することによって育成者の権利を保護する制度が定められています。登録された品種を輸入する場合は育成権者の許諾が必要です。なお、無断で海外栽培された登録品種の逆輸入防止のため、罰則対象は種苗のみでなく収穫物について権利侵害を行った者にまで及びます。DNA鑑定などで侵害物品と認められた場合は、関税法に基づき税関で没収・廃棄等の処分が命じられます。
関係機関
税関:
関税の仕組み
関税割当制度
農林水産物の関税制度(910KB)
農林水産省:
植物防疫法施行規則第4次改正
植物防疫所:
植物検疫に関する問い合わせ
輸入の禁止について
植物検疫の対象とならない植物
輸出入条件詳細情報
基本通達集
検疫所:
食品等の輸入届出の手続の流れ
食品衛生法に基づく輸入手続きについて
食品等輸入届出書の記載方法と記入例(597MB)
残留農薬
食品添加物
食品の安全性確保を通じた国民の健康のために
消費者庁:
食品表示法
品質表示基準
食品表示法等(法令及び一元化情報)
生鮮食品品質表示基準(28kB)
アレルギー表示
農林水産省:
食品表示とJAS規格
JAS規格について
有機食品の検査認証制度
有機登録認定機関一覧
指定種苗制度
参考資料・情報
日本食品化学研究振興財団:
残留農薬等ポジティブリスト制度について(食品に残留する農薬、飼料添加物及び動物用医薬品の限度量)
調査時点:2017年1月
最終更新:2018年11月
記事番号: M-010775
ご質問・お問い合わせ
記載内容に関するお問い合わせ
貿易投資相談Q&Aの記載内容に関するお問い合わせは、オンラインまたはお電話でご相談を受け付けています。こちらのページをご覧ください。