中国版RoHSに関する留意点

質問

中国版RoHSに関する注意点を教えてください。

回答

1. 中国版RoHSとは?

RoHSとは、欧州連合(EU)が作成した製品強制標準のひとつで「Restriction of Hazardous Substances(電子電気機器に使用される有害成分の制限に関する指令)」の頭文字をとった略語です。

中国版RoHSは、2006年2月28日に発表された「電子情報製品汚染抑制管理弁法」(旧情報産業部、国家発展改革委員会、商務部、税関総署、国家工商行政管理総局、国家質量監督検験検疫総局、旧国家環境保護総局令第39号)がRoHS1.0とされていました。

2016年、電気電子製品の廃棄による環境汚染を抑制・低減し、電気電子製品業界におけるクリーン生産および資源の総合的利用を促進し、グリーン消費を奨励し、環境と人の健康を保護するため、「中華人民共和国クリーン生産促進法」、「中華人民共和国固形廃棄物環境汚染防止法」、「廃棄電気電子製品回収処理管理条例」などの法律、行政法規に基づいて制定された新版「電気電子製品有害物質使用制限管理弁法」(工業情報化部、国家発展改革委員会、科学技術部、財政部、環境保護部、商務部、税関総署、国家質量監督検験検疫総局令第32号)(以下、「管理弁法」という)が施行され、これに伴い旧法は廃止されました。この改訂版はRoHS2.0とされています。

2. 管理対象

  1. 電気・電子製品
    中国版RoHS2.0で管理の対象となるのは、電気・電子製品です。電気・電子製品とは、具体的には「電流または電磁界に依存する機器、または電流および電磁界を発生、伝導、測定するための機器であり、定格動作電圧が直流1,500ボルト、交流1,000ボルトを超えない機器および付属品」を指します。詳細は下記 5.(2)項をご参照ください。
  2. 電気・電子製品への有害物質の使用制限
    これら電気・電子製品に、以下の有害物質が使用されている場合、管理の対象となります。
  • 鉛(Pb)およびその化合物
  • カドミウム(Cd)およびその化合物
  • 水銀(Hg)およびその化合物
  • 六価クロム化合物(Cr(VI))
  • ポリ臭化ビフェニル(PBB)
  • ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)

3. 管理方式

  1. 生産・輸入した電気電子製品における有害物質の含有量、および環境保護使用期限を表示
  2. 電気電子製品有害物質使用制限基準到達管理目録に記載された製品は合格評定制度に基づいて管理

(1)有害物質の含有量および環境保護使用期限の表示

製品におけるすべての材料について、有害物質の含有量が基準を下回る場合、グリーンのeマーク(下記図参照)が貼付されます。

製品におけるいずれかの材料について、有害物質の含有量が基準を超える場合、オレンジマーク(下記図参照)を貼付し、製品説明書に有害物質の名称、含有量を記載し、基準を超える有害物質の種類および含有部品を明記することが義務付けられています。なお、オレンジマークの中央の数字は、環境保護使用期限で、製品に含まれる有害物質が通常の使用条件下では、漏洩しないことを表しています。

有害物質の含有量および環境保護使用期限に関するグリーンマークとオレンジマーク


その体積、形状、製品表面の材質あるいはその性能により表示が難しい場合は、紙あるいは電子データ等による説明書を内封します。また、マークは貼付、塗布、印刷等の方法により見やすい場所に表示することになっており、マークそのものの面積が、5mm×5mmを下回ることは認められていません (SJ/T11364電子電気製品有害物質制限使用標識要求より)。

なお、中国電子技術標準化研究院は2022年末に、この電子電気製品有害物質制限使用標識要求の改正意見募集通知を発表しています。今後も改訂案の発表などに、ご注意ください。

