駐在員事務所から現地法人への切り替え

上海市内に駐在員事務所を設置している日本企業A社は、自社製品の需要が見込めるので近々駐在員事務所に代わって上海に現地法人を設立したいと考えています。どのように進めていけばよいでしょうか。また、現地法人設立にあたり、当面日本から自社製品を輸入して中国国内で販売したいと思いますが、どのような方法があるのでしょうか。

A社が現地法人を設立して中国で輸入および国内販売を行うには、外商投資商業企業を設立します。外商投資商業企業は卸売業務、小売販売(店舗の開設を要する)業務、コミッション代理(競売を除く)業務、輸出入およびその他関連する付随業務などを行うことができます。現地法人と駐在員事務所とはまったく別の形態のため、現地法人は「駐在員事務所からの形態切り替え」によって設立することはできません。現地法人を設立することで駐在員事務所が不要となるのであれば、駐在員事務所の閉鎖手続きを行うことになります。


I. 駐在員事務所の閉鎖手続き
駐在員事務所の閉鎖手続きは、税務局での登記抹消手続きから始まります。手続きは駐在員事務所のこれまでの税務申告状況(申告漏れがないかどうかなど)により大差があり、数カ月かかるのが一般的です。その後に税関、外貨管理局および銀行などの機関で他の抹消手続きが実施できます。以下は閉鎖手続きの概要です。

  1. 公認会計士事務所に監査報告書を作成してもらいます。
  2. 税務局にて過去の申告納税状況の精査を受け、税務登記抹消通知書を取得します。
  3. 税関で税関登記を抹消し、税関登記抹消通知書を取得します。税関で登記したことがない場合、税関発行の証明を取得します。
  4. 銀行口座残高の処理:基本的に人民元については現地で使い切るか、残った場合は所定の手続きを経て外貨に両替して、外貨口座の残金とともに国外の親会社に送金することになります。
  5. 銀行口座(人民元口座、外貨口座)抹消通知書を取得し、これらのICカードを返還します。
  6. 工商行政管理局で工商登記証抹消通知書を取得します。
  7. 工商登記証取消通知書を提示して、さらに企業コード証(企業代碼証)正本・副本を技術監督局に、統計登記証の正本・副本を統計局に、それぞれ返還します。


II. 外商投資商業企業の設立から操業までの手続き
主に卸売りを行う商業企業を例とした場合、概要は以下のとおりです。

  1. 設立準備
    1. 会社を設立登記する事務所物件の賃貸借契約書を締結します。
    2. 会社定款、F/Sなどの設立申請に必要な提出資料を準備します。
  2. 会社を設立する工商局で企業名称の仮登記を行います。
  3. 会社を設立する商務主管部門で商業企業設立の批准を取得します(約1カ月)。
  4. 会社を設立する工商局で会社設立登記を行い「営業許可証」を取得します(約0.5カ月)。
  5. 「営業許可証」取得後の手続き
    1. 外貨登記、税務登記、税関登記などの諸登記と対外貿易経営者登録登記
    2. 外貨資本金口座開設、資本金払込み、出資監査、出資証明書発行
    3. 資本金、または売上高などの条件に合致した後、一般納税人資格(増値税発票発行資格)の取得
  6. 会社規則制度の基本構築、労働体系文書、基本取引文書の作成(上記1.〜5.の過程で行うことができます)。


III.留意点

  1. 駐在員事務所の賃貸借契約の期限:閉鎖手続きは主に税務登記抹消の期間に大きく左右され、全手続き完了までに半年以上かかるケースも少なくありませんが、税務登記の抹消を申請した後は(上記のI. 2.段階に入ったら)、事務所の賃貸借契約を維持しなくても構いません。
  2. 現地法人の登記場所:駐在員事務所と同じ物件で現地法人の設立登記を行う場合は、駐在員事務所の工商登記証を返上し、登記が完全に抹消されなければ、登記はできません(ただし対象契約物件が分割できれば登記の可能性があります)。
  3. 駐在員事務所が所有する事務機器(本社の固定資産)を、現地法人に譲渡(移管)する場合、実務処理では以下の点に注意が必要です。
    1. 現地法人へ無償譲渡する場合、日本本社では損失処理しますが、現地法人にとっては、無償譲渡されたので、固定資産としては認識されない簿外資産となります。理論上、贈与方式で実現することも可能ですが、贈与は税務処理などの面でやや複雑となるため、実践ではあまり採用されていません。
    2. 現地法人に有償譲渡する場合、駐在員事務所では発票(インボイス)を発行できないものの、通常、税務局を通じて発票の発行代行を申請できるため、現地法人側では相応する発票を取得後に経理処理(固定資産計上)ができます。
  4. 現地法人が以下に関係する場合、商務主管部門の審査許可段階で提出が必要な申請文書はさらに追加され、商務主管部門の審査許可の流れはより複雑になります。
    1. 小売販売(インターネットおよび自動販売機を通じた販売を含む)
    2. フランチャイズ経営
    3. 現地法人が卸売りする製品が特殊商品(例:自動車、精製油、薬品、書籍新聞雑誌および音響製品)に関係する場合
  5. このほか、現地法人が卸売りをする製品が特殊商品に関係する場合、さらにほかの政府部門の前置審査許可にも関係する可能性があります。例えば、危険化学品の卸売りを行う場合、安全生産部門発給の危険化学品経営許可証を取得する必要があります


関係機関
中国国家税務総局
中国税関総署
中国国家外貨管理局
中国商務部
中国国家工商総局


関係法令
中国中央人民政府:
外国企業常駐代表機構登記管理条例(国務院令第584号、2013年7月18日改正)
同上
旧対外貿易経済合作部:
外国企業の在中常駐代表機構の審査許可と管理に関する実施細則(対外貿易経済合作部令[1995年第3号]、1995年2月13日施行)
中国商務部:
外商投資商業領域管理弁法(商務部令2004年8号、2004年6月1日施行)


参考資料・情報
ジェトロ:
外商投資商業(分銷)企業の手引き(商務部2005年9月1日公布)
中国進出企業の事業再編等実務に関する調査(2009年3月)
外商投資商業小売、卸売企業の設立


調査時点:2014/10

記事番号: A-090919

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