(2)目録製品については「合格評定制度」を実施

「電気電子製品有害物質使用制限合格評定制度実施手配」の公告(市場監督管理総局、工業情報化部公告2019年第23号)により、「電気電子製品有害物質使用制限基準到達管理目録」に記載されている電気電子製品(一部「基準達成管理目録使用制限物質適用例外リスト」に記載の部品を除く)の供給者は、任意認証または自己宣言のいずれかの方式(下記参照)により、電気電子製品の有害物質使用制限の合格評定を完了しなければなりません。

現在(2023年9月末)、目録には冷蔵庫、エアコン、洗濯機、電気温水器、プリンター、ファックス、コピー機、携帯電話、パソコン、電話機、テレビ、モニターの12種類の製品が収載されています。

電気電子製品有害物質使用制限合格評定制度には、

  • 国が統一的に推進している電気電子製品有害物質使用制限任意認証(以下、「任意認証」という)
  • 電気電子製品有害物質使用制限供給者適合声明(以下、「自己宣言」という)の2つの方式があります。

任意認証とは、企業が任意で申請し、電気電子製品が関連有害物質の使用制限基準および技術規範の要求に合致していることが第三者認証機関によって証明され、国家が統一的に推進し、規範的に管理する認証活動を指します。

自己宣言とは、供給者(生産者、授権代表者などを含む)の提供する電気電子製品が有害物質使用制限基準および技術規範の要求を満たしていることを証明するため、自主的に合理的な方法を用いて適合性評価を完了するとともに、製品の適合性情報を提出する合格評定活動を指します。

(3)任意認証の手続き

認証機関は、相応の資格を取得した検証・検査測定機関に委託して、任意認証に関連する検査測定活動を実施するとともに、関連する検査測定データに基づき下した認証の結論に対して責任を負います。

  1. 認証申請企業は、市場監督管理総局から認定された認証機関に認証を申請します。
  2. 認証機関と契約し、関連する能力と資格要件を満たしている検査試験機関によって申請企業が提出したサンプルを検査します。
  3. 認証機関が、申請企業の申請企業の工場を検査します。検査の内容は、有害物質の使用を制限する生産企業の管理能力の評価です。
    認証機関は「生産企業における有害物質の使用制限に関する管理能力要件」を作成し、生産企業を検査するための検査官を派遣し、立ち入り検査の期限を定めて申請企業に通知します。
  4. 認証機関は、サンプル試験と工場検査の結果を総合的に評価し、認証申請企業に認証証明書を発行します。

(4)自己宣言の手続き

  1. 供給者は、製品の適合性評価を完了した後、「電気電子製品有害物質使用制限の供給者による適合宣言規則」に基づき、対応する製品の適合性情報を提出します。
  2. 供給者は、製品が市場に投入されてから30日以内に公共サービスプラットフォームで適合性情報を提出し、工業情報化部は市場監督管理総局と共同で、公共サービスプラットフォームを通じて適合性声明の結果を公表します。
  3. 供給者は、自己宣言および関連技術支援文書の正確性、完全性、一貫性などを保証し、かつ公開の承諾をして、各方面の監督を受けます。

(5)合格評定ラベル

任意認証を経て、合格を得た製品には、下記図1のラベルが表示されます。

自己宣言を経て、合格を得た製品には、下記図2のラベルが表示されます。

合格評定ラベル


4. 罰則

  • 有害物質の含有量および環境保護使用期限が表示されていない電気電子製品の生産・販売・輸入。
  • 管理目録には記載されているが、基準を満たしていない電気電子製品の生産・販売・輸入。

上記の行為が発見された場合、商務、税関、質検、工商などの各部門より、「管理弁法」の要求に違反した企業・個人などに対して、「管理弁法」第19条の規定に基づいて処罰を行います。

なお処罰については、「商務、税関、品質検査、工商などの部門に引き渡して処罰する」とされており、法令において、具体的な処罰内容は規定されていません。

5. 運用上の注意点

(1)電気・電子製品の設計および生産者、販売業者、輸入業者それぞれに対する要求

生産者:製品における有害物質使用制限および自己検査を行い、製品が管理弁法の要求に合致していることを保証することが求められます。

輸入業者:輸入製品の有害物質検査を担当し、「管理弁法」の規定に合致することを保証することが求められています。

販売業者:販売した製品が「管理弁法」の要求に合致することを保証するとともに、政府に協力して監督管理および検査を実施することが、求められています。

(2)適用範囲

電気・電子製品とは、通信設備、放送用テレビ製品、コンピュータおよびその他の事務用の製品、家庭用電気電子製品、電子機器メータ、工業用電気電子製品、電動工具、医療電子設備および機械、照明製品、文化・教育、工芸・美術、スポーツおよび娯楽用の電子製品などが該当します。

以下の、電気・電子製品および専用またはカスタマイズされた付属品は、管理弁法の適用範囲外とされています。

  1. 発電所、送配電施設、建築物給配電施設用のシステムおよび設備など、電気エネルギーの発生、輸送および配分に関する設備
  2. 軍事用の電気電子製品
  3. 特殊な環境または極端な環境で用いる電気電子製品
  4. 輸出用の電気電子製品
    注:輸出用の電気電子製品は、輸出先国・地域の有害物質の使用制限に関する規定に合致しなければなりません。
  5. 一時的な輸入製品または国内で修理し、販売はしない電気電子製品
  6. 科学研究/研究開発、テスト用の試験機
  7. 展示会、見本市などに用いるが、販売しないサンプル、展示品など

(3)来料加工製品および進料加工製品

来料加工とは、海外から提供された原材料、部品を用いて完成品の加工・組立を行い、輸出する形態であり、これら輸出品および輸入原材料、部品は「管理弁法」の制限を受けません。

進料加工とは、外国から提供された原材料、部品を用いて完成品の加工・組立を行い、販売する形態です。製品が輸出される場合は「管理弁法」の制限を受けませんが、製品が中国国内市場で販売される場合は「管理弁法」の要求に合致する必要があります。

また、輸出製品も輸出先国・地域の有害物質の使用制限に関する規定に合致する必要があります。

(4)海外の親会社が中国の子会社に電気電子製品を転売する場合

海外親会社が、異なる独立法人資格を有する中国子会社に製品を転売する場合、「電気電子製品有害物質使用制限管理弁法」の要求に合致しなければなりません。

6. 中国RoHS3.0最新の進捗状況

2023年5月19日、全国電工電子製品およびシステムの環境標準化技術委員会有害物質検出方法技術分科委員会(SAC/TC297/SC3)は、GB/T26572-2011国家標準第1号改正(審議稿)技術審査会を開催しました。

この改正案では、

  • フタル酸ジブチル(DBP)
  • フタル酸ジイソブチル(DIBP)
  • フタル酸ブチルベンジル(BBP)
  • フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)

の4種類の物質が「電気電子製品有害物質使用制限管理弁法」の有害物質リストに盛り込まれ、審査専門家が起案グループの報告を聴取し、最終的にこの改正案の審査が通過することに合意しました。

これにより、この改正案が間もなく次の承認および公布の段階に入ること、および規制される物質が現在の6項目から10項目(Pb,Cd,Hg,Cr(VI)、PBBs,PBDEs,DEHP,BBP,DBP,DIBP)に拡大された中国RoHS3.0が、近々正式に実施されることが予想されています。

最新の動向のご注意ください。


関係機関

関係法令

中国工業情報化部:
電器電子製品有害物質使用制限管理弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
電器電子製品有害物質使用制限基準到達管理目録(第1期)および「基準到達管理目録使用制限物質適用例外リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
電子電気製品有害物質制限使用標識要求の改正意見募集通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家市場監督管理総局:
電器電子製品有害物質使用合格評価制度の実施に関する取扱い外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料 · 情報

調査時点:2017年3月
最終更新:2023年10月

記事番号: C-131101

ご質問・お問い合わせ

記載内容に関するお問い合わせ

貿易投資相談Q&Aの記載内容に関するお問い合わせは、オンラインまたはお電話でご相談を受け付けています。こちらのページをご覧ください